第8話 落下
「えっ、マジで?」
「屋根が無いって......ホント?」
「だから屋根無いっす」
4人でポカンと口を開け、下を見下ろしてみれば、斜め下に見えるゴンドラの屋根は確かに無くなっている。
「こりゃ撃っちゃえば楽勝っすね」
「絶対に外さないっすわ」
「だったら撃っちゃいましょう!」
それは、これまでゴンドラが落ちる事ばかりを考えていたネガティブ集団が正に、息を吹き返した瞬間だったと言えよう。
カチャ。カチャ。カチャ。3人の部下達がほぼ同時に銃の安全装置を解除すると、
「まだ撃つな。獲物の姿が見えるまで待て」
実際のところ......
角度は60度。まだ真下と言う訳では無い。屋根が無くなっている事だけは肉眼で確認出来るが、その者の姿が見えてる訳では無かった。
とは言え、その時がやって来るまでに然したる時間を要す事も無かろう。
「よし、俺が合図したら一斉射撃だ!」
「「「了解!」」」
ビュ~......高所と言う事も有り、相も変わらず風は吹きまくり続けている。
少し前までは、下で待ち受けてる後発隊の姿が、米粒程にしか見えなかったが、今や誰が誰だか識別出来る程までにその距離は縮まっていた。
左回りのそのゴンドラは、間も無く時計で言えば9時の位置に到達しようとしてる。ゴンドラが縦一列に並んだ時......きっとその瞬間に一斉射撃のファンファーレが鳴り響くに違いない。
「間も無く姿を現すぞ。準備はいいか?」
「ガッテンです!」
「絶対に外しやせん!」
「あのう......大将」
撃つ気満々の2人の部下に対し、窓の外を見詰めながら何かモジモジ言いたそうな高所恐怖症部下だったのだが......
「煩いっ! 気が散るだろ!」
ここが男の見せどころ。ただでさえゴンドラが揺れるのに、集中力を削がれては堪らない。
「え、あ、はい......でも......」
「大将! そろそろっすよ!」
「よしっ、獲物は影に隠れて怯えてる筈だ。姿が見えたら一斉射撃だからな。者共、抜かるなよ!」
「了解!」
「御意!」
「......」
一気に血圧が急上昇するハンター達だった。
やがて、その時が訪れようとしていた。
ガタガタガタ......上下2台のゴンドラは、不気味な軋み音を立てながら一気にその角度が狭まっていく。
「まだ見えませんね......」
「よっぽど縮み上がって角で隠れてるんだろ。ハッ、ハッ、ハッ......無駄な事を」
そして遂に......
2台のゴンドラは、上下一直線に重なりを見せた!
!!!
「......」
「......」
「......」
???
「ん......ゴンドラの中、空じゃんか?」
「果て......こいつは不思議だわん」
「神隠しにでもあったか?」
なんと! ある筈の姿が、そこには無かったのである。
すると再び高所恐怖症部下が、
「あのう......大将」
またしても、恐る恐る大将に声を掛ける。そしてその2つの目は......なぜだか下では無く、上を見ていた。
「何だよお前は......さっきから!」
「さっき女がこのゴンドラの窓の外から笑顔で手を振ってたんですけど......」
「......それで?」
「そのまま上に上がって行きました」
「あっそ......で......何でその時すぐに......言わなかったの?」
「言おうとしたんですけど、大将が煩いって......」
「な、なるほどね......」
ドクン、ドクン、ドクン......そんな気弱な部下の爆弾発言に、3人の鼓動音が一気に響き渡ったその時の事だ。
「ほら、1本目!」
バンッ! 銃声が轟いたかと思えば、
ヒュルルルル......
「おい、今窓の外で落ちてかなかったか?」
「何か......太いボルトみたいでしたね」
続いて、
「ほれ、2本目!」
バンッ! ヒュルルルル......
更に、
「ほれ、3本目!」
バンッ! ヒュルルルル......
そして遂には、
「よしっ、これで最後!」
バンッ! ヒュルルルル......
ガクンッ。
「ん?」
ガクガク......
「な、なんだ?」
ガクガクガク......
「まっ、まさか?!」
そのまさかだったのである。




