第6話 疑惑の目
「今あたし達、どこに居ると思う?」
「どこって......全然分かんないけど。どこか東京のホテルとか? 最上階のスイートルームだったりして?」
「あら、あなた勘がいいじゃない。多分最上階は合ってると思うわよ。ちょっとそこの窓から外見てみたら? 景色いいから」
※ ※ ※ ※ ※ ※
景色がいい?
ってことは、富士山でも見えるのかしら?
ならばここは東京じゃ無いってこと?
まぁ論より証拠。この目で見るのが一番早いってことね。
そんな経緯であたしはベッドを降りてツカツカと歩き始めた。寝過ぎたのかちょっとフラフラしたけど、頭はもう完全に覚醒してるみたい。目も霞んで無いし。
どうやら後ろから美緒さんも付いて来てるっぽい。何と無くだけど、ニタニタ笑ってるような気がしてならなかった。なんか凄い嫌な予感がするんだけど......
そして遂にあたしは、腰高窓のレースのカーテンを開けたのでした。えいっ! って感じで。
すると、
「な、なに?! ここってまさか......」
「どう? 驚いたでしょ」
「もしかして......これって湖だよね?」
「そうよ。完全に凍結してるけど」
気付けばあたしの口は無意識のうちに、
「アラル海......」
そんな言葉を吐き出してた。
「あら? あなたよく知ってるじゃない。そうここはアラル海。つまり今あたし達は、カザフスタンかウズベキスタンに来ちゃってるってことになるわね」
「ここはアラル海の西側だからウズベキスタン。多分だけど......ヴォズロジデニア島だと思う」
「あらそう......」
あたしがそんな余計なことを言ってしまった途端、美緒さんの目が急に鋭くなってしまった。
「あなた......もしかして、何か隠して無い?」
多分あたしが余りにも詳しく知っちゃってたから、不審に思ったんだろう。
「別に何も。なんで? 大学で世界地理もかじってたからたまたま知ってただけよ」
すると美緒さんの目は、前にも増して鋭くなってしまった。一体美緒さんの頭の中で何が起こってるんだろう?
「そのことじゃ無いわ。今あたし達が居るこの場所のことよ」
そんなことを言われたもんだから、あたしは窓から顔を出して周囲を見渡してみた。
すると横に見えたのは、正に中世ヨーロッパの古城。ディズニーランドのシンデレラ城を思い浮かべて貰えばほぼそれと相違無いと思う。きっと今居るこの場所は、その城の一部に違い無い。
次に下を見てみた。
足が竦む程の高さだ。モヤなのか雲なのかは分からないけど、霞んでて地上は全然見えなかった。多分地上からの高さ50メートルは有ると思う。
それで最後に上を見てみた。
直ぐ上に小さな丸い屋根だけが見える。つまりここは城の最西端に天高く突き出た細い塔の頂上ってことになる。
「今あたし達はもの凄いところに居るみたいね。ちょっとびっくりだわ」
美緒さんが何を怪しんでるのかは分からなかったけど、あたしは見たままの感想を述べてみたってわけ。すると、
「あたしは目が覚めて、まずこの窓から顔を出した時、真っ先に驚いたのはこの塔屋の高さとこの大きな古城よ。何も知らない人間だったら、まず真っ先にそこに驚きを覚えるはずだわ。
でもあなたの反応は違った。どうでもいいような湖のことを言ってたわよね。それって......窓からこの景気を見た途端、今居る場所が分かったってことじゃ無いの? だからあたしはあなたが何かを隠してるって思っただけ」
「美緒さん、それは勘繰り過ぎよ。あたしだってこの高さにはびっくりしたし、そもそも帝工本社ビルから美緒さんと一緒にワープして来た訳なんだから、ここがどこか何て分かる訳無いじゃない? もちろん来たこと何て有る訳も無いし」
「ふ~ん......」
どうやら美緒さんは、あたしのそんな説明じゃ全然納得して無いみたい。更なる疑惑の視線をあたしに送り続けてる。まぁ、どうでもいいんだけどね......
そんなあたしと美緒さんの間に、不穏な空気が流れ始めたその時のことだった。
トントン......
突如1つしか無い重厚な扉をノックする音が!




