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第4話 ホラー

「幽霊に連れてかれたりシテ?」


「だったら連れてかれる前に、幽霊に話を聞くだけの事だ」


「トホホ......」


 見たところ、確かにそれが病院である事は間違いないが、3階建てのその建物は明らかに教会のテイストが加わっている。


 十字架こそは見えないが、明らかなる洋風建築で中から神父やら修道女が出て来ても、決して違和感は感じないだろう。


 廃墟・病院(教会)・幽霊......この3つのキーワードが重なれば、ゾクゾクゾク......全身に冷気が走るのは当たり前。


 どうやらポールもその例外では無かったらしい。上司の3歩後ろを隠れるようにして歩く控えめな忠実部下がそこに居た。


 ザッ、ザッ、ザッ......


 3歩下がって、


   ザッ、ザッ、ザッ......


 先頭を歩くエマが懐中電灯を病院に当ててみると、看板同様、建物もやたらと風化が進んでいる事に気付かされる。


 所々コンクリートは崩れ落ち、どす黒く変色した壁の色は、まるで破損箇所から流れ出た血のように見えたりもする。


 窓ガラスはその殆どが割れ落ち、外からでも建物内の荒れ果てた様子を伺い知る事が出来た。とにかく何処もかしこも薄気味悪い......その一言に尽きる。



「エマサン......ホントに入ってくんデスガ?」


 イヤイヤモード全開。By ポール。


「当たり前じゃん。恐いなら外で待っててもいいぞ」


 まるで意に介せず......By エマ。


「チョット聞いてみただけデス。トホホ......えっ? な、なに? な、なんだ?!」


 すると突如、ポールが戦慄の表情を浮かべる。その時ポールの2つの目は、3階の一画に向けられていた。


「なんだ? 幽霊でも見えたか?」


「い、今......3階の廊下デ......黒い影ガ......す~ット通り......マシタ」


 見ればポールは腰を抜かしている。多分、本当に見えたんだろう。その驚き方は到底演技とは思えなかった。


「ならきっと、それは幽霊だな。人間ならそんなにす~っと移動しないから」


「デモ......身体はスケテ無かったみたいデス」


「ならそりゃ人間だろ。人間の身体は透けないからな」


「デモ......見えたノハ一瞬デ、あっと言う間に見えなくなりマシタ」


「じゃあ、それ幽霊だろ。引田天功じゃあるまいし!」


「デモ......足音が聞こえたヨウナ......」


「だったら、人間だろ! 幽霊に足があったら、子供に幽霊ってなに? って聞かれた時、親が返答に困るわ」


「デモ......」


「だったら......」


「デモ......」


「だったら......」



 そんなこんなで......


 時刻は既に20時を回っていた。


 どんなに恐かろうとも、この病院の中がどんなに危険だろうとも、残念ながら今の2人に『引き返す』と言う選択肢は無かったのである。


 そんな調子でいざ『竜奴瑠病院』の前に立ってみると、今更ながら恐怖に足がすくんでしまう。


 元々ここが病院だったと言う既成事実も然ることながら、教会をイメージしたその造りが廃墟と化してしまうと、『エクソシスト』や『オーメン』しか頭に浮かんで来ない。


 そうは言っても、


「よし、入るぞ」


「ガッテンです」


 別世界へ通じる扉を開けるしか無い2人だったのである。


 キー......


 そして、


 中は真っ暗かと思いきや......意外や意外、そうでも無かった。


 殆どの窓ガラスが割れて無くなっているせいも有るのだろうが、病院内の荒廃した景色が、朧気に浮かび上がって見える。


 赤色スプレーで悪戯書きされた壁......血痕に見えなくも無い。


 カビで表面が真っ黒に変色したソファー......見方に寄よっては、人の顔にも見える。


 天井から無造作にぶら下がった電線......まさかこれで首でも吊った? などと思わず妄想したりもする。


 更に......


 腐り切った木製テーブル、崩れ掛けた受付カウンター、落下して粉々になった天井照明、などなど......視界に飛び込んで来る全ての要因が、脳の中ではオカルトに変換されてしまう始末。


 そんな怪しき雰囲気にすっかり呑み込まれたポールはと言うと、1歩前に足を踏み出す度、ガラクタを蹴飛ばしてスクリームをやらかす訳だ。



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