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これが普通の恋じゃないなんて、思ってもいなかった。〜家庭崩壊済みの彼女がヤンデレ化したら、俺が1番の被害者になった件〜  作者: 古治


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第5話 豪雨が降りつける、あの日

 あれは、中学2年のとき。

 その日は突然、豪雨が街を襲った。グラウンドも、すぐにベチャベチャになり、部活は中断。

 とりあえず校舎に逃げ込み、雨宿りをする。


「やべー、俺傘持ってねー」

「それなー! 俺も持ってねんだよなー」


 みんな、平然とスマホを取り出した。連絡でもしてるのだろう。


「お前、迎え来てもらえるって? 俺の親、来れないみたいでさー」

「あ、乗ってく? うち来れるって言ってたし」

「お、いいの? サンキュ」


 俺もスマホを取り出すが、画面は黒いまま。表示されたかと思えば、充電ゲージが0。

 あいにくこの日は、充電器を持っていなかった。俺には、借りれる友達も、いなかった。乗せてもらうなんて、夢のまた夢。


「⋯⋯はぁ」


 思わずため息が漏れる。職員室からは、忙しそうに右往左往する先生たちの様子が見える。


「とりあえず、最寄りのコンビニで、傘でも買うか」


 俺はカバンを頭に乗せ、町並みに合わないほど、大きな看板めがけて、猛ダッシュした。



 ******



 意外とすぐに、コンビニについた。

 いつも、コーチに走らされてるかいがあったか。


「こんなんで、入れてもらえるか?」


 体操服は濡れ、色すらも変わっていた。ポタポタと水が垂れていた。

 そんな迷っている俺をよそに、自動ドアは容赦なく俺を中へ引き込もうとする。


「入るか」


 そんな自動ドアに従い、俺は中に入った。

 ビニール傘だけ手に取り、レジへ運ぶ。


「これ、お願いします」

「わかりました。750円です。部活帰りですか?」


 俺はカバンから財布を取り出した。


「はい。予報では、雨降らないって言ってたんで、持ってこなくて」


 財布から、1000円札と50円を取り出し、トレーに置いた。


「大変ですね。おつりと、レシートです。気をつけておかえりください」

「ありがとうございました」


 色々と親切な店員だなーと思いながら、店を出た。


「よし、これで」


 俺は傘を開いて、ゆっくり歩き始めた。

 豪雨が、傘を叩き、大きな音が響く。大地に打ち付けるような雨だった。


 


「お、やんできたな」


 家まで、しばらく歩いていると、目線の先には、虹が見えた。まだ、ポツポツと、雨の余韻が残る。


「⋯⋯ぐすっ」


 俺が空き地の横を通りかかると、泣いてるような人の声がする。


「⋯⋯気のせいか」


 いつもなら、小学生でパンパンの空き地も、今は誰もいない、()()()()()()


「ぐすっ。⋯⋯ぐすっ」


 やっぱり、声がする。あの木陰の方からだ。


 恐る恐る近づいてみると、俺と同じ制服を着ていた。


「あ、あの、だい、じょうぶ、ですか?」


 空き地の木陰でかがみ込み、泣いている中学生なんて、他にいるのだろうか。


「だ、だい、じょ⋯⋯ぐすっ。うぶ、です」


 明らかに大丈夫ではなさそうな言い方だ。俺は、それが不審だった。


「とりあえず、家来ます? というか、来てください」


 俺は、彼女を立ち上がらせ、先導する。

 こうやって見ると、案外⋯⋯かわいい部類なのかもしれない。


「わかっ、わかりました⋯⋯ぐすっ」

「あの、何か、ありましたか?」


 俺は、丁寧に聞いた。


「い、いえっ。⋯⋯何も」


 彼女の目からは、涙がこぼれた。さっきからずっと、目の潤いがなくならない。

 これはいかん、と、俺は話題を探す。


「君、蒼國(あおくに)中だよね?」

「うん」

「何年生? 2年?」

「うん」

「部活は?」

「うん」


 俺が何を聞いても、『うん』としか言わない。

 とりあえず、その場の時間稼ぎができればいいと思っていたし、よしとしよう。


 

 ******



 しばらく歩くと、俺の家に着いた。

 俺はガチャリ、とドアを開く。俺の前に、誰かが家に入る。

 誰かは、靴を乱暴に脱ぐと、急ぐようにリビングへ向かった。

 その靴を、俺がしれっと直した。


「シャワー入ってくるから」


 俺は母に聞こえる声で言った。彼女にこっちと促しながら、風呂場へ誘導する。

 

 ――それが彼女、いや、結愛との、出会いだった。

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