片付け
食べてもらえず、冷蔵庫の中で増えていった食べ物たち。ここに通って願い続けた日々と思いの強さを再確認して、また涙がこぼれた。
それでも尚、りこは帰ってこない。
その事実だけが背中にのしかかった。
嗚咽がもれる。視界がにじむ。それでもなんとか手を動かし続けて、病室の片付けを終わらせた。
なにかに集中していないと、りこのことを思い出して体が動くなくなってしまう。おばさんも同じ気持ちのようで片付けやお医者さんや看護師さんとの話をしていたと思う。
そこまで広くない病室はすぐに綺麗に片付いてしまった。りこの体はこの後霊安室に運ばれるそうで、今はここでお別れになってしまうと聞かされ、更に絶望感がおそってきた。
「りこ・・・・・・」
手を伸ばしかけたとき、後ろから声がした。
「もうりこを、休ませてあげよう」
同じ中学の制服を着た男子。なんだっけ。りこの彼氏だ。名前は確か、奥野。
「奥野くんも、来てくれたのね」
「はい、遅くなりました」
なんだろう。この感覚は。
ザワザワする。神経を逆なでされるような不快感。
「それでは、失礼します」
真っ白なシーツをかけられたりこが行ってしまう。伸ばしかけた手をおばさんがギュッと握った。
それから何日か経って、お通夜があった。そこまでにりこのことは気持ちの整理を付けられた。やはり泣いてしまったが、病院の時のように縋りつきはしなかった。
それでも喪失感は隠せない。お母さんからは『表情が抜け落ちてる』と言われた。たぶんその通りだ。私の中で色んな感情がぐちゃぐちゃになってまとまらなかった。
後悔。喪失感。虚無感。罪悪感。憎しみ。怒り。
なぜりこが死ななければならなかったのか。
なぜ交通事故が起きたのか。
なぜ私がその場にいなかったのか。
理不尽に対する言いようのない感情は私の中で渦を巻いた。
そして家に帰り、真っ暗な部屋で刃が月光で輝いてるハサミを見つけた。




