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第29話 被曝

「それで......その死因は?」


 ジュー......圭一はフライパンでハムエッグを作り始めてる。


 そんな問い掛けをしながらも、目は真剣にフライパンを見詰めていた。武骨者に料理......これはこれで中々絵になっている。



「驚くなかれ、死因は『被爆』だ」


「つまり......天空から降って来た隕石、即ち『マーメイド』は、致死量の放射能を発してる物体って事なんだな?」


 エマは香しいフライパンには目もくれず、じっと山上局長の目を見詰めながら問い詰めた。


「その通りだ。『マーメイド』から発せられる放射能は約10シーベルト。致死量が約6~7シーベルトだから、その数値を遥かに上回ってるって事になるわな。


 翌日、山梨県警の方で『マーメイド』の回収作業が行われたが、全ての人間が完全防備で事に当たったそうだ。まぁ、県警もバカじゃ無いって事だ。


 そんな訳だから、『マーメイド』は常に完全シールドされたケースに収められてる。ただでさえ重い物体にケースまで重いときてる。まぁ、女のあんたがよく持ち出したもんだ」


「って事は......『マーメイド』を欲する者達は何を仕出かそうとしてるんだ? 『マーメイド』が放射能を発する物体だって事はよく分かった。ならば核兵器でも造る気なのか?」


 まずはそんな見解を示すエマ。話の流れからすれば、きっと誰もがそんな事を考えるのでは無かろうか。


「仮に『マーメイド』が放射能を発するとしても、それだけで公安が動いたり、マフィアが動いたりするかしら? 多分もっと他に絶対的な利用価値が有るんじゃないの?」


 それは精密機械とも言える美緒の脳が弾き出した見解なのだろう。


 そのように語った美緒の手は、トレードマークとも言える黒淵メガネに触れている。それは彼女の脳内コンピューターがフル活動している事の証だ。



「中々鋭いじゃないか? 正にあんたの言う通りだ。でもここから先の説明は、俺なんかがするより......」


 山上局長はそこまで言い掛けた所で、視線を美緒の横に座るその者に移動させる。それはここまで頑なに沈黙を保っていた美竹摩耶だった。


 すると摩耶はポツリと呟く。


「質量保存の法則」


「「質量保存の法則?」」


 圭一とポールの2人は、そんな摩耶の呟きに思わず首を傾げてしまう。一体、何のこっちゃ? リアクションがそんな風に語っている。


「化学反応の前と後で物質の総質量は変化しない......そんな化学法則が『マーメイド』の利用価値と一体何の関係が有るの?」


 2人よりは1歩進んだ美緒の質問ではあるが、やはりそう問い掛けた美緒の表情も他と変わらず???顔。やはりその先までは見えていないらしい。


 摩耶以外の10個の目が、一斉にその者へと向けられた。この後、一体どんな言葉が発せられるのか? 皆固唾を飲んで見守っている。



 一方、摩耶の方はと言うと、話すべきか、それとも話さないべきか?......


 最初は迷いの表情を浮かべていたが、いずれは知り渡る事であるが故、腹を括ったかのようにやがてゆっくりと口を動かし始めた。


「密閉した空間で、A物質10グラムとB物質10グラムを化学反応させた時、新たに出来上がったC物質は必ず20グラムになります。


 それ即ち『質量保存の法則』が示す通りの現象であり『化学反応の前と後で物質の総質量は変化しない』からです。


 まずはこの後の話を聞く前に、地球上の物質においてはそんな常識が存在すると言う事を理解しておいて下さい。そこが分かって無いと、この後の話も分からないと思うんで。


 知っての通り『マーメイド』は致死量を超える放射能を半永久的に発し続ける実に危険な物体です。私達は常に防護服を纏って、日夜研究に明け暮れてました。


 研究の目的は、あくまでもこの地球外物質の医学利用。私は幼き頃に実の母を亡くしています。そんな悲しい思いを未来の子供達にさせたくない......


 きれい事のように聞こえるかも知れませんが、私を含め『マーメイド』の研究に携わった全ての研究者達が、そんな気持ちを抱いて研究に明け暮れてました。



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