第21話 大地震
「ソノ悪事の中核が『鉱山跡』に有るって事ナノカイ?」
「他の悪事だけじゃない。あたしは『マーメイド』の情報もそこに眠ってるとふんでるんだわ。『マーメイド』を辿って行けば必ず『ヴェロニカ』にもぶち当たるって寸法や」
「ソウソウ......聞こうと思ってタンダ。『ヴェロニカ』ってナニ? まさか伝説の聖女が『炭鉱跡』に居る訳デモ無いデショ?」
そんな何気ない質問をポールが繰り出したその時だ。突如凛の顔が引き締まり、鋭い眼光を放ち始める。
「君......ポール君って言ったな......君は死ぬ覚悟が有るか?」
いきなり何を言い出すかと思えば......
冗談でも言ってるのかと思いきや、頬は全く緩んでいない。むしろ殺気すら感じる程だった。
するとそれに伝染したかのように、ポールの顔からも俄に笑みが消えていく。
「僕ハ命を懸けてこの仕事に就いテル。でも死ぬつもりはナイ。死んだらコノ仕事出来なくなっちゃうカラネ。コレッテ......質問ノ答えになってるカナ?」
そこまで語り終えると、再びポールの顔に笑みが戻る。その笑みには一切『ハニカミ』とか『ごまかし』などの意は含まれていなかった。
何度も『死地』を潜り抜けて来た自信が乗り移った笑みだったに違いない。
「なるほどね......ならば教えてやろう。心して聞くんだぞポール君。帝工が『悪』の生産者なら、ヴェロニカは、言わば『悪』のバイヤー。帝工が過去に作り上げてきた数々の『違法品』を、奴らは日本中いや世界中にばらまいとる。最強にして最悪の犯罪集団だ。
過去に奴らを追った者で、今生きてる奴は1人も居ない。奴らは正に犯罪のエキスパートだ。それでもあたしは、これから『ヴェロニカ』を追い詰めて行く。なぜならそれがあたしの使命やからさ。
つまりポール君......あたしが聞きたいのは、君もその覚悟が出来てるかって事だわ。生半可な気持ちでやって貰っても足を引っ張るだけだ。もし覚悟が出来て無いんやったら、何も聞かずにこのまま東京へ帰った方がいい。死神に取り憑かれる前にな」
「ダカラ......今言ったばかりダロウ? 僕ハ死なないッテ。例え今大地震が起きて、この地下室がペシャンコになったとしても、僕は絶対に生きてると思うヨ」
「大地震が来ても生きてるか......」
「モチロン!」
ガタッ......
ガタガタ......
「ン?」
ガタガタガタ......
ガタガタガタガタ......
「なんだ?......地震?」
グラグラグラグラッ!
バタバタバタバタッ!
気付けば......
凛自慢の洋酒は、その殆どが落下し砕け散る。ハンフリー・ボガードとマリリン・モンローのモノクロ写真が頭の上からガタガタと落ち掛けてる。
とにかくてんやわんや。有りとあらゆる装飾品やら骨董品が宙を舞っていた。
外で飛んでもない事が起きている!
それは誰がどう考えても、『大地震』の到来以外には考えられなかった。
「押し潰されるゾ! さぁ凛サン、外へ逃げヨウ!」
バタンッ!
「うわぁっ!」
突然なる凛の叫び声に、慌ててポールが振り返ってみると、なんと! 重量感満載のカウンターが横倒しになり、凛が下敷きになっているでは無いか!
「りっ、凛サンッ!」
血相を変えてポールが走り込んで行くと、
「あたしはもう無理や。共倒れになっちまったら誰が帝工とヴェロニカを追い詰めるんだ?! さぁ、早く外へ逃げろ! モタモタすんなって!」
苦痛に顔を歪め、必死に両手で『あっち行け!』ポーズを取っているでは無いか。
ドカンッ! バタンッ! ゴトゴトゴト......
これは果たして本当に『大地震』なのか?!
外では一体何が起きてるんだ?!
その答えを知りたければ、外に出るしか無い。
やがて外で大爆音が立ち上がる度に、ピキピキと天井にヒビが入っていく。いつ天井が落下して来てもおかしく無い状況だ。
時間が無い......でもこう言う時こそ冷静にならなくては!




