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第7話 カフェイン

「テロリスト共、観念しろ!」


「ここに居るのは分かってるんだぞ!」


 なんと! 


 地下から階段を駆け上がって来たランボー達がなだれ込んで来たのである。しかも、美緒の推定時間と1秒の狂いも無く! ただもう驚きの一言だ。


 そんな慟哭に包まれる中、目が眩む程に光を発する光源の数は全部で8つ。つまりそれは8人のランボーがキラースパイダーの餌食となる為に、わざわざライト片手に大挙して押し寄せてくれたことを意味してる。



 ちなみに......


 美緒の推定はこんな感じだった。


①地下で爆発音を聞いてから次なる行動へ移るまでの時間


 1.5分


②地下室から階段室まで移動する時間


 0.3分


③地下1階から17階まで階段を上るに掛かる時間


 1フロアー平均0.3分×18階

 計5.4分


 合計7分12秒


 そして17階の扉を爆破してから、ランボー達が今この食堂に突入して来るまでに掛かった時間......


 合計7分12秒


 それは正に、美緒の行動予測時間と脳内時計が完全に一致を見せた瞬間だったと言えよう。


 特筆すべきところは、いくら身体を鍛え抜いたランボー達とは言え、18フロアーも階段を駆け上がるともなれば、当然の如くペースは徐々に落ちて来る訳である。


 そんな体力消耗までも計算し尽くし到着時間を設定した美緒の脳は、正に精密機械を超えた精密機械と言っても決して過言では無い。


 きっとこれまで美緒が経験して来た極神島、富士の樹海、極東ロシア......それら舞台で戦った数々の傭兵達の情報が、全て数字化されて彼女の脳にインプットされてたことの賜物なのでは無かろうか。とにもかくにも凄い! の一言だ。



 そして遂に......


 ここで美緒VSキラースパイダーの戦いがいよいよクライマックスへと誘われていくことになったのでした。


「ん、なんだ? このネバネバは?」


「な、なんか、身体全然動かないんだけど?」


「ところで......なに? あのデカイのは?」


「ま、ま、ま、まさか......」


「まさか?」


「まさか?!」


「「「「「キラースパイダー??!」」」」」


 大パニックが起こることも必然的だったのである。


 参考までに言うと、この唐突なる事態に頭が真っ白になったのは何もランボー達だけじゃ無かったらしい。


 なんと、美緒の身体を包み込むキラースパイダーの手の力が一瞬緩んだのである。そんなことともなれば当然の如く、


「今がチャンス!」


 身体を海老反りにして、一気に魔の手から離脱を成し遂げる美緒だった。こんな絶好の機会を逃す彼女じゃ無い。


 一方、獲物を取り逃したキラースパイダーはと言うと、離脱した美緒なんかに目も向けて無かった。どうやら補食本能は既に別の方へ向いてたらしい。


 ランボー達に取っては迷惑な話であるが、8つの目はギョロギョロとその全てが彼等に向けられてたのである。


 どうせ食べるなら1人より大勢の方がいい......飲食店の食べ放題が人気のご時世ともなれば、尚更そんな発想になるのだろう。



 そして遂に!


 美緒の集大成はいよいよここから始まることとなる。


「あらよっ!」


 気合一発。美緒はそんな掛け声と共に、軽い身のこなしで配管にブサ下がった。そして次の瞬間には、


 カチッ!


 ガッチャマン(チャッカマン)をスプリンクラーヘッドに当てて着火。すると当然の如く消防設備は忠実に仕事を始めてくれる訳だ。


 プシュ~......


 なんと、恵みの大雨がキラースパイダーの頭上で降り出したのである。


 そしてここからが重要。


 続いて美緒は、繋ぎのジッパーを一気に下まで下ろす。もう全開だ。そんなことをやっちゃうと、さっき散々溜め込んだ大量の粉末が大雨と混ざり合って大変なことが巻き起こってしまう。


「さぁ、たらふく飲みなさい!」


 ビチャビチャビチャ......結果、蜘蛛の中枢神経を完全に麻痺させる強力な成分がキラースパイダーの全身に滝の如く流れ落ちて行ったのでした。



「なんかいい匂いするな」


「これって......あれですかね」


「コーヒーだ。カフェイン満載だな」


 茶色の液体を大量に浴びるキラースパイダーを他人事のように眺めるランボー達は、各々にそんな呑気な会話を楽しんでたりもする。


 きっと徹夜勤務の彼等も高級ブルマンブレンドを嗜みたくなったのだろう。自分等がネバネバ蜘蛛糸に絡み付いて全く動けないことも忘れて。もう残念としか言いようが無い。



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