岸田 璃子
まどろみの中で夢を見る。
璃子の笑顔が見える。
「さちー、この動画のねこ見てよ!すっごい可愛いんだよ!」
「こっちの仔犬だって可愛いいわよ?」
「うわぁ〜!これはどっちか決められないね!どっちも可愛すぎる!」
スマホの動画で可愛い動物がいたら互いに教え合った。たまに
「さちってねこっぽいから、似てるの見つけた」
って言われることもあったけど。
「このクレープ美味しい〜!さちのも一口ちょうだい?こっちと交換ね」
「いいわよ。はい、あーん」
「あむっ。ん〜、このベリージャム美味しいね。こっちもはい、あーん」
「あむ。うん、チョコが濃厚で美味しいわね」
クレープは2人でよく食べに行った。フードコートの片隅で賑やかに食べたものだ。カフェではパフェやパンケーキを頼んで交換もした。
「それで、ここのxがこの値になるでしょ。たからこっちの式を使って」
「あ、わかったわ。なるほど、さすが璃子。頼りになるわ」
「璃子って数学得意よね。不思議なことに」
「なんか失礼じゃない!?」
「そろそろおやつでももってくるわね」
「さちは料理が得意だよね。意外・・・でもないけど」
「今日はトライフルよ。冷やしてあるから、アイスも乗せてくるわね」
「トライフルってどういうの?」
「スポンジケーキをカットして、器に入れて。クリームや果物を重ねたものね。ケーキを分解してプリンとかの形をしてると思えばいいわ」
「さちは将来そういう料理の道に進むのかな?」
「なによ、急に」
「そしたらさ?さちの美味しい手作りが食べやすくなるのか、チャンスが減っちゃうのか、微妙だなーって」
「もし料理の道に進んだら、間違いなく試作品を食べさせるわよ。安心して?璃子のお腹は私が守るわ」
「私太るの?痩せるの?ねぇ、どっち?」
他愛のない、笑顔に満ちた日常。それは唐突に終わりを迎えるのだ。




