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継母が公爵様との縁談まで欲しがるのでお譲りします〜まさか出戻ってきませんよね?  作者: カンテラ澪


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番外編2 溺愛されています

次の日の朝、私はオスカー様の腕の中で目が覚めた。


「起きたか」

「……ひ、ひえっ」

ご尊顔が、近い。


「何を驚いている」

「お、おはようございます」


なぜ、この方は朝から通常運転なんだろう。

そう、昨日、私は大変な事をしでかしてしまった。


でも、陛下と謁見されて、夕刻に戻ってらしたときは、満面の笑みで馬車を降りてらした。



初夜の支度をし、寝所に入る前に、ミレーヌさんが手首にもう一度、あのリボンを結んでくれた。

「お幸せをお祈りしております」

みんなそう言って見送ってくれた。


そして、私はオスカー様の妻になった。


「寝言が聞こえていたぞ、ブルーなんとか」

そんなはずはない。


「えっ?そんなはずありません。オスカー様の事しか考えておりません!」

「ハハッ、朝から威勢がいいな」


オスカー様が、私の手首の色褪せたリボンに触れ、解こうとされる。


「もう外していいのですか」

「無事に、結ばれたのでな」


リボンをスッと解いて、見つめられる。


「……っ」

恥ずかしい。


「顔が赤い」

うぅ、追い詰めないでください、だんなさま。


オスカー様は、リボンをひらりとさせて仰った。

「これは、また宝物庫行きだ」


「……あの、王女殿下のお話をお聞きしました」

「アリッサは無意識のうちに、このリボンを選んだのだろう」

私は頷く。

そう、なぜか、心惹かれたの。


「他国の王太子へ嫁ぐ事が決まっていた王女殿下が、命をかけて、エメルディ公爵に恋をした、本当の話だ」


「向こうの王家からはお咎めはなかったのですか」

「留学中の王太子殿下とエメルディの公爵は親友だった。王太子殿下が婚約解消をした。その代わりに王太子殿下に嫁いだのがパステーラの姫だった」


「え、パステーラって、お祖母様の?」

「そうだ、パステーラ侯爵家の七代前の姫がな。縁が巡り巡っている」


そんな事があったなんて。


「それでだ、我が奥方」

ぎゅうっと抱きしめられる。


「今後、衆人環視の前で靴下はもちろんのこと、靴も絶対に脱ぐな!どういう意味か知らないとは言わせないぞ」


「はい。お祖母様にもミレーヌにも、しっかりお説教されました」

「私の前では、いくらでも素足でいて構わんが」


「い、いえ、自重します」

もう、オスカー様ったら。




⌘

半年後、公爵家の暮らしにもすっかり慣れた私は、時々、馬に乗って遠い方の庭園にも行くようになっていた。


なんとミレーヌさんも馬に乗れるので、ついてきてくれる。


「奥方様、この前に植えたロメイルの葉が増えておりますよ」

「まあ、これはいいわね。あと三日もしたら、食べ頃よ」

「では庭師たちに収穫するように伝えましょう」


前の奥様が愛された庭園は半分が畑になっていて、私はベルモント領で植える野菜の種の選別をしていた。


そして畑の畝を後ずさりしながら、新しい種を蒔いていく。


「奥方様、後ろ」

「えっ」


バッシャーン!

「キャアッ」


畑に水を引くための低い水路に落ちた。

溺れはしないけれど、全身ずぶ濡れになった。


「うふふふ、ふふふっ、ミレーヌ、落ちちゃったわ」

「お怪我はございませんか」

「大丈夫、濡れただけ」


起き上がるけれど、身軽な乗馬用のドレスでも水を含んで重い。

二人でドレスの水を絞り、なんとか、馬に乗れるくらいにはなった。


「とりあえず、戻りましょう」

「奥方様、ブーツが濡れております。とりあえず靴下を脱いで」

「ダメよ。旦那様に見つかったら、大変な事になるから。大丈夫」

「では、お帰りになるまでに、急いでお部屋へ」


ブーツの中が水浸しで気持ち悪い。

馬を走らせると水が飛び散る。

なんかピュッと水がとぶのが可笑しくなってきた。


「うふふふ、ふふっ、ミレーヌ、気持ちいいわよ」

私は並走するミレーヌさんに向かって、気持ちよさを伝えてみる。


「奥方様、あの」

ミレーヌさんが急に馬を止めた。


「ふふふっ、どうしたの」


「ずいぶんと楽しそうだな。そこにいるのは水の妖精か」

「ひいっ」


「ミレーヌ!我が奥方はどこで水浴びをした」

「お帰りなさいませ、旦那様。奥方様は畑の水路に後ろ向きに」

「少し早く帰って、様子を見に来てみれば」


オスカー様が近寄ってきて私の馬の手綱をとり、あっという間に抱き抱えられた。


「あっ、オスカー様っ」


「ミレーヌ、先にアリッサの馬を連れ帰れ。湯あみの用意を急ぐように」

「承知致しました」


ミレーヌさん、行かないでーー。


「さて」

「履いてます。靴下もブーツも」


横抱きにされたまま、足を上げて見せると、ブーツの履き口から水がダーッと出てくる。


「アリッサ、風邪をひくではないか。ブーツを脱ぎなさい」

「嫌です、お約束しましたから」

「風邪をひくだろう」

「平気で、クシュッ」


唐突に顔を覗き込まれる。

「アリッサ、水浸しのあなたも美しいな」


え?あ、そんな目で見ないで。

引き込まれそうな青みがかった緑の瞳。大好きな瞳。


ぼうっとしていると、口付けをされた。

長い口付けが終わった時にはブーツは、土の上に落ちていた。


「風邪をひく、戻ろう」


「……」

「どうした」

「オスカー様、どうしてオスカー様はそんなに素敵なのですか」

「っつ!」

「ふふ。ロメイルの葉のような瞳が、好き」

「アリッサ!そういうことは、言わなくてもいい。私を殺す気か」


ぎゅうっと抱き締められると、邸に向かって、馬が駆け足で走り出した。


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