第7話 寝るなら、ベッドね?
「優磨くん! 一緒に寝よ?」
と、ノリノリで俺の部屋に結愛が乗り込んできた。
「⋯⋯えぇ」
俺の顔は、引きつった。
「もしかして⋯⋯」
「わかったから! 寝ればいいんだろ!?」
俺は渋々隣を開けた。そこに、結愛が来る。
「優磨くん、壁側ね?」
「⋯⋯なんで――」
「壁側、ね?」
壁側だと、俺の作戦が⋯⋯。結愛が寝たら床で寝るという、作戦が⋯⋯。
「あ、壁側じゃなくてもいいよっ!」
「じゃあ――」
「その代わり、腕枕、してね?」
結愛は俺を覗き込むように迫ってくる。
「⋯⋯わかったよ! 壁側で寝ればいいんだろ!?」
俺は仕方なく、壁側で寝てやることにした。
「やった!」
結愛は小さなガッツポーズをした。
「じゃあ、ちょっと待っててね!」
結愛は部屋を出ていった。
「ただいまっ! これ、あげる!」
結愛は案外すぐに帰ってきた。
「はいっ! ホットココア!」
「お、ありがと」
白いマグカップから、湯気が立ち上っている。結愛は熱そうに取っ手を持っている。
「寝る前に温かいもの飲むと、いいことあるらしいよっ!」
「結愛、詳しいんだな」
「ふふっ」
結愛は、口に手を当てながら、わざとらしく笑う。
「優磨くんを、私に依存させなくちゃ」
わざとらしく笑いながら、恐ろしいことを言うな、結愛は。
「なんでもないよっ! あと、ちゃんと、飲み干してね?」
「⋯⋯あぁ」
「優磨くんは、いいこだねっ!」
そう言いながら、俺の頭を優しく撫でてくる。
ようやくそのココアを飲み干すと、なぜだかすごく眠くなってきた。
「おやすみ。優磨くん」
結愛は立ち上がり、そう言った。
「寝るなら、ベッドで寝てね?」
「ん、あぁ」
俺は強烈な眠気を感じ、ベッドに横たわった。
「ふふっ、よかった。ちゃんと寝てくれた」
結愛はニコッと笑う。それは、まるで決まっていたかのように。
俺は何も発しず、そのまま眠気に従った。
******
朝になり、目が覚めると、なぜか結愛の体が近い。というより、くっついている。
「もう、逃がさない」
「ちょ、ちょっと――」
俺が文句を言おうとすると、結愛からは寝息がした。
「寝言か⋯⋯」
――どんな夢見てんだ?
結愛は俺を抱き枕にしながら、気持ちよさそうに寝ている。
「さすがに、邪魔だな⋯⋯。ただ、起こすのは、気が引ける」
俺が1人で勝手に悩んでいると、また声がする。
「ん、んあ?」
結愛はなぜか俺に抱きつきながら、気持ちよさそうな顔をしている。
「優磨、くん。好き⋯⋯」
目をゴシゴシとこすりながら言う。どうやらこれは本音っぽい。
「優磨くん、おはよ」
「お、おん⋯⋯」
ニコニコと微笑んでいた⋯⋯。
「あ、間違えた」
そう言いながら、俺の顔めがけて近づいてくる結愛。
問答無用で近づいてくるその顔に、俺は何もできなかった。
俺の唇が、結愛の唇に触れた。
「⋯⋯うんっ! やっぱ、心地いいな〜」
朝の挨拶が、これと。
「朝はこうでなくっちゃね!」
結愛はすぐさま下へ向かった。
「もう、よくわかんねぇ。結愛が何を考えてんだか」
俺はそう思いながら、ゆっくりと階段を下る。
「ああああああああああ!」
階段を下っていると、洗面所の方から不思議と悲鳴が聞こえる。
「顔洗っちゃったよおおおおお! 私の優磨くんの唾液、洗っちゃった」
結愛は、階段を降りた直後の俺に話しかけてきた。
「ね、ぇ? ほら、私にさ、もう1回だけ、唇ちょうだい?」
「えー⋯⋯」
「ちょうだい?」
俺が文句を言う暇すら潰された。
「お、おう」
俺がそう返事を悩んでいる間も、学園のアイドルはジリジリと迫ってくるのであった。




