第9話 給食が食べられない。
翌日。
学校は、なぜか急遽休校になった。
「今日休校かよぉ。せっかく好きな給食だったのになぁ」
なぜか、学校が休校になった。ただ、決して病気が流行ってはない。
「いいのっ! ずーっと、私のお仕置きを受けていられるんだもんね♡」
「それだと俺が窮屈なんだよ」
なぜか俺は、ニッコニコの結愛に抱きつかれている。これがお仕置きというわけで。
「なぜか休校になっちゃったけど、ずーっと私と抱き合っていられるんだよ?」
「まぁ、そうなんだけど、な?」
俺の勉強道具とか、ほぼ学校にある。しかも休校だから、取りにも行けない。というか、抱き合う⋯⋯?
「そんなのどうでもいいのっ! 私には、優磨くんがいるからっ!」
俺を抱きしめる力が強くなった。それに並んで、俺の腹も少し苦しくなってくる。
「やべぇ、朝飯食いすぎたな」
俺は、結愛の邪魔する手をどかしながら、お腹のあたりをぐるぐる回してみる。――いつもより詰まってる、ような⋯⋯。
「ちょ、離して。痛い」
「ん? 私ともっと近づきたい? もっちろん!」
結愛は俺の腰に回す手の力を強める。それと同時に、俺の頬に顔をスリスリしてくる。
「ん〜、優磨くん、ぷにぷに〜」
結愛は唇を、ときどき当ててきながら、しつこいぐらいにスリスリしてくる。
「ちょっとリモコン取って」
「えー! 優磨くんは、テレビなんかより、私を見てればいいんだよ?」
「まぁいい。自分で取る」
俺はリモコンを取ろうと、机に手を伸ばす。
「よし」
俺はリモコンを取り、そうつぶやきながら、リモコンの丸くて赤いボタンを押した。
その瞬間、目に入ってきたのは、驚くほどの事実だった。
『最近、小中学生の行方不明の人数が増加しています』
向こう側の人が、原稿らしきものを読みながら、淡々と伝えていた。
「へ〜」
俺には関係ないな。
「私も、優磨くんを、そうしちゃおうかなっ?」
いつのまにか結愛も、釘付けになっていた。
「なんかおもろいのやってないかな〜」
俺はチャンネルを変えようとした。
『先日、蒼國中学校の生徒が3名、行方不明になったという情報が出ています』
その言葉が俺の耳を通ったそのとき、リモコンをテレビに向けたまま、固まった。
「⋯⋯」
俺の口からは、何も出てこなかった。
『警察によりますと、母親から、息子が帰って来ないとの連絡が一昨日午後9時頃にあったそうで――』
俺はまさか、と思い、ちらっと視線を向ける。
「私、⋯⋯ない、よね」
視線を下に向け、何かを考え込んでいるようだった。
『行方不明になったのは、2年生の武蔵稜峨くん、同じく2年生の西宮昭仁くんと、東郷千鶴くんです』
キャスターは無表情でそのことを伝えていた。
『学校側は、警察の捜査に全面的に協力する意向を示しているようで――』
「ねえ優磨くん。私、大丈夫、だから」
すると、急に結愛が話しかけてきた。俺の裾を引っ張り、下を向きながら言う。
「私、大丈夫。私、大丈夫⋯⋯」
結愛はなぜか心配な表情をしていた。やっぱり気になるんだな、結愛も。
『現在も警察による懸命な捜査活動が行われています』
「大丈夫⋯⋯大丈夫⋯⋯」
結愛は、ずっとうつむきながら、呪文のように『大丈夫』と唱えている。
『何か知っていることがあれば、お近くの交番までお伝えください。次のニュースです』
キャスターは、何事もなかったかのように次のニュースを読み始めていた。
「結愛、大丈夫、だから⋯⋯」
俺はテレビの電源を消した。言ってみたはいいものの、正直自信がない。今できるのは、結愛をなぐさめること、ただそれだけだった。




