第24話 命の階段
ガガガガガ......大きな音を立ち上げながら、どんどん近付いてくる消防車両の梯子。
それは追い詰められた2人に取っては正に『命の階段』。それ以外に例える言葉は見付からなかった。
そして、そして、更には、
「怪我は無いですか?! さぁ、こっちへ! その荷物も!」
素早く手を差し伸べてくれた消防隊員は、やたらとイケメンだったのである。
「ああ、恐かった......」
そんなイケメン隊員にしおらしく抱き付く2人の美魔女は天使なのか? それとも悪魔なのか?
もしかしたら......天使も悪魔も紙一重って事なのかも知れない。
この時摩耶は、安堵の気持ちと共に美緒に対してある種恐怖とも言える感情を抱いていた。それは言うまでも無く、美緒の精密機械とも言える知能に対しての事だ。
このフロアーは5階、故に窓から飛び降りる事は不可。
更に警察官達は、階段とエレベーターと二手に別れてこの5階へ上がって来ていたに違いない。だから階段もエレベーターも使えなかった。
屋上へ逃げたところで、まさかヘリコプターが助けに来てくれる訳でも無い。
つまりさっきの状況は正に『八方塞がり』。素直にお縄頂戴以外に道は無かった筈だ。
にも関わらず美緒は、立ちはだかる厚い壁に『知能』と言う名の武器を使って風穴を開けたのである。
この人には勝てない......
それは正に摩耶が白旗を上げた瞬間だったと言えよう。
やがて......
怪我一つ負う事無く、無事地上へと舞い降りた2人は、大事な『マーメイド』をイケメン隊員から受け取ると、救急車へと導かれていった。
そしてどさくさに紛れて救急車を奪い取ると、ブルルンッ......速やかに闇へと消えて行くのでした。
めでたし、めでたし!
ところが......
そんな2人の行動を、一部始終物陰から見届けていた者が居た。もちろん摩耶はおろか、美緒すらそれに気付いてはいない。
そしてその者は、なんと、大きなショルダーバッグを肩に掛けていた。
「あまあまちゃんだな......フッ、フッ、フッ」
イケメンを歪ませて不適な笑みを浮かべていたのである。まさか?!
一方......
そんな事とはつゆ知らず、余裕の笑みをうかべる摩耶と美緒はと言うと、
「あら美緒さん、『500万ボルトバリバリ美緒スペシャル3号』置いて来ちゃったみたいね」
「そう言えば......すっかり忘れてたわ。でもまぁ、いいんじゃない? またポールさんに新しいの作って貰うから」
そう言う問題じゃ無い! などと思いつつも、今更取りに戻る事など出来やしない。
未だ踊って跳び跳ねてるだろう黒服集団の事を考えると、少し不憫に思えたりもしたが、面倒なので忘れる事にした。
そんな中、摩耶はとある些細な事に気付いたのである。
あら? お堀に潜って濡れてた筈のショルダーバッグが、いつの間に乾いてる......確かホテルに居た時は、まだジメジメだったような気がするんだけど。
一旦はそんな重大事態に気付いた摩耶ではあったが、ショルダーバッグの色もロゴも同じだし、そもそも重さが全く一緒だった。
身も心も疲れ果てた摩耶に、この時点でそれ以上追及する思考は残っていなかったのである。残念な事では有るのだが......
やがて快調に進む救急車の中で、グゴー、グゴー......夢の世界へと旅立っていく摩耶。
夢の世界でもサバイバルを繰り広げているのか、それとも愛した人とデートでもしているのか? それは本人で無ければ分からない。
「圭一さ~ん、もう食べれないって。ムニャムニャムニャ......」
そんな良からぬ寝言を吐く摩耶の顔を横目で見る美緒の表情はと言うと......
............
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恐ろしい程に無表情だった。でも心の中では何を思っているのか?......それこそ、美緒で無ければ分からない事だ。
これ以上踏み込んでも、ろくな事にはならないので、この件についてはここで筆を止めておく事にしよう。くわばら、くわばら......




