第5話 ビーチフラッガー
ガタガタ......
「ハァッ!」
ゴトンッ......
「ヒィッ!」
ゴロゴロッ......
「フゥッ!」
バキッ......
「ヘェッ!」
バシッ!
「ホドホドにしろよ!」
ポールの頭を思いっ切り叩くエマ。情報分析してる時に、横でやかましくされたら集中出来ない。
「ス、スマンです......」
「計測器類の数値はどうだ?」
「計測機器?......ハイ、ちょっと待ってクダサイネ。ええと......まずは電磁波計。どれどれ......僅かな値を示してイマスガ、これは我々のスマホと懐中電灯が出してる電磁波の影響デショウ。
あとガイガーカウンター......おや? 少し高めですね、0.5マイクロシーベルト。平常時の約10倍デス。でもまぁ、今日1日位浴び続けテモ、人体に影響が出ないレベルではありマスガ......」
「0.5マイクロシーベルトか......確かに高めだな。よし、計測器の数値はこの後も気にしててくれ。あんまり高くなるようだったら、上から防護服着なきゃならん。それじゃあ......先に進むぞ」
「了解......デス」
ポールが浮かない顔して、再び1歩を踏み出したその時のこと。遂に、事態は急展開を見せたのである!
「うわぁー!」
「出たあー!」
「逃げろー!」
バタバタバタッ!
突如、階段を駆け降りて来る複数の慌てた足音が! その鬼気迫る叫び声を聞いただけで、その者達の狼狽ぶりが目に浮かんでくるようだ。
「アヤヤヤヤッ! なっ、何事?!」
「足音が聞こえてるんだから、幽霊じゃ無いだろ。叫び声からして男が2人、女が1人。外の足跡と一致してる。どうせ興味本意でやって来た物好きか動画投稿マニアだ。驚くに足らん」
どこまでも冷静を貫き通す、頼もしきリーダーがそこに居た。
やがて予想に違わず、その者達が2人の視界に飛び込んで来る。
①地下アイドル的風貌の少女が1人。
(ツインテールのお目目パッチリ顔・今時の女子高生風)
②オタッキー風ボサボサ髪のちょいデブ男が1人。
(ハンディカメラ片方・腹の贅肉にウェストポーチ 食い込み)
③ちょっとインテリ七三分け針金男が1人。
(大きな照明器具を背負い・AD的風貌)
①+②+③=動画投稿マニア集団......そんな計算式が容易に成り立つ3人組だった。
3人揃って髪の毛は逆毛立ち、6つの目は全て血走っている。幽霊に襲われたとでも言うのだろうか?
そんな『ビーチフラッカー』達は、2人の姿を確認すると、素早くスクリームを開始した。
「うわぁ、こっちにも居るぞ!」
「い、いや待て。あっ、足が有るから人間だ!」
「待って、でも身体透けてる?!」
別にエマとポールの身体は透けて無い。きっと焦り過ぎて目が霞んでるのだろう。
「チョット君達、ドウシタンダ?!」
猛牛の如く突進してくるそんな3人組の威に圧倒され、思わず後退りしながらポールがそんな叫び声を上げると、
「うっ、煩い! どけっ!」
ドンッ!
「ウワァー!」
ポールを突き飛ばし、我先にと『竜奴瑠病院』から逃げ出して行った。
こんな霊気漂う廃墟病院へわざわざフル装備でやって来た3人衆......
少しは『筋金入り?』なのかと思いきや、実際はそうでも無かったらしい。見ていて哀れになる程の狼狽振りだ。
一方、3台の暴走機関車に引き殺されたポールはと言うと、激しく腰を地に打ち付け、悲痛の表情を浮かべてる。
そんな無様なポールの様子を外野から眺めていたエマは、優しくポールに手を差しのべながら優しく無い事を言い始めた。
「おっと! いよいよ面白くなって来たな。よしっ、お前が先に進め」
「ちょっとエマサン、もう止めましょうッテ!」
「ここまで来て手ぶらで帰れるか。タクシー代3,600円が勿体無いだろ」
「そのくらい僕がポケットマネーで払いマス!」
スタスタスタ......
「ちょっとエマサン、行ったらダメデスッテ!」
「お前はタクシー呼んで帰ってろ。最近じゃ、無理矢理連れてったりすると、パワハラで訴えられるからな」
気付けば既に、エマは霊気漂う階段を上り始めてる。何が何でも行かずにはいられないらしい。
がらくたを蹴り飛ばし、クモの巣を打ち払い、そしてあっと言う間に3階へと到達してしまった。その行動に、一切『躊躇』と言う名のブレーキは掛けられていなかった。




