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継母が公爵様との縁談まで欲しがるのでお譲りします〜まさか出戻ってきませんよね?  作者: カンテラ澪


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12/19

12 ブルーノ様とやっと再会できました

⌘

エメルディ公爵邸サロン。


「アリッサ、元気そうで良かった。一年近く会えず気がおかしくなりそうだった」


ブルーノ様が感極まって、私の手を握る。

いつもと違う手。


「アリッサ、プリシラに襲われたと聞いたが、大丈夫なのか」

「ええ、公爵様も、お医者様も良くしてくださって」

「そうか、顔を見て安心した。ずっと心配していた。それにあんな手紙を」


あんな手紙って、だってあれは。


「アリッサ、あんな別れ話は、到底受け入れられない。父上を説得し、公爵閣下にも、あなたを返していただくようにお願いしている。もう少し待ってくれ」


「ブルーノ様、それは無理よ」

「なぜ、何が」

「今回のお話は、国王陛下からのお話。無碍にはできないわ」


「打診じゃないか、王命じゃない」


打診は王命と同じ、こちらが心の準備をする時間を設けてくださっているだけ。

それだけ大きな問題なのに。


「好きだ。ずっとアリッサだけを見て来た。将来を共に生きる約束だっただろう」


「ブルーノ様、状況が変わったの。今すぐベルモント領を何とかしなくてはならないのよ」

「今は、エメルディ公爵家が采配してくださっている。それを引き継ぐだけなのだから」


ブルーノ様って、こんな考え方をする方だったかしら。

「ブルーノ様、引き継ぐだけではないのよ」


「公爵家の使用人にできるなら、サフィエル侯爵家にもできる」


「……それはそうかも知れないけれど、そう簡単には」


サフィエル家は絹織物の産地。

ベルモントは農業と養蚕が盛んで、蚕の繭をサフィエル家に納めていた。

でもブルーノ様は実際の養蚕も農業もご存じない。

エメルディ家は、国の主な産業を全て把握している人材、いえ人財が揃っていて、国の重鎮である公爵として各領地への助言をする立場。


「俺にはできないって言うのか」

ブルーノ様が気色ばむ。


「そうじゃないの、ブルーノ様」


「政略結婚なんて、年だって十も離れている、しかも冷たい御仁だと聞いている。俺は、アリッサを幸せにしたいんだ」


何を言うの?ブルーノ様。

今、扉近くには、ミレーヌさんとフォリーが控えているのに、公爵様を悪く言うなんて。


「お願い、わかって、ベルモント領民のためなの。それに公爵様はそんな方では」


「君は、そうやっていつも自分を犠牲にする。プリシラ殿が来てから、どんな目に遭ったのか忘れたのか」


「覚えているわよ」

殺されかけたのだから。でも、何故か言えなかった。


「俺が何とかする。だから早まるな!」

早まるなって、そう言うことではなくて。





⌘

オスカーの執務室。


ブルーノとの面会の様子を侍女頭ミレーヌが報告していた。


「そうか、わかった。ご苦労だった」


「あの、旦那様」

「なんだ」

「これを、アリッサ様が」

「!」


ミレーヌが差し出したのは、銀の書状盆にのっている手巾だった。

公爵家の紋章が丁寧に刺繍されている。

しかも、公爵本人の瞳色の糸で。

これは亡き妻が、特別に染めさせた糸だった。


この色を、彼女も選んだのか。


「アリッサ様が、亡き奥様の刺繍糸で」

「あの時、これを刺していたのか」


「旦那様が大量のドレスを贈られた日に、何かしたいと仰って。差し出がましいとは思いましたが、亡き奥様の形見の刺繍机をお貸ししたのです。それからお時間がある時は刺繍を。最近は孤児院への訪問で長時間のお手伝いをされて、庭のお手入れなどもお忙しくしてらっしゃるので。時間がなかなかないようですが。明るい日が差し込む窓辺にいらっしゃる時は、亡くなった奥様が戻られたのかと思うほど」


「アリッサは、これを守ろうとしたのか」

「おそらく。大切に扱っておられましたから」


公爵はそれを手に取る。


そこには、オスカーの名が。いやまだ途中だった。

あと一文字、足りない。


「ありがとう、ミレーヌ。これは私が貰っておこう」


ミレーヌが部屋を辞したあと、オスカーの心は泡立った。

波が引くような静けさを取り戻すため、オスカーはその手巾を胸に当てたまま、茫然としていた。


——手放してやらねば、な。


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