表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/98

第3話 ミラーハウス

 そんなポールが逃げ入った建物と言えば、


『ミラーハウス』


 入口の頭上にそんな文字が。もちろんポールはそんな看板を見てやしない。故に、今慌てて逃げ込んだその場所が何なのか? などと言う事を理解している訳も無かった。


 そんな訳だから......


「なんじゃココハ?......これ、全部『鏡』?」


 前後左右、全ての鏡に映し出された自分の姿を目の当たりにし、思わず首を傾げてしまう。


 ちなみにこの場所はアトラクション。故にまっ暗と言う訳でも無かった。真っ暗だったら、鏡が見えなくてちっとも面白く無い。


 天井のあちこちに点在してるスポットライトが光源だ。微妙な明るさで怪しい雰囲気を醸し出している。


 遥か昔に閉園となってる筈なのに......なんで電球が切れてないんだ?


 えっ? まさか、LED? しかも『ナショ○ル』じゃ無くて『パナソ○ック』だ。


 有り得ん!


 普通に考えれば、甚だ不思議な話である。


 この時ポールは気付いてなかったが、非常ベルのランプもしっかりと赤く点灯していた。


 閉園して早30年......しかしその後も今日に至るまで、しっかり維持管理されてる事を意味している。


 誰が? 何の為に? 考えれば考える程、謎は深まるばかりだ。とは言っても、孤独のポールにそんな矛盾を頭が追及する余裕など有る訳も無かった。



 ちなみに......ここまで幻覚に襲われようとも、窓から飛び降りそうになろうとも、そこには必ずエマが居た。


 しかし今ここに、そんな守護神の姿は無い。生きるも死ぬも、全て本人の力量次第と言う事になる。


 ドクン、ドクン、ドクン......高鳴る鼓動音は、そんなポールの緊張感を象徴しているかのように思えてならない。正にこの男の成長が試される場面と言えよう。



 やがて、ポールの目の前に分岐が現れた。ここから進むべき道は二手に分かれてると言うこと。


 なるほど......


 この建物は、壁が全て鏡で出来た迷路って事か。また厄介な所に入り込んだもんだワン。


 そんな岐路に差し掛かったポールは、ようやくこのアトラクションの趣旨を理解する事となった。



 やがて、バタバタバタッ......


 予想に違わず、荒々しい複数の足音がなだれ込んで来る。足音の数から察するに、5人? 6人? いや、もっとか? いずれにせよ多勢に無勢である事は間違い無い。


 ならば、ここは逃げるが得策!


 そんな見解に辿り着いたポールは、取り敢えず左へと進路を取った。特に根拠は無い。ただの直感だ。


 右に顔を向けてみれば、左へと駆けていく自分の姿が映し出されている。


 そしてそんな右の鏡は、左の鏡に映し出された自分の姿を映し出し、またそれを右の鏡が映し出してる。


 前後左右どこを見渡しても、エンドレスの自分がそこに居た。不気味この上も無い光景だ。


 ポールの頭の中で、『ミラーハウス』が『ホラーハウス』に変化を遂げた瞬間だったのでは無かろうか。



 やがて突き当たりにぶつかると、更に2つの分岐が現れる。本能のまま右へと進んでいく。


 正面の鏡には、歩み進んで来る自分の姿が映し出されてた。


 続いて、斜め右手前の鏡......


 まずは右足が出現し、進むにつれ徐々に自分の右半身が映し出されていく。


 そして背面......


 振り返ってみると、自分の背中と冷や汗をかいた自身の顔が映し出されている。


 更に左手前......


 まだ自分の姿が映し出されていない。なおも進んで行く。しかし、いつになっても自身の姿が映し出されて来ない。


 はて? これは四次元の世界か?


 そしてなおも歩き進んでいく。


 スタスタスタ......


 更に進む。


 スタスタスタ......

 スタスタスタ......


 すると、


「ん? 今、足音が重なったような......」


 そして遂に!


 再び左手前の鏡に視線を送ったその時だ。


「なんと?!」


 ポールは反射的に引き金を引いた。


 バンッ! ガッシャーン!


 鏡が砕け散り、破片が四散する。


 敵かと思いきや、ただの鏡だった。


 もうこうなると、『虚像』と『実像』の区別が全くつかない。


 ポールの脳は、目から送り込まれて来る電気信号を、処理出来なくなっていた。完全にパニック状態だ。


 ............


 ............


 ............



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ