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第3話 トンネル

「このうつ伏せトロッコはな、なんとモーターで動くんや。凄いやろ、人力じゃ無いんだぞ」


「マジッスカ?! ソイツは確かに凄いッス。デモ......一体全体デンリョクはドコカラ取ってるんデスカ? マサカ夢の国カラここまで引いてるッテ訳デモ無いんデショウ?」


「当たり前や。何キロ有ると思ってんだ。実はな、敵さんの電線からちょろまかしてるんよ。今のところ気付かれてへんからこの先も多分大丈夫なんやろ。まぁ、省エネに越したことは無いからな。ハッ、ハッ、ハッ」


 何はともあれ真っ暗は困るし、雪道を散々歩いて疲れ切ってるから明るくて自動であることに越したことは無い。


 有りがたく電力を使わせて頂きましょう......そんな感じて、心で敵に礼を言うポールだった。



「それではポール君。ここからが本当の戦いや。うちらの目的は『ヴェロニカ』がマーメイド強奪に絡んでる証拠を掴むことと、マーメイドを奪い取ることだ。


 安心しろ、あたしの調べじゃ情報はわんさか眠ってる筈だし、この時点で間違いなくマーメイドは炭鉱跡から運び出されて無い。


 ただし、このチャンスを逃したら海外流出は逃れられん。そうなったらもう終わりだわな。


 いいか? 今からあたし達は目的を共にしたチームだ。生きて帰るのも、死んで土に帰るのもよし。悔いだけは残さんようしっかりスクラム組んで気張っていこうや!」


 凛がニヤリと笑顔を見せれば、


「凛サンとチーム組む訳ダカラ、土に帰ることは無いデショウ。必ず目的ヲ達成シテ生きて帰りマスヨ」


 ポールもニヤリと笑顔を返した。



 確かに凛は公安きっての強者であり、ポールは美人の前だと実力以上の力を発揮する。


 そう考えれば、もしかしたらこのチーム......


 2人の個性が上手く噛み合いさえすれば、史上最高のチームになり得るのでは無かろうか?! まぁ、希望的憶測なのかも知れないが。



 やがて......


 そんな素晴らしきチームの、素晴らしきリーダーである凛が、遂に勇ましく進軍を宣言した!


「ポール君、なんか危なそうだから、君が先に行ってくれ」


「マ、マジっすか?!」



 そんなこんなで......


「南無阿弥陀仏!」


 凛がポールの乗ったうつ伏せトロッコの『GO!』ボタンを押す。すると、


「マダ死んで無いデスヨ!」


 勇ましき言葉を残し、進軍を開始するポールだった。


 ゴロゴロゴロ......


 すっかり不安な気持ちで満たされた彼の心は、そんな乗り物が揺れれば揺れる程、新たな恐怖に包まれていくこととなる。



 何だかもの凄い揺れだけど......


 落盤とかしやしないだろうか? 


 しかも、どんどん速くなってるし! 


 ガタゴト、ガタゴトッ......  


 ゴトゴト、ゴトゴトッ!


「チョ、チョット! ナンデそんなスピード上げるのサ?!」


 気付けば時速30キロを超えてた。たかが30キロ、されど頭スレスレの閉鎖空間ともなれば、体感的には100キロにも匹敵する。


 更にそれがどこまで続くかも分からないとなれば、異常なまでの恐怖感が煽り立てられてしまう。


 途中、滝のように水が流れ落ちてるところを通過すれば、ビチャ~! 「ウワァ!」 せっかく乾き掛けた服も再びずぶ濡れ状態。


 突然頭から紐が落ちて来たかと思えば、「へ? なにコレ?」冬眠してた『マムシ』が突然起こされ、トロッコの中で暴れまくってる始末。


 どうやら、摩耶が『何か危なそう』と言ってたことは、決して冗談では無かったらしい。


 ゴツンッ。


「イテッ!」


 バコンッ。


「イタタ......」


 やがてポールの頭にたんこぶが2つ程出来たその頃、キー、キキキッ......


 ようやく殺人コースターは終点を向かえることとなったのである。


 距離にして凡そ200メートル。


 よくこんな長いトンネルを敵に気付かれること無く作り上げたものだ。今更ながら、公安のレベルの高さ、そして凛の執念に舌を巻くポールだった。



「ハァ......死ぬかとオモッタ」


 首に巻き付いた『マムシ』を外へ放り投げながら、ここでようやく安堵の表情を浮かべるポールだった。


「無事辿り着いたな?」


 遥か向こうからそんな声が山びこして来たから、


「ヘイ」


 と答えると、トロッコは一気に元来た場所へと戻って行き、今度はゆっくりと凛を乗せて戻って来た。ポールの時とは違い全く濡れて無い。


「ナンデ濡れて無いんデスカ? シカモゆっくり走ってタシ」


「ああ、あそこか......普通避けるだろ。なんだ? 避けなかったのか? そりゃあ濡れるわ。それとこんな狭い空間でスピード出したら危ないに決まってるだろ」


「......」


「さてと......」


「ココからが本番デスネ」


「だな......」


 見れば2人の目の前壁に再び再びハッチが。きっとここを開ければ、例の下水道に通じているのだろう。


 気付けば2人の顔から笑顔が消えてる。ここからは凛に取っても未知の世界。次のステップへ足を踏み入れた途端、真のサバイバルが幕を開けることとなるのだろう。



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