第7話 第一層
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私がじゅるりと魔導書に涎を垂らしている間に、ソフィーさんはホーンラビットまでてくてくと歩を進めると、そのまま剣を振るだけで煙にしてしまった。
ドロップアイテムは、“一角兎の生肉”……そこは角じゃないんだ。
それにしても、生肉ということは、きっと調理すれば食べられるということ。
魔物の肉……かなり興味あるね……。
きっとソフィーさんなら食べたことあるよね、と思って聞いてみる。
「ソフィーさん、このお肉は美味しいんですか?」
「……たぶん?」
「た、たぶん? どういうことですか?」
「……私、いつも出されたものを食べてるだけなの。だから、食べたことはあると思うんだけど、どのお肉か、美味しかったか覚えていないわ」
「そ、そんな人いるんだ……。食にあまり興味がないんですか?」
「そういうわけじゃないけれど……。出てくるものなんて大体美味しいし、そんなこと考える暇があったら訓練のことばかり考えていたから」
「戦闘狂すぎる……。仕方がないので私が食べて判断します。ので、持って帰ってくださいね」
「分かったわ」
こうして最初の部屋にいた魔物を一掃したソフィーさんは、また足早に次の部屋に向かって行く。
次の部屋に着くと、ソフィーさんは再び転映具で部屋をぐるりと映してくれた。
そこには、魔物の他に──。
「おおー、他の冒険者がいる……」
「当たり前よ。ここ、第一層なんだから。今日は少ない方なんじゃないかしら」
「そうか……駆け出し冒険者は、みんなここに来るわけですもんね。そう考えると、逆に全然いませんね」
「第一層は一本道だもの、みんなさっさと抜けてしまうわ。この部屋を抜けたら、もう第二層へ行けるわよ」
「ええっ!? せまっ!」
「だからこんなにゆっくりしてるのは、私たちくらいじゃないかしら。それよりも、さっきよりも魔物の数が多いわね。ホーンラビットが三匹、ビッグラットが四匹。それと──」
そう言って、ソフィーさんが転映具を上に向けてくれた。
「ケイブバットが三匹ね」
「おおー、でっかいコウモリ……。飛行する敵はソフィーさんも苦戦するんじゃないですかぁ?」
ニヤニヤとそう言うと、ソフィーさんは平然と答える。
「そうね。面倒だから、基本は無視するわ。近寄ってきたら切り捨てるまでよ」
「まあそうですよねー」
飛行系の敵は、どのゲームでも面倒と決まっている。
アーチャーのような職業の仲間がいれば多少楽にはなるけど、一人で戦ってるソフィーさんには大変だろう。
と、いうことで。
「では、あのケイブバットを全て、倒してください! それがミッション・ワンです!」
「何よミッションって……。ツー以降もあるの?」
「考え中です!」
「あらそう。まあいいわ。じゃあ──《蒼炎波》」
ソフィーさんが剣を振るうと、その剣先から青い炎が放たれる。
私に向けて撃ったときよりもずっと弱い炎だったけど、それでも第一層の魔物には過剰な威力だったみたいで、一瞬で三匹とも灰になってしまった……。
「はい、ミッション・ワン──コンプリートね」
ソフィーさんが得意げにそう言うものだから、、私は「つまんねー!」と叫んだ。
「ほら、ドロップアイテムよ。“蝙蝠の翼膜”──こんなの何に使うのかしらね」
「とりあえず全部持って帰ってください!」
そんなやり取りをしている間にも──
「な、なにあの炎……!?」
「魔法……?」
と、同じ部屋にいた冒険者たちが驚きの声を上げていた。
「ソフィーさん、驚かれてる」
「みたいね。それより、もう次に行っていいかしら?」
「いやいや。部屋の魔物は全て倒しましょう」
「……はぁ。分かったわ。ちゃんと稽古、付き合って頂戴ね?」
ソフィーさんがぶっきらぼうに歩いていくと、転映具片手に次々と魔物を切り伏せていく。
──ザシュッ。
──シュパッ。
魔物はソフィーさんに気付くと同時に、煙となって消えていき、ドロップアイテムを落としていった。
「……え、あれってソフィー・ヴァレンタールじゃ……?」
「いやいや、他人の空似でしょ。だって至級でしょ? たしかソフィーさんって」
「でも……昨日の公開稽古で見たのにそっくりなんだよなぁ」
「じゃあソフィーさんのモノマネで食べてる冒険者じゃないの」
「バカか!──っつっても、至級が第一層にいるほうがバカか……」
なんかめっちゃ言われてるけど……。
でもソフィーさんは気にする様子もなく、さっさと部屋の魔物を全滅させていき、最後に冒険者パーティが戦っていた魔物だけが残った。
「……早く倒してくれないかしら」
「ソフィーが代わりに倒してあげたら?」
「それは無礼じゃない? でも、先生がそういうなら」
そう言うと、ソフィーさんは冒険者パーティに近づいていき……。
「私も参戦していいかしら?」
「……え、あ、はい!」
「ありがとう。じゃ、遠慮なく」
──ズバッ!
「──終わりね。ドロップアイテムは好きにして頂戴。それじゃ」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「何かしら?」
「あ、あの……ソフィー・ヴァレンタールさん、ですよね……?」
「そうよ」
「な、なんで第一層にいるんですか……?」
「……それは私も聞きたいくらいだけど……そうね。『ダンジョンを楽しむため』──らしいわ」
「だ、ダンジョンを楽しむ……?」
「何言ってるのか、分からないわよね」
そう言い残して、ソフィーさんはさっさと部屋を出ていった。
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「間違えて運に極振りしちゃったけど召喚士なら何とかなりますか? ~召喚で出てくる魔物が異常個体ばかりなんですけど!~」
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