処置
こんこん、と保健室のドアをノックする。グラウンドに面しているためか、若干ほこりっぽい。
「高田さん、外から来るなんて珍しいね。帰り際になんかあった?」
「少しトラブルがありまして」
と、手形の残った手首を見せる。
「ふむ・・・・中に入って、イスに座って」
棚から包帯やら湿布やらを出すのが見えた。
「そんなに大げさじゃないですよ。ちょっと、手首を掴まれたくらいで」
「もう青黒く変色してきてるよ。痛みがないかどうかだけでも確認はするよ。これらは念のため」
冷蔵庫から保冷剤を出す姿も見て観念した。
「手首は動く?」
「少し痛いですが、動きはします」
「ふむ・・・・少し冷やしておいて」
とタオルで包んだ保冷剤を渡された。
ケガの報告書だろうか、書類を出しながら先生がこちらを向いた。
「それ、どんな風にしてそうなったの?」
「えっと、男子生徒に捕まれまして」
「だろうね。その男子生徒の名前はわかる?」
「クラスは分かりませんが、菊池、と言ってました」
「手首動くならそこまで心配はいらないかもしれないけど、念のため固定もします。2,3日経ってもまだ痛みが抜けなかったら病院に行くこと。たぶん、捻挫してる」
「そんな、大げさな」
「最悪を考えないといけないんだよ。甘く見るのは厳禁。足は問題ないよね?歩いて1人で帰れる?」
「えっと、買い物をしたいんですけど」
「手首に負担を掛けないなら許可しましょう」
「・・・・がんばります」
痛めたのが左手でよかった。利き手だったら色々苦労しそうだし。
右手でカバンからスマホ出して、叔母に一応連絡を入れておく。
『左手ケガしちゃって、ごはん作るの手伝えない。ごめんなさい』
『お手伝いは大丈夫よ。ケガはどう?』
『保健室の先生が言うには捻挫かもって』
『帰ってきたら色々聞くわね。お買い物も今から私が行ってくるから、そのまま帰ってきなさい。何が食べたい?』
『洋食にしようと思ってたんだけど』
『洋食ね。おっけー。気をつけてね』
おばにも迷惑をかけてしまった。
「はい、連絡つきました。買い物はせず真っすぐ帰ります」
「よろしい。はい、手首固定するよ」
手首にはくっきりとアザが出来てしまった。そのうえに湿布を貼って、しっかりと包帯を巻かれてしまった。




