番外編1 まさか出戻ってきました
番外編。最終話の後の公爵家の様子です。
オスカー様に横抱きにされて、公爵邸に速攻で戻ってきた。
みんなが拍手して、口々におめでとうございます、って言ってくれるけど。
オスカー様は、どんどん階段を上がって行く。
そして滞在していたお部屋、オスカー様の隣にある公爵夫人のお部屋に閉じ込められた。
オスカー様がミレーヌさん達に指示をしている。
「絶対に逃がすな、私が帰るまでここから出すな、厳命だ」
「かしこまりました、旦那様」
「アリッサ、これから、陛下に事の次第をご報告し、公爵家の失態として責任を取らねばならない。つまり、あなたの好きな『償い』とやらが必要だ」
「ごめんなさい、私」
「私のところに戻って来たことは、褒めてやる。よくやった。ただ」
「ただ?」
「ただ、私たちの幸せのために、円満に収めねばならない」
「はい。覚悟して戻ってまいりました」
「覚悟か、どの程度の覚悟だ」
「この命と生涯をかけて、オスカー様のお側にいます」
「よろしい、ではそのように陛下と話をつけてくる」
そう言って、オスカー様は、私の顎をとり口付けをされた。
みんな周りにいるのに?
「い、いって、らっしゃいませ」
「顔が赤いぞ、我が奥方は」
ちょっと待って。
そして颯爽と部屋を出て行かれた。
その後、お部屋に閉じ込められ、花嫁衣装は脱がされ、早朝に湯あみをさせられたのに、また軽く湯あみをして、新しいドレスを着せられる。
ミレーヌさん達は、とても機嫌がいい。
フォリーに至っては、鼻歌を歌いながら、片付けをしている。
「さあ、アリッサ様、このデイドレスにしましょう」
うっ、と思うくらい恥ずかしい感じがする。
青緑色のデイドレス。
思いっきりオスカー様の瞳色。
「こ、こんなデイドレス、あった?」
「ええございましたよ。将来のための準備で」
「そうですよ。サフィエル様にお嫁入りが決まって、これはお蔵入りになっていたのです。まあ百五十着程度ですから、大したことはございませんけれど」
「でも良かったですわ、日の目を見ることができて」
「ねー」
侍女達がみんな楽しそうだけど、百五十着が大したことがない?
「ねえ、ミレーヌ。その百五十着のお色は」
「それは全て旦那様のお色ですわ。青緑系と漆黒を基本に。王都中のドレス店ではエメルディ色と言われていて、他家では使用禁止ですから」
ええーーーーっ。他家禁止?
私はとんでもないところへ、戻ってしまったんだろうか。
ミレーヌさんが私を呼ぶ。
「それはそうと、奥方様」
「はい?」
今、なんて、奥方様?
「奥方様、マーガレットの花言葉は?」
「ミレーヌ、みんな知ってるわよ。高潔、でしょう?」
「では、ノースポールは?」
「秘めた愛だったかしら」
「ブハッ!」
侍女たちが笑い出す。
え?何?
もしかして間違った?
「奥方様、マーガレットが『秘めた愛』でございます」
「ええっ、じゃ逆だったの?嘘、待って」
「まあまあ、ずいぶん賑やかだこと」
お祖母様がお部屋に入ってらした。
「お、お祖母様。あの、ごめんなさい」
「謝る必要はありません。アリッサの一生の事なのですから。どの道を選んでも苦難も幸せもあるわ。自ら決めてこそ立ち向かえるというもの。よくやりました」
「はい、一生をかけて努力していきます」
「まあ、戻ってくるとは思っていたのだけれど。ここにいる全員が」
「どうして」
「そのリボンよ」
一度ドレスを脱いだ時に、外されたあの色褪せた細いリボンは、銀盆の上におかれている。
「ブルーノ様に、公爵家の紋章が入っていると言われたのですが」
「やっぱりアリッサは気づかなかったのね」
「紋章には気がつかなくて」
「そう。無意識に選んだのね。公爵家の鈴をつけたようなものだから。ブルーノ様なら気がつくでしょう」
「公爵家の鈴?」
「ミレーヌたちも、みんな知ってますよ」
私はミレーヌさんの顔を見た。
ミレーヌさんが説明してくれる。
「このリボンは、何代も前に、王女殿下と公爵様が大恋愛の末に結ばれ、王家から嫁がれた王女殿下が、公爵家の紋章を身につけ公爵様への愛を示した、と言われる公爵家の家宝です」
家宝?
「……だって、たくさんあったし、古いものがいいって」
「代々、公爵様の奥方様になられる女性は、これを手首に結んで嫁いで来られます」
「まさか、あ、だからサイアス様が」
「そうです。亡くなられた奥方様は、サイアス様の妹さま。サイアス様が花嫁の馬車を先導されました」
お祖母様が微笑んで仰った。
「アリッサ、偶然かもしれません。でもあなたは導かれていたのだと思いますよ。それに、マーガレットとノースポールの花言葉を間違えるなんて。公爵閣下、かなり驚かれてらしたわよ、ねえ、ミレーヌ」
「マーガレットまみれでしたので」
フォリー、言わないで。
「旦那様が額を発注するようにと」
ミレーヌさん、額はいらない。
「確かに、それはいい考えだわ。『秘めた愛がいっぱい』の名作ね」
「お祖母様っ」
「みっちりと公爵夫人教育をお願いしなくては。覚悟の上、戻ってきたのですから、いいこと?」
「はい、精進いたします」
そして、夕刻に、オスカー様は満面の笑みでご帰宅された。
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