第3話 ランボー
※ ※ ※ ※ ※ ※
一方その頃、真逆の地下へと駆け降りて行った『ランボー』達はと言うと、
「お前ら何スヤスヤ寝てやがんだ?! 起きろ!」
パン、パン、パンッ!
そんな感じで片っ端から眠り猫と化した警備員衆の頬を動物本能のまま叩き始めたのでした。きっと彼らの目にはスヤスヤ顔が『サボり』にしか映って無かったのだろう。決してそんな訳では無いのだが......
「ムニャムニャ、お母さんもう食べれないよ......」
「ムニャムニャ、君を愛してるよ......」
ところがそんな愛のムチも虚しく、一向に目を覚まさない警備員衆。どうやら美緒が吹き掛けた催眠スプレーは、大間のマグロ並みに絶品だったのだろう。
やがてイライラがピークに達した『ランボー』達はと言うと、
ザブ~ン!
乱暴にもバケツで頭から水をぶっ掛けたのでした。近くに熱湯が無かっただけまだ救いだ。すると、
「ひえ~!!!」
漸く警備員達はネバーランドの世界から舞い戻って来ることが出来たらしい。
「一体何が起きたんだ? そもそも何でお前ら寝てやがるんだ? 分かるように説明しろ!」
顔を真っ赤にしたリーダーが、唾を吐き出しながらそんな大声を張り上げると、
「じ、自分等もよく分からんのですが......確か2人の若い女が壁の中から出てきて、いきなり銃を向けて来たんです。その後地下室から外に出されて、プシューってされたような......
そ、そうだ! 1人はマーメイドを奪った一味です。よく顔を見てたから間違い有りやせん!」
一方、興奮気味に記憶を辿るずぶ濡れ警備員衆。どうやら寒さのお陰で完全に覚醒を成し遂げたらしい。
「な、なんだと? テロリストが侵入して来たってことなのか?! そ、それが事実なら一大事だそ!」
現実を知らされることとなり、一瞬眉毛が飛び上がる『ランボー』集団。しかし衝撃はこれだけに止まらなかった。
ドッカ~ン!
ガタガタガタッ!
「なっ、なんだ? こ、今度は、じ、地震か?!」
突如、遥か上の方で大爆音が立ち上がったかと思えば、次の瞬間には地球が割れる程の大地震が巻き起こったのである。
その衝撃はきっと大地震以上の大地震だったに違い無い。なんせ頭上の17階でブラスチック爆弾がエレベーターの扉を吹き飛ばした衝撃だったのだから。
「やっぱテ、テロリストだ! 上に行くぞ。油断するな!」
「「「「「了解!」」」」」
重装備で身を固めた『ランボー』達の顔は自信満々。きっと装備だけじゃ無くて、実力も折り紙付きだったのだろう。
そんな彼等もよくよく見てみれば人種は様々。顔つきも違えば各々肌の色も皆違う。きっと世界中の『戦場』から集められたエリート傭兵集団がここに形成されてたのでは無かろうか。
『戦場』
因みにそんな言葉を辞書で調べてみると、
戦闘が行われている場所。戦地。
などと書かれてる。
既にお気付きのことと思われるが、その定義には必ずしも戦う相手が『人間』とは書かれて無い。
今彼らはテロリスト(人間)と戦う為に意気揚々と『戦場』へと向かった訳ではあるのだが、今『戦場』で待ち受けている敵が本当に『人間』だけかどうかなどと言うことは、実際に行ってみなければ分からないことだったりもする。
果たして彼らを待ち受けている敵は何なのか? 本当にテロリストだけなのか? もしそれを知っている者が居るとすれば、きっと神と、17階の彼女達だけだったに違い無い。
※ ※ ※ ※ ※ ※
そして物語はどんどん展開して今度は17階フロアー。そこで何が起こってたのかと言うと......
ガッチャ~ン!
ドタバタッ!
カラガラガラッ!
「ちょっと、どうすればいいのよ?! あんた化学者でしょう。何か手は無いの?! このままじゃいつか捕まって食べられちゃうわ!」
キラースパイダーの想像を超えた狂暴さに美緒が癇癪を起こせば、
「今ちょうど考えてるんだから、少し待ちなさいって」
意外や意外。ここは冷静な摩耶だった。電源が落ちた冷蔵庫からお茶を取り出し、優雅に飲んでる。
その一方、暴れ回る巨大キラースパイダーの手から必死に逃れようと、有るもの無いもの全て撒き散らして、防戦一方の戦いを強いられる美緒だった。
因みにこの17階フロアーは社員食堂。
幸いにもキラースパイダーに投げ付ける物だけは無数に存在してた。鍋やらフライパンやら包丁やらお玉やら、はたまた玉子やら野菜やら......
今やそれら全ての道具や食材が彼女らの武器となり得てたりもする。
別にそんな物投げなくても、銃やら手榴弾を使えば早いのに! などと思ったりもする訳なのだが、今の彼女らにはそれをすることが出来なかった。
なぜならば、
「もうなんでリュック落としちゃったのよ。美緒さんらしく無いわね」
「仕方無いでしょう! あの時はこのフロアーに着地するので精一杯だったんだから」
どうやらそう言うことだったらしい。きっと頼みのリュックは今頃、1階の床でぺしゃんこになってることだろう。これはもう残念としか言いようが無い。
「それにしても......あんな速いスピードで動いてる割には少しドン臭いわね」
確かに暴れて尻から糸を出しまくってる割には、全然自分等との距離が縮まって来ない。確かに不思議な現象だ。
「キラースパイダーって言っても所詮は蜘蛛の進化形に過ぎないの。目は8個も有って視野は広いんだけど、視力は良く無いわ。
張り巡らせた糸の振動を感知して獲物を補食するしか取り柄の無い生き物だからね。だからあの糸に触れさえしなければ、居場所を特定されてそう簡単に食べられはしないと思うよ」
どうやらそんなことを熟知してるから摩耶だからこそ、お茶を飲むだけの余裕が有ったのだろう。さすが化学者だけのことは有る。




