第9話 崩落
ガクンッ!!!
ヒュルルルル~ン!!!
「「「「うっわぁ~!!!!」」」」
全てのボルトが外された哀愁のゴンドラは、ニュートンの命令に従い、見事自然落下を始めたのでした。
そしてそんなゴンドラは、すぐ真下のゴンドラを弾き飛ばし、更にまた次なるゴンドラを弾き飛ばして行く。
そんな阿鼻叫喚なる世界の中、一番ド肝を抜かれたのは他でも無い。
『マンモス観覧車』の真下で今や今かとエマを待ち受ける無数のハンター達だった。
突然頭上から降って来た物と言えば、雨でも雪でも桜吹雪でも無く、なんと無数のゴンドラだったのである!
「つっ、潰されるぞ!」
1人のハンターが、そんな叫び声を上げた次の瞬間には、
ドサッ! グチャ......
ペシャンコになっていた。
「うわぁ!」
ドサッ! グチャ......
「ヤバい!」
ドサッ! グチャ......
それはそれは、槍の雨にも匹敵する最強なる『潰し攻撃』と言っても過言では無かった。
彼らに取ってそんな災難とは、神から下された天罰なのか?
それとも、刃を向けた相手が『神』に匹敵する強者様だったのか?
その答えはきっと、両方だったに違いない。
一方、そんな強者様の方はと言うと、
「あちゃ......」
ゴンドラのガイドにしがみ付きながら、ちょっと驚いていた。ただゴンドラ1個落とそうと思っただけの出来心だったのである。
でも結果として、下の敵までまとめて成敗出来たの訳から、それはそれで良しとするしか無い。
まぁ、いいっか......
予想外の戦績を上げ、ふぅ......余裕の溜め息をつくエマだった。
ところが、
ガタッ......
「ん?」
ガタガタッ。
「ん? ん?」
ちなみに......
1つのゴンドラが落ちたたげで、激しく無数のゴンドラが落ちまくった理由は他でも無い。ゴンドラを支えるガイドとボルトが尽く金属劣化していたからだ。
そんな金属部品が劣化していたともなれば、当然の如く『マンモス観覧車』を支える4本のぶっとい支柱も劣化していると考えるのが自然。
残念ながら......
そんな4本の支柱も、寝た子を起こしてしまったらしい。見れば4本の支柱に、クモの巣もどきのヒビが入りまくっている。
ガガガガガッ!
なんと! 高さ100メートルにも及ぶ『マンモス観覧車』全体が、倒れ始めたではないか!
いくら強者様のエマと言えども、そんな『マンモス観覧車』の反逆を止める術など思い付く訳も無かったのである。
グラグラグラ......やがて観覧車は地球の引力に引っ張られ、一気に傾きを始める。
エマが必死にしがみ付いてるガイドの位置は、頂上では無くとも、地上から約50メートル。ビル10階以上の高さだ。
「こ、こいつはヤバいっ!」
仮に見事ムササビの如く地上に着地出来たとしても、次の瞬間には『マンモス』が頭の上から落ちて来る事となる。
もはや絶対絶命......そう言わざるを得ない状況だったに違いない。しかし、エマは諦めなかった。
「こんな所で死んで堪るか!」
そんなエマの魂の叫びを他所に、『マンモス』はいよいよ傾きを強めていく!
既に45度。もう半分傾いてる。そしてその傾きスピードは更に加速を強めていった。完全横転まであと10秒も掛かる事は無かろう。
ガタガタガタッ! ミシミシミシッ!
このままじゃ観覧車に押し潰される......どっかに飛び付ける場所は無いのか?! 激しい揺れの中、エマの2つの目はめまぐるしく動いていった。
真下には、ジェットコースターのレールが見える。
間違いなく数秒後には、観覧車の下敷きになってる事だろう。こんな所に飛び付けやしない。
グラグラグラグラッ......!
『マンモス観覧車』は激しく煙を立ち上げながら、いつの間にやら左右まっ2つ。この後どこをどう崩れて行くのかも分からない。
一方、エマの目は更に目まぐるしく動いていった。崩れ落ちるガイドにしがみ付きながら、次に西側を凝視してみた。
何やら1本の太い支柱が天高くそびえ立っている。その名は『フリーフォール』。
そこへ飛び付けさえすれば、あとは手出しのロープでどっかしらに引っ掛ける事も可能であろう。
しかし、それには距離が有り過ぎた。いくら自分の跳躍力を持ってしても、30メートル先へは到達出来ない。
こいつもダメだ!
そして最後に、東へ目を向けてみる。どこもかしこもライトアップで光り輝く中、その辺り一面だけはなぜだか暗黒に包まれていた。
そのエリアが一体何なのか?
それに気付いた時にはもう観覧車が倒壊寸前。逃げ惑うハンター達の顔が、はっきりと識別出来る程までに地と接近していた。
池だ!
何でもっと早く気付かなかったんだ?!
もうここしか身を投げ入れる場所は無い!
間に合うのか?!
グラグラグラグラッ! バキバキバキバキッ!
もう無茶苦茶。こんな大惨事は、史上初にしてきっと最後になる事間違い無しだ。




