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第1話 幽霊

 1月28日(木)21時。


 それまで降り続けていた小雪も、いつしか鳴りを潜め、少しは歩調も軽やかになったかと思いきや......


「ウワァ......今度は霧が出てキマシタ!」


 そんな慌てるポールに対し、エマの方はと言うと、


「雪よりはマシだろ」


 やたらと落ち着き払ってた。



『竜奴瑠病院』を命からがら突破したばかりの2人ではあったが、それを良しとせぬ者達が次なる罠を仕掛けて来る事は明らかだった。故に、慎重に成らざるを得なかった。


「ガイガーカウンターの数値はどうだ?」


「エエト......少し上がってマスネ」


「そうか......」


 エマは脳内コンピューターをフル活動させてる。いつの間にか『考える人』ポーズを取り始めてた。



「『マーメイド』は完全にシールドされた箱に封印されてるハズデス。ニモ関わらず数値が上がっテるって事ハ......」


「この先のどこかで『マーメイド』が箱から出されたって事になるわな」


「ツマリ......今僕達が進んでいる道ハ、間違って無いッテ事にナリマスネ」


「さぁ、どうだか......この山奥に今も『マーメイド』が存在してるかどうか何て事は分からん。でも行き着く所まで辿り着けば、必ず次なる道標がそこに残されてる筈だ。今はただやれる事をやるのみ。道を信じて進めば、必ずその先に新たな道が開けるだろう」


「確カニ......」


 2人が霧を掻き分けるかのように歩き進んで行くと、目の前に大きく『夢の国』と描かれた巨大なゲートが浮かび上がって来た。


 霧の中から突然現れたそれは、ほぼ全面がツタで覆われてる。『荒れ放題』......正にそんな言葉が一番しっくりとくる光景だ。


 やがてそんなゲートの脇に平屋作りの小さなあばら家が見えてきた。


 正面に小窓が3つ並列している。きっとこのあばら家が当時入場券売場だったのだろう。


 ちなみに小窓と言っても、ガラスは割れ果て、ただの『穴』でしか無い。こちらもゲート同様、ツタの温床と化し、今や廃墟感満載のオブジェと成り果てていた。


 暗闇、廃墟、おまけに濃霧ともなれば、どこもかしこも不気味この上も無い。


 まるでホラー映画のセットの中に迷い込んでしまったかのような錯覚に囚われる2人の師弟コンビだった。



 すると、ガサッ、ゴトゴト......何やらそんな廃墟オブジェの中から物音が。


「ん、ナンダ?」


 エマのすぐ後ろを歩くポールが怪訝な表情を浮かべると、


「「「ニャーッ!」」」


 なんと! 3つの小窓から3匹の野良猫が同時に飛び出して来たではないか!


「フギャーッ!」


 途端にポールはガイガーカウンターを投げ飛ばし、見事なまでの尻餅をついてる。ナイスリアクションと言わざるを得ない。きっとただの野良猫もポールの目には化け猫に映ってたんだろう。



「全く......」


「ス、スマンデス......」


「遊んでる暇は無いぞ。霧がどんどん深くなって来てるじゃんか。とっとと前に進むべし!」


「ヘイ!」


 2人が気合いを入れ直し、再び足を動かし始めた正にその時のこと。


「アワワワワ......」


 突如、ボールが感電したかのようにブルブルと震え出し、目蓋から目が飛び出しそうになっている。


「おい、どうした? 髪の長い少女の幽霊でも見たのか? ハッ、ハッ、ハッ」


「なっ、何で分かるんデスカ?? 今小屋の窓カラ、髪の長い小さな女の子ガじっとこっちを見てマシタ。凄い恨めしそうな顔シテ......アア、ナンマイダブ、ナンマイダブ......」


 見ればポールは、冷や汗を滴しながら必死に手を合わせている。すっかりこのオカルトムードに呑み込まれてる。


 全く、困ったもんだ......


 そんなポールの様子に対し、また怒り狂うか?


 などと思いきや、


「いいかポール......こんな夜更けに小さな子供が廃墟の遊園地に居ると思うか? お前が親だったら『今から廃墟の遊園地に行って来る』って子供に言われて、『行ってらっしゃい』って元気に送り出すか? よく考えてみろよ」


 意外と優しかった。まるで子供を諭すような話し方だ。



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