第2話 未知との遭遇
見渡してみれば、至る所に防犯カメラが点在している。一部の設備の影を除いては、まるで死角無し! そんな徹底振りだ。
しかしそんなカメラの配置を逆説的に表現してしまうと、『一部の設備の影には死角が有る』と言う事になってしまうのだが......
やがて、
ガッ、ガガッ!
またしても不穏な音が立ち上がった。今度はかなりのボリュームだ。
「ん、今のは何の音?」
『腰抜かし警備員』が耳をそば立てて周囲の様子を伺い始めると、
「またネズミだろ」
もう1人の警備員は意にも介さない様子。余裕綽々だ。そんな余裕が時には命取りになる事も有ったりするのだが......
そして再び、
ゴゴッ、ゴゴゴゴッ!
今度は音と言うよりかは、むしろ地響きだった。
「何か......ネズミっぽく無いような気もするんだけど......」
「そんな物音くらいで騒いでるとまた部長にどやされるぞ。俺達は選び抜かれた精鋭だ。つまらん物音くらいでビクビクしてたらネズミに笑われるわ。ハッ、ハッ、ハッ!」
『余裕綽々警備員』が、余裕綽々の笑い声を立ち上げた正にその時の事だった。
ガガガガガガガガッ!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
不気味な物音は一気に大爆音へと変化を成し遂げ、気付けば何やら煙が立ち始めているではないか!
しかもその場所は正に......防犯カメラの『死角』そのものだったのである。
「なっ、なっ、なっ、なんだ?!」
「こっ、こいつはネズミなんかじゃ無いぞ!」
慌ててそんな『死角』へと駆け出して行く2人の警備員。そこが『死角』であるが故に、『防災管理室』のモニターから2人の姿が忽然と消えた事は言うまでも無い。
『ガッ、ガガガガッ......おい、お前らどこ行ったんだ?!』
再び無線機が怒号を上げる。
「ど、どうしよう......部長に報告した方がいいんじゃないか? また怒鳴ってるし」
「い、いや、もうちょっと様子を見よう。これで何でも無かったら、またどやされるからな」
「そっ、そうか......」
そして遂には、ハルマゲドン!
バリバリバリッ!
な、な、な、なんと! 屈強なコンクリート壁が崩れ落ち始めたではないか!
「きょ、超巨大ネズミか?!」
「んな訳無いだろ! こりゃもう部長に報告だ。援軍を呼べ!」
そんなこんなで、遅れ馳せながら『腰抜かし』警備員が無線機の通話ボタンを押そうとしたその時のこと。
バリバリバリッ! コンクリート壁は一気に崩れ落ち、気付けばそこには人1人が通れる程度の穴が出現していたのである。
そんな穴からは、目が眩む程の光が発せられてる。
まっ、眩しいっ!!
「未知との遭遇?!」
「そりゃ映画の見過ぎだろ!」
きっとUFOにでも遭遇すれば、こんな景色を見れるのかも知れない。とにかくやたらと眩しかった。
そんな放心状態の2人の前に、満を持して『宇宙人?』は現れたのである。
ザッ、ザッ、ザッ......
突然出現したその者は、
巨大ネズミでもなく......
巨大モグラでもなく......
はたまた、宇宙人でもなく......
「よう、ご苦労様さん!」
なんと、日本語を話す日本人だった。
「やぁ、どうも」
訳も分からず、こ返礼の儀を開始する警備員衆。
すると、プシュ~......
気付けば、顔に何かの気体を吹き掛けられて、
グゴ~......
グゴ~......
気持ちよさそうな顔して、あっと言う間にネバーランドへと旅立っていたのである。
この後に巻き起こるであろう修羅場を考えると、この時点で眠らせて貰えた彼らは、むしろ幸せだったのかも知れない。
やがて、穴から這い出て来た者の数は3人。その者達が日本人であるが故に、当たり前の如く再び日本語を話し始めた。
「美緒さん、摩耶、警備員の服を剥ぎ取って上に着るんだ。時間は無いぞ!」
筋骨隆々、ハツリ機片手にニヤリと笑顔を浮かべた日本男児が2人にそんな行動を即した。投光器の灯りが未だに眩しくて堪らない。すると、
「ここまでは計画通りね」
「このビルのセキュリティは万全。油断は命取りになるわ。ここからが勝負よ」
「「了解!」」
一致団結を見せる圭一、美緒、摩耶の3人だった。
その時だ。
『ガッ、ガガガガッ......お前らどこ行ったんだ? 早く答えろ! ガガガガッ......』
今、腰のベルトにくくり付けたばかりの無線機が、更に騒がしくなって来た。




