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私の前で命を馬鹿にするな  作者: 黄野ポピー
3章

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刃物

ぼんやりと鈍く光るハサミを眺めていた。何分経ったのかは分からないが、ガチャッと音がしてお母さんが帰ってきた。


「ただいま。遅くなってごめんね〜」


「いいよ、肉じゃが作ってあるから食べて」


何故か持っていたハサミは手にくっついたように離れなくて、背中に隠した。


「こんな暗い中で何してたの?電気つければいいのに」


「わかんない。・・・・・ぼんやり外を見てた、のかな?」


「そう。さちはごはん食べたの?」


「ううん、食べてないよ」


「それなら一緒に食べましょうよ」


「うん」


手からハサミは離れたので、静かにそこに置いた。


お母さんと対面に座って肉じゃがを食べた。りこにもこれを食べてほしかった。作ってあげる約束をしていた。そのことを思い出してポタポタと涙があふれた。


余った肉じゃがはタッパーに移して、お母さんと並んで後片付けをした。お皿や鍋を洗い、カゴにいれていく。一瞬ぼんやりとしたのか、お皿を落として割ってしまった。欠片で指を切ってしまい、少しだけ血が出た。


りこがお通夜から数日が過ぎた。お母さんが帰ってこない時は無性に刃物が目につくようになった。はじめはハサミだったが、料理中は包丁が手元にある。刃の冷たさと重さはよく知っているが、腕の内側に当てた時のヒヤリとした感覚は未知のものだった。


勉強は続けていた。だがりこがいなくなり、同じ学校に進学しようという意気込みも消えた。目標が定まらないまま、月日は流れた。


ある時、だ。その日は何もなかった。ふわふわとした妙な感覚があった。日課のようになりつつあるハサミや包丁を持ってじっくりと眺めること。その日はハサミだった。刃を開いて左腕に当てた。冷たい。ちくり、として見ると皮膚が少しだけ切れたのだろう、血が滲んでいた。そこからはなんでそうなったのかは分からない。


覚えているのは、髪を切った時のヂョギンという不快な音だった。

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