第1話 雪道
ところは打って変わって、再び群馬県の超山奥。そこが筋金入りの豪雪地帯てあることは今更言うまでも無い。しかも真冬と来てる。
そんな山中をずぶ濡れでトボトボと歩き進む年若き2人の男女はと言うと、なぜか凍結マンモスになって無かった。
「ココは気合いデス! 凛サン、足は大丈夫デスカ?」
「何をこれしき! マーメイドは待っちゃくれんよ。ポール君!」
そんな2人の気合いが、きっと氷を溶かしてくれてたんだろう。
「タシカニ、マーメイドがどっか行っちゃったら、マズイんですけどネ......デモこう寒くちゃやってラレマヘン。へ、へ、へクション!」
「あとちょっと進めば炭鉱跡だわさ。地下に潜れば暖かいんやないか? へ、へ、へクション!」
「だとイイんですケドネ......へ、へ、へクション!」
やっぱ空元気だけだったらしい。当たり前だ。ずぶ濡れで雪山の中を歩いてる訳だから、凍死して無いだけでも神様に感謝しなきゃならない。
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ここで、ちょっとばかり話を前に戻しておくことにしよう。
40分程前まで2人は、地下のBARでカクテル片手に語り合ってた。すると突然観覧車が倒れて来て、凛が100キロの木製カウンターの下敷きに。その際、凛は不覚にも足に傷を負ってしまう。
それは正にメガトン級の大地震。そんな大揺れのお陰で火の手があがり、不運にもプロパンボンベに引火して大爆発を引き起こしてしまう。
ポールと凛の2人はこれまた不運にも、転がって来たゴンドラと共に飛ばされて、源氏池に見事着水。
そこからずぶ濡れのまま【炭鉱跡】へと向かって雪道をトボトボ歩くこと30分。今に至ると言う経緯だ。
思い出して頂けただろうか?
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そんな寒さが2人の体力を容赦無く奪い続ける中、突如凛の顔が引き締まり、次の瞬間足をピタリと止めた。
それに呼応するかのように、ポールの顔からも笑顔が消える。
極寒の世界の中で、それは無理矢理作り上げてた『ゆるかわムード』が終わりを告げた瞬間だったに違い無い。
一体何が起こったと言うのだろうか? その理由は、他でも無かった。
「隠れろや」
「リョウカイ」
見ればなんと、生い茂る木々の間から複数の光が! それでそんな光の数々は一定の距離を保ちながら、ゆっくりと左右に動き続けてるでは無いか。
「あれは警備兵の灯りやな」
大木の隙間からちょこんと顔だけを出して、状況を推理する凛。
「慌ただしさガ感じラレナイところをミルト......まだ見付かったワケじゃ無さそうデスネ」
一方、凛の身体の上からこちらもちょこんと顔だけ出して語るポールだった。
どうやら20メートル程先は木々が伐採されてて平地が広がってるように見える。
きっと複数の光は、そんな平地を巡回する警備兵達のものだったのだろう。
「警備兵ガ警備してるってコトハ......」
「そう......あの先に炭鉱跡への入口が有るんや」
「ホウ......ヨク調べマシタネ」
「ここまでは森の中で目立たんから何度も来とる。でも20メートル先は何も無い平地や。身を隠すところなんか有りゃしないし、警備も厳重で近寄れん」
「じゃあ、ドウスルんデスカ? 2人で行ったりシタラ余計目立つデショウ」
「そこでなんやが......」
凛は一瞬不敵な笑みを浮かべると、何やら足元の雪を払い始めた。
「イッタイ何を始めたんデスカ?」
「いいから手伝えって」
「ハァ?......」
手伝えと言われたんだから手伝うしか無い。ポールは意味も分からぬまま、凛に倣って足元の雪を払い始めた。
かなりの重労働ではあったが、冷え切った身体にはちょうどいい運動。少しづつだけど、身体がポカポカして来る。
やがて額に汗が浮かび上がり始めたちょうどその頃、土の上に敷かれた布のような物が姿を見せ始めた。
「コレハ?」
「そっち持って」
見れば土色と化した2メートル四方の分厚い布切れ。それはまるで、その下に存在する何かを隠してるかのように思えてならない。
「......」
ポールはそれ以上聞くのを止めた。論より証拠、この布切れをめくれば分かることだ。
そんでもって、
「「せ~の~、よっと!」」
2人息を合わせて、そんな布切れを剥がしてみれば、なんとその下には?!
「コ、コレハッ?!」
「見ての通りや」




