第12話 もう一度する。あの音が
「はーい!」
私は勢いよく扉を開けた。
「⋯⋯まあいいや」
途中、優磨くんが止めようとしてたけど、気にしなくていいよねっ!
「誰ですか――」
扉を開けて、私が来訪者の顔を見たとき、全身から血の気が引いていくのがわかった。体中が、なぜかひんやり冷たくなってくる。
「結愛、どうしたんだ?」
優磨くんの声も、近いはずなのに、なぜか遠い。世界から、色が、全てが消えていく、そんなような感触を覚えた。
「どなたですか?」
優磨くんが、私の前に出て、聞いてくれてる。今の私には、どうしようもできない気がした。
その来訪者――ううん。私を見捨てた張本人は、気だるげに私を見つめてきた。
「あの、どなたか――」
「優磨くん!」
私の口からは、大声が出ていた。その声が、私の耳すらも轟かせる。
「な、なんだ、結愛?」
優磨くんが、私に気を使ってくれてる、それはわかる。だけど、これは、私が解決しないといけない、そんな問題だった。――ううん。正確には、優磨くんには関わってほしくないような問題だった。
「ま、まあ、いいか」
優磨くんは、私の眼差しを見て、察してくれたのかな。すぐに、少し後ろに行ってくれた。
「逃げるぞ」
それだけ言うと、私を見捨てた張本人――私の父、ううん。元父は、私の手首を掴んだ。
「やめてよっ!」
私は、無理やりその手を振り払った。
もう、私の父じゃ、ないんだもん。
「行くぞ」
私の気持ちなんて問答無用。元父は、無理やりでも私を引き戻したいらしい。庭先に停めてある黒色の車からも、焦りを感じられた。
「お前も、やってしまった、んだろう?」
その元父の言葉が、私の心の奥底に突き刺さる。もう、元父とも呼びたくない。赤の他人。
「ううん。私は、未遂だから。あなたと違って、ね」
「未遂? そんなの関係ねぇ。法律は無視されねぇんだよ」
その赤の他人は、貧乏揺すりを始め、腕についてる時計もちょくちょく見始めた。そんなに時間が惜しいのだろうか。
「とりあえず、逃げるぞ。お前も、同罪、だ」
その人は、なぜか私を指さしてくる。そんな指を、私は睨みつけた。
「ううん。違う。絶対、違う」
「ふんっ」
鼻で笑うその人――ううん。もう人じゃない。物。
「私には愛する恋人がいるの。一生を分かち合う、愛する人が。でももういない。それも、自分で殺してしまったんだもんね。そうだよね。浮気してたのも、知ってるから。あの時点で、は謝るしか選択肢はなかったんだよ? だけど逆ギレした。もうその時点で、運命は決まってたって、わからなかった? こういうのってやっぱそう。後先考えないで行動して、見捨てられたからって戻って来る。自分勝手だよね? 何、自分が世界の中心だ、って。誰もを引き付ける魅力があるって思ってるの? 痛いよ。その考え、捨てて。私、こんなやつが私の人生で関わってたって思うだけで、鳥肌が立つもん。絶対やだ。こんな自分勝手なやつとは、もう一緒にいたくない。私には、優磨くんっていう、一生をともにする人がいるんだもん。あなたと違って。優磨くんと、名字を分かち合って、優磨くんと、24時間一緒にいる。私には、そんな将来のレールが敷かれているの、わかんない? あなたなんか、もう私と一生関われないんだよ? 私がどんなに有名人なっても、あなたは一生牢獄で指くわえながら見てるんだよ? だから、一生私に近づかないで。私と、優磨くんの生活圏に、割り込もうとしないでよね?」




