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第17話 『BAR』

「あのう......この片手桶とロープと重石ッテ......意味アル?」


「あたしの体重で調節してあるかんな。自分の身体が重過ぎたンちゃうか? さぁ、行くべ」


「チョ、チョット待て! 一体どこに行くんダッ?!」


「来れば分かるで」



 結局、何を聞いても『来れば分かる』『とにかく付いて来い』の一点張り。


 そんなあんたはどんだけ忙しい人なんですか? と聞いてやりたい所だったが、先に進んでしまってるから、聞きようが無い。


「マッタク......」


 呆れながらも、黙って後を追って行く以外に術は無かったのである。


 スタスタスタ......


 正直、また驚いてしまった。


 なんと! 枯れ井戸の底から通路が伸びている。しかも明るいし。


 足元には拳大の石がゴロゴロ転がっているが、等間隔にライトが設置されてるおかげで、転ぶ心配も頭にコブが出来る心配も無さそうだ。


 一体、誰が枯れ井戸の底にこんな通路が有る事を知り得ようか......


 もし、進むこの先に火炎放射器女の『アジト』が有るとしたなら、これ程絶妙な場所は無い。


 そしてそんな『通路』は意外と短かった。一度角を右に曲がって、直ぐその先にそれが有ったのである。


 ガチャン、ガガガガ......


 やっと追い付いたかと思えば、目の前には鉄扉が。既に火炎放射器女がそれを開けている真っ最中だった。


 真っ赤に錆び付いてはいるが、難無く開けている所を見ると、日常から開け閉めをしているのだろう。


「さぁ、入れや」


「......」



 ちなみに......


 井戸の底は地上から凡そ5メートル下。そこから歩いた感覚では全くの平坦だった。つまりこの扉の位置も地中5メートル。


 もし扉の先に『部屋』なるものが有るとすれば、そこは地下室と言う事になる。


 そこで真っ先に頭に浮かんだ景色はと言うと......


 薄汚い洞窟。

 あちこちに虫の死体が散乱。

 ベッド代わりの汚いゴザ。

 やたらとカビ臭い壁。

 散乱したカップラーメンの器。

 投げ捨てられたペットボトル。等々......


 凡そ、そんなところだ。


 大体そもそも、『アジト』が地下室? それって、掘ったってこと?! んなバカな!


 そこからして甚だ疑問な話である。


 とにかく、あ~だこ~だ考えてても始まらない。まずは論より証拠! そんな経緯で、


「えぃっ!」と足を踏み入れてみたのである。その部屋数へ。


 すると......


 パチン。どうやら火炎放射器女が、部屋の照明スイッチを『ON』にしたらしい。


 途端にその部屋の全貌が明らかとなる!



「............」


 一方、ポールは無言......と言うよりか、呆気に取られてただ口をポカンと開けていると言った方が正しかろう。


「ここがあたしの『アジト』だ。と言っても勝手に使ってるだけなんやけどな」


 そんな解説を施すと、火炎放射器女はトレードマークの火炎放射器を床に転がし、至極リラックスオーラを醸し出し始めてる。正に彼女のプライベート空間なのだろう。


「ココハ一体......なんナンダ?!」


「だからあたしの『ア・ジ・ト』だって言ってるやろ。ちゃんと人の話聞いとき!」


「............」



 照明にスイッチが入り、ポールが目にした景色と言えば、予想に反し決して薄汚れた洞窟などでは無かったのである。


 虫が転がってなければ、カップラーメンの器も散乱してない。むしろその全く逆と言っても決して過言では無かった。


 まずログハウスをイメージした木目調の壁。そんな壁には星条旗が打ち付けられ、マリリン・モンローとハンフリー・ボガードのモノクロ写真が額縁に収められてる。


 同じく木目調のカウンターの横には、木彫りのクマとバッファローが大きな口を開け、『何か食わせろ』と言いたげな表情でこちらを見詰めていた。


 そんなカウンターの内側には、バーボン、ウィスキー、ブランデー、ジン、ラム......などなど。あらゆる洋酒が軒を連ねている。


 ここが一体何なのか? その答えは、老若男女、誰が見ても答えは1つしか無いだろう。


「『BAR』......ナノカ?」


「ここが蕎麦屋に見えるか? それ以外にどう表現すりゃいいんだ?」


 やはりそうだったらしい。


 よくよく見てみれば、これまた木目調の立派な階段が地上へと伸びている。しかしそんな階段の行き着く先は、ボードで完全に閉鎖されていた。



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