かび
息をひきとったわ。
亡くなったということ?
だれ?
りこが、死んだ?
「うそ」
「・・・・本当、なの」
「おばさん、うそだよ。だって、りこの顔のケガも治ってきたじゃない。冷蔵庫にはりこの分のプリンも残ったままだよ」
「さちちゃん」
「まだ、いなくなるなんて、早すぎるよ」
「さちちゃん」
そうだ、りこの手は温かくて柔らかかった。今だってそのはずだ。だらんとしたりこの手を握る。
冷たい。重い。
あまりにも生々しい欠落の感覚。
「りこ。りこぉ・・・・」
理解してしまった。
りこの命がないことを。
私はりこの体に縋りついて泣いてしまった。涙は止まることなく、いつまでも流れ続けた。体の水分が全部流れ出たらしく、途中からは涙は止まっていたが嗚咽だけが冷たい部屋の中に響いていた。
「エンゼルケア (死後処置)を行います」
「・・・・お願い、します」
おばさんに手を引かれて立ち上がった。フワフワとした妙な感覚。現実間のなさ。にじむ視界。しかし涙のあとがヒリヒリと痛むことで現実だと、夢ではないと訴えているようだった。
看護師さんによって、体を綺麗に拭かれ、化粧をされたりこを見て、私は頭が真っ白になっていた。
「さちちゃん、璃子の荷物片付けるの、手伝ってくれる?」
お医者さんと話していたおばさんが私に声をかけた。
りこがいつも使っていたカバンに衣類などをしまっていく。下着や服など、これは一緒に買いに行った。これは着てるのを見たことがある、と思い出しながら一つ一つしまっていった。冷蔵庫には持ってきた様々なお菓子が入っていた。
小さな冷蔵庫の中、作って持ってきていたプリンにはカビがはえていた。




