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第4話 粉

 因みに、この時2人に残された時間はあとたったの16分。


 タイムアウトとなれば電力が戻り、全てのセキュリティが復旧。そうなれば20階の執行役員、財前徳一の部屋に侵入することなど夢の話になってしまう。


 しかも爆発音を聞き付けて『ランボー』達が血気盛んに階段を駆け上がって来てることは明らか。もはやこんなところで足止めを食らってる場合じゃ無かった。


 因みに、今2人が置かれてる状況を冷静に分析すると、


①残された時間16分


②迫り来る『ランボー』達


③今目の前に立ちはだかるキラースパイダー


①+②+③=THE END!


 間違いなく、そんなフラッグが立ってたのでは無かろうか。


 ところがどっこい!


 この後、摩耶の『左脳』と美緒の『右脳』が見事に融合し、思わぬ化学反応が巻き起ることとなる。


 果て? 


 その化学反応とは一体?!



「あ、有ったわ!」


「有ったって、何が?!」


 見れば摩耶は、大きな樽の蓋を開けて満足そうな表情を浮かべてる。それはまるで宝物を見付けたような表情だった。因みに樽の蓋にはブラジルの国旗が描かれてる。きっとブラジル産なのだろう。


 すると彼女は、両手を荒々しく樽の中に突っ込んで何やら黒っぽい粉末をすくい出し始めたではないか。


「なにそれ?」


美緒は首を傾げてる。


「今説明してる時間は無いわ。後でゆっくり教えてあげる。そんなことより、どうやったらこれを奴に飲ませられるかなんだけど......」


「つまりそれを飲ませると、あたし達に取っていいことが起こるってことなのね?」


「その通り。でも大量に飲ませないと効果が無いの。粉末じゃ、ちょっと厳しいかなって」



 因みに今2人がコソコソと密談してる場所は厨房のカウンターの影。食堂のど真ん中で暴れ捲ってるキラースパイダーからは、完全に死角となり得てる。


 しかし厨房を出たら最後、食堂内はその殆どが蜘蛛糸で張り巡らされてて、それに触れた途端、餌食になること間違い無しだ。


 でももう時間が無かった。結果が吉と出ようが凶と出ようが、2人に残された選択肢はもはや行動以外に無かったのである。



「この粉って......あれでしょ?」


「そうよ」


「やっぱあなた化学者だけのことは有るわね」


「美緒さんこそ。それ知ってる人ってあんま居ないと思うよ」


「分かった。ようはこの粉末を液体にしていっぱい飲ませれば勝ちってことな訳ね」


「効果は未知数だけど、多分いい線いくと思う」


「了解」



 カチカチカチ......


 時計は容赦無く時を刻んでいく。


 美緒は考えた。この粉末を液体にする方法を。


 カチカチカチ......


 美緒はなおも考えた。どこかに必ず突破口を見出だすヒントが有る筈!


 カチカチカチ......


 そして美緒がキラースパイダーの頭上に視線を送ったその時のこと。


 突如彼女の目は大きく見開き、ある1点にロックオンされたのである。



 この時、残り時間は既に15分。


 美緒遂はここで決心せざるを得なかった。次に起こすべき行動を。それは明けても暮れても最初で最後のトライとなる。


「ガッチャマン有る?」


「え? なに?」


「火点けるやつよ」


「チャッカマンね。多分、ここら辺に有りそうな......あ、有ったわ。はい、どうぞ」


 摩耶は美緒にリクエストされたそんな着火器具をカウンターの引き出しからまさぐり出すと素早く手渡した。


「じゃあ今度は、その粉をあたしのツナギの中にたっぷり入れて!」


「えっ、入れるって、まさかこれを?!」


「もう時間が無いから。さぁ早く!」


 見れば美緒は、レザースーツのチャックを首の所から大きく開いてる。どうやら本気でレザースーツの中に樽の中の粉末を入れろって言ってるらしい。しかもたっぷり。


「わ、分かったわ」


「さぁ、じゃんじゃん入れて!」


 もう時間が無い。議論してる余裕など有る訳も無かった。


 摩耶は言われた通り柄杓で粉末を山に盛ると、無言で美緒のレザースーツの中へとそれを大量に落とし込んでいった。


「......」



 因みに美緒さん......


 そのままキラースパイダーの懐に飛び込んで自爆するとかは無いよね? まさか?!


 そんな飛んでもストーリーが頭を過ったものだから、摩耶は本能のまま率直に聞いてみた。


「美緒さん、まさか人間爆弾になるつもり?」


「まさか。そんな根性あたしに有ると思う?」


 普通に考えて有ると思ったけど、そんなこと言ったら本気でやりそうだから、口に出掛けたところで唾と一緒に飲み込む冷静な摩耶だった。


 すると美緒はじっと摩耶の目を見詰ながら、ゆっくりと口を動かし始める。で、何を言い出すのかと思えば、


「ラブホの時のこと覚えてる?」


 そんな奇想天外な言葉だったのである。


「ラブホの時って......確か......スプリンクラーで雨降らせたあの時のこと?」


「そうよ。よく覚えてるじゃ無い。あれをこれからもう1度やるから」



 数日前......


 摩耶がこの帝工本社ビルから『マーメイド』を盗み出してラブホで追い詰められた時、スプリンクラーを放射して難を逃れたことは記憶に新しい。


 それで今、美緒が爛々と輝く瞳の先には、そんなスプリンクラーのヘッドが黒光りしてたのである。


 そしてそれは、キラースパイダーの頭上にも間違い無く存在していた。



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