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これが普通の恋じゃないなんて、思ってもいなかった。〜家庭崩壊済みの彼女がヤンデレ化したら、俺が1番の被害者になった件〜  作者: 古治


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第11話 黙想を捧げる――

「黙想――」


 体育館のスピーカーからは、無機質な声が流れる。

 俺も少し頭を下げ、まぶたを閉めた。あたりには、時計の秒針の音だけが響く。


 事件の次の次の日ぐらい。すぐに休校ではなくなった。完全普通日課で過ごす。

 この黙想は、いなくなった2人へ、思いを届けるためだとか。意味があるのか⋯⋯微妙。


「黙想、やめ」


 しばらくの黙想の後、ようやく終わった。黙祷ではなく、黙想だった。


「これマジなんの意味があんの?」

「それなー! 本当無意味すぎる〜」

「意味ないんちゃう〜?」


 周りからは、少しギャルっぽいような会話が聞こえる。ここは体育館だってのに。


「ふふんっ!」


 突然聞こえたその笑い声とともに、俺の耳に指が突っ込まれた。


「結愛、何すんだ」


 目の前には、満面の笑顔で見つめてくる結愛がいた。


「⋯⋯」


 結愛は何か言っているようだが、まったく聞こえない。ただ、口をパクパクさせているだけにしか、見えない。


「聞こえないから。離して」


 俺がそう言うと、結愛は口を尖らせた。

 結愛は、なぜか口を尖らせたまま、何かを思いついたかのように、目を丸くする。

 そして結愛は、ニコッと微笑みながら、俺の顔に近づいてくる。


「ん♡」


 結愛は、俺の唇を奪い、強引に唇同士を重ね合わされた。

 ――どうしよう、少し、慣れてしまっている自分がいるのは、気のせいだろうか⋯⋯。


「ん〜! やっぱ、優磨くんのは、気持ちいいねっ!」


 唇と同時に、俺の耳から、結愛の指が離れていた。


「気持ちいいって、なわけねえ」

「ふ〜ん?」


 結愛は、俺を見下すかのように見つめてくる。くっそ、俺の方が背は高い、はずなのに⋯⋯。


「じゃあ、もう1回、試してあげるよ?」


 と、期待を込めたような顔で俺を見てくる。


「⋯⋯」

「⋯⋯」

「⋯⋯」

「⋯⋯」


 俺と結愛の間で、かなり長い沈黙が、通り過ぎた。冷たいような、温かいような、微妙な温度が2人の肌に触れる。


「⋯⋯もう、ずるいなぁ!」


 結愛は、俺のすぐ近くまで走ってきた。そして俺の胸に顔を埋める。


「優磨くんは、私がもらってあげる⋯⋯!」


 ⋯⋯いや、怖いんですが!? もらってあげるって、え?

 結愛は俺を見上げるような目で見てくる。そんな目で見ても、無駄ですよ?


「それでは各自、教室に戻ってください」


 またしてもスピーカーから、無機質な音が流れた。


「さ、ほら、行こ?」


 俺の手は奪われ、指同士を絡めるように繋いでくる。


「ねぇ、やっぱさ、あそこ、デキてるよね⋯⋯?」


 周りのやつらのヒソヒソ声が、俺の耳に大音量で流れてくる。なんでこんな地獄耳になってしまったのか⋯⋯。


「それな。多分デキてる。あの子、可哀想」

「絶対なんか弱み握られて、あんな感じになってるよね⋯⋯? ほんと可哀想。あんなクソ陰キャと」


 耳が痛い。聞いてるだけで、俺のメンタルがゴリゴリ削られてゆくような気がする。誤解のはず、なのに。



 ******



「ただいまー!」

「ただいま」


 俺は家の扉を開けながら言った。

 いつもの、靴を揃えて、リビングに上がる。


「あれー? 誰もいないの?」

「⋯⋯そう、みたいだね」


 いつもなら、この時間は母親がいるはず⋯⋯。


「まぁ、なんか買い物でも行ってるんじゃねぇのか?」


 そう言っても、しょぼんとしている結愛。俺も、元気付けるために言ったが、自信はない。


「⋯⋯私には、優磨くんしか、いなくなっちゃう⋯⋯」


 結愛は、しょぼんとしながら言った⋯⋯。

 え? そもそも⋯⋯まぁいいや。


『ピンポーン』


 そのとき、突然インターホンが鳴った。


「はーい! 誰だろうっ?」


 結愛は、なぜか元気を取り戻し、飛び出ていこうとしている。

 不審な人かもしれないのでは?

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