嫌なやつ
「物理的に近付くかもしれない、って言ったじゃないですか」
「それでも一緒に登校してたじゃない!なによあんた!奥野くんの家の近くにでも住んでんの!?」
「いえ、寮住まいです。彼も同じ寮です」
「なによそれ!」
激昂した女生徒は手を振り上げた。叩かれる、とぼんやりと思った。
「はい、そこまでね」
と声が聴こえた。無意識に閉じていた目を開くと、ひとみ先輩が女生徒の手を掴んでいた。
「はい、生徒会です。これ以上騒ぐなら職員室とかに連れていかなきゃいけないけど、どうします?」
「ちっ・・・・」
女生徒は足早に去っていった。
「ひとみ先輩、ありがとうございます」
「大丈夫だった、さちちゃん?」
と、普段の声音で私を心配してくれた。
事のあらましをかいつまんで説明したところ、
「奥野くんねぇ・・・・まぁ、密かに人気出そうなタイプかもしれないけど」
「声をかけられたり、一緒に登校したみたいに見えたのが良くなかったみたいです」
「これは奥野くんにも相談だわね」
それだけ言うとひとみ先輩は「気をつけてねー」とだけ言って、見回りに戻ったようだ。
はぁ、とため息をつく。
なんであれのために私が苦労しなければならないのだろうか。
ホームルームを受けるため、教室に戻るのだった。
「あ、さちちゃん。大丈夫?なんか疲れてるみたい」
と、すみれが飴をくれた。
「ありがとう、大丈夫よ。前に私を呼び出した人とまた話してきただけだから。ひとみ先輩も来てくれたし」
「さっちー、すみれー、おはよーう」
「おはよう、さち、すみれ」
「おはよう」
「さち、前に呼び出し受けてたじゃん?あの女のこと少し聞いたんだけど、ちょっと気になって・・・。あの後は大丈夫?」
「ついさっき話してきたところよ」
「ちょっと気をつけたほうがいいかも。あの女、今の彼氏と付き合う前は彼女もちの男ばっかり狙う嫌なやつだったらしいから」




