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第2話 タイムスリップ

「マ、マジで見たんデスッテ! もしかしたら親の居ない子供カモ知れないじゃ無いっスカ?! き、きっと幽霊デスヨ! ま、間違い有りまセン!」


 一方、なぜだか一歩も引かないポール。まさか本当に見たとでも言うのだろうか?


 そんな強情たるポールに対し、エマが遂にブチ切れようとしたその時の事だった。


「お前なっ!」


 バチンッ!


「へっ、ナニ?」


「な、なんだ?」


 突然どこからともなく、スイッチが入ったような音が響き渡る! 


 そして次の瞬間には、ピカッ......


 なんと! それまで暗黒とも言えた世界に、突如昼間が訪れたではないか。


「マッ、マブシイッ!」


「ど、どう言う事だ?!」


 それはまるで、30余年前にタイムスリップしたかのような光景だった。


 ゴトゴトゴト......ジェットコースターが助走を始めると、


 ガタッ、ガタガタ......観覧車はゆっくりと動き始め、


 ゴゴゴゴッ......メリーゴーランドが回り始めれば、


『ピンポンパンポーン......夢の国にようこそお越し下さいました。訪れた皆様を夢の世界へとご案内致します。


 開園時間は9時。閉園時間は17時となっております。今日も1日夢のような時間をお過ごし下さいませ。運営・企画、帝国工業からのお知らせでした。


 ピンポンパンポーン......夢の国にようこそお越し下さいました。訪れた皆様を......』


 そんなアナウンスが、各所に設置されたスピーカーから大音量で鳴り響き始めたのである。


 見知らぬ土地に足を踏み入れたばかりの2人に取って、それは正に奇想天外なる展開だったと言えよう。


 じっと見詰める少女談義が、いつの間にかフェードアウトしてしまった事は言うまでも無い。



「エマサン、ここって......何十年も前に閉館してたんデスヨネ?」


「そうらしいけどな」


「じゃあ、コレハ何なんデショウ? しかも運営・企画ガ帝国工業ッテ......」


「確かに名前似てるな」


「化学が入って無いだけデショウ。多分......」


「何だか面白くなって来たじゃんか。ちなみに今あたし達は見えぬ敵から丸見えだ。もしこれで撃って来られたら、逃げようが無いな。ハッ、ハッ、ハッ......」


「もう止めまショウッテ! エマサンがそう言うと、必ずそうなるんダカラ......」


 そんなポールの予言は、見事現実へと誘われていく事になるのでした......



 プシュン、プシュンッ!


「ウワァッ!」


「やっぱ来たか! よし、ポール走れ!」


 タッ、タッ、タッ......!


 タッ、タッ、タッ......!


 エマとポールが頭を抱えて走るその場所は、寄りによってただの広場。


 広場と言うだけあってやたらと広い。存在するものと言えば、見事に腐り果てた木製ベンチが数個並んでいる程度。


 とてもでは無いが、盾の代役となるような物体は存在しなかった。狙い撃ちされてる事間違い無しだ。



 プシュン!


「オット!」


 1発目の銃弾がポールの頭をかすめれば、


 プシュン!


「チッ!」


 2発目がエマの黒い影を撃ち抜く。


 プシュン!


「ヒョエ~!」


 3発目がポールの万能リュックを貫通すれば、


 プシュン!


「危ないなぁ......」


 4発目はエマの伊達メガネを吹き飛ばしていた。


 銃弾の出所は明らかに4箇所。それ即ち4人のスナイパーが、2人を狙い撃ちしてる事になる。


 もはやこの状況は、縁日の射的であり、エマとポールは射的の『的』以外の何物でも無い。危機的状況と言わざるを得なかった。


『盾』と成り得る物陰までの距離は凡そ30m。たかが30mとは言え、走れば走る程に見えぬスナイパーからの距離が縮まる事となる。


 余程の『ヘボ』スナイパーで無い限り、撃ち損じる事など有り得ぬ話だ。



 不味いな......このまま固まって走ってたら、確実に撃ち抜かれる! 


 そんな未来図が目に浮かんだエマは、即座に今取るべき道筋を導き出した。


「ポール、蛇行しながら右へ進め! あたしは左へ抜ける!」


「ラジャー!」


 プシュン、プシュン、プシュン! 銃弾の嵐は容赦無く、2人の頭を掠めていく。



 そんなこんなで......


 エマの勅命を受けたポールは、見事な蛇行走りを見せながら、『盾』と成り得る箱形の建物へと一目散に足を踏み入れて行ったのである。



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