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第7話 禁断の扉

 ドクン、ドクン、ドクン......

 ドクン、ドクン、ドクン......


 2人の心臓の鼓動音だけが、淀んだ空間に鳴り響く。


 この時既に、エマは明らかなる人為的な『殺気』を、この部屋の中に感じ取っていた。


 銃を構えた兵士達に囲まれた時......


 真っ赤な目をしたウェポンに遭遇した時......


 凡そ、そんな時に感じたそれと何ら変わりは無かった。ところがここに1つ、エマの頭の中ではどうしても腑に落ちない非和声音が鳴り響いていた事も事実だった。


 それはさっき逃げ降りて来た3人の『幽霊マニア』達の反応が、いかにも『この部屋で幽霊を見ました』と言わんばかりの反応だった事だ。


 この異なる2つの『点』が、どうしても1本の『線』に繋がらない。多分そんな非和声音も、この部屋に足を踏み入れてさえしまえば、きっと耳障りな音じゃ無くなるんだろう。


 やがて、


「よし、扉を開けるぞ」


 エマは全神経を右手に集中させ、横引き扉の取っ手に手を掛けた。


「心得マシタ」


 ポールの顔にも迷いは無い。漸くこの男も覚悟を決めたようだ。


 そして遂に、


 ガラガラガラ......


 程なく、禁断の扉は開かれたのである。


 すると、


 シ~ン......


 ............


 ............


 ............


 なぜだか、予測に反し、その空間には『水を打ったような静けさ』が存在していた。


 扉を開いた途端、必ず何かが巻き起こる!


 そんな2人の予感が、見事裏切られた瞬間だったと言えよう。



 静寂の中、ポールが恐る恐る中を覗き込んでみると、


 壊れ果てたベッド


 散乱した医療機器


 崩れ落ちた天井


 凡そ、そんなものばかり。ここへ至るまでに散々見て来た『廃墟』と何ら変わりは無かった。更に『動』を伴うようなものは、何一つ見受けられない。


「エマサン......何も居ないみたいデスヨ」


 実際、それ以外に言い様が無い。


「全く人の気配がしない。もちろん幽霊なんかも居やしない。じゃあ何なんだ......さっきから感じてるこの『殺気』は? あたしの思い過ごしとでも言うのか?」


「イヤ......エマサンの嗅覚に狂いは無いと思いマスヨ」


「電磁波計の数値はどうだ?」


「電磁波計? ええ~と......ハイ、限りなく『0』に近いデス」


「そうか......」


「......」


 なぜかここでエマは黙り込んでしまう。目を瞑って無我の境地に入り込んでしまったようだ。きっと頭の中がフル回転してるんだろう。



 かたやポールの方はと言うと......


 エマさんは一体、何を悩んでるんだ? 電磁波計の数値をやたら気にしてるみたいだけど......それって何の意味が有るの?


 こっちはこっちで、また考え込んでしまう。


 しかしこの時点ではまだ禁断の扉を開けただけ。決して『入室』した訳では無い。そんなると、次なる行動は『水の流れの如し』と言う事になる。


 そしてそんな『水』は、いよいよ自然に流れを作っていったのである。



「よし、入るぞ」


「了解デス!」


 そんなこんなで、


 ザッ、ザッ、ザッ......


 遂に足を踏み入れてしまった訳だ。封印されたその部屋の中へ。


 すると、それまで静かに流れていた水が、予告無しに濁流へと変化を遂げる!



 ピピピピッ!


 なんと、その瞬間を待ち構えていたかのように、電磁波計が耳障りな電子音を発し始めたではないか!


「な、なんだ?!」


「デッ、電磁波計の針がはち切れてマス!」


 その時、エマが感じ取っていた『殺気』が、一気にMAXへと達していた事は言うまでも無い。


「しまった! 一時退散!」


「リョ、了解!」



 因みに......


 なぜ2人が足を踏み入れた途端、電磁波計の数値が上がったのか? そしてそれを知ったエマがなぜ部屋から退却しようとしたのか?


 その答えを知るまでに、然したる時間を要す事は無かった。


 2人が体を翻し、慌ててその部屋から退散を試みた正にその時のこと。


 プシュン!


 プシュン!


 何やら、物陰から立て続けに2回、怪しき音が立ち上がった!


 そしてその『音』は、瞬く間に2人の元へと近付いて来る。


「ふっ!」


 反射的に体を翻すエマ。


 それに対し、


 プチッ!


「ん? ナンダ?」


 首に手を当てるポール。


 だった。



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