第5話 別世界
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「ここはどこ?!」
ふと目を覚ました途端に飛び込んで来た景色は、レース越しに見える真っ白の天井だった。それは見たことの無い景色だ。
ここは現実? それとも夢の中?
そんなことすらも識別出来ない程に、彼女の頭の中は大混乱を巻き起こしてた。
無理に考えようとすると、銀紙を噛み潰した時のような電気が脳神経を痛め付けてくれる。それはもう耐えられない程の痛みだった。
もしかしたらそれは、無理矢理眠らされた時に嗅がされた薬物の影響だったのかも知れない。
「あいたたた......」
そんな訳だから思わず顔をしかめて頭を抱え込んでしまう彼女だった。
ならば一旦考えるのを止めて、身体を起こしてみよう......
そんな思考が働いたものだから、今度は、えいっ! と言わんばかりに身体をベッドから起こしてみた。すると、
「あいたたたた......」
やっぱ痛んだ。今度は身体中が。多分だが、キラースパイダーとの一悶着で気付かぬ痛手が全身を覆い尽くしていたのだろう。
身体が痛いってことは......
やっぱここは現実の世界だ!
今更ながらに、そんなことを悟る彼女だったのである。
「あら、お目覚め? 一生起きないかと思ったわ」
なんと今度は背後から女性の声が。てっきり自分1人かと思ってた彼女が慌てて振り返ってみると、そこには何と!
「み、美緒さん?!」
そんな名のスリム女性がニタニタ笑ってたのである。
「あたしが圭一さんに見える? 美緒に決まってるでしょ」
「あなたが美緒さんってことは......つまりあたしは......摩耶ってこと?」
「そう、あなたは摩耶さんよ。でもさ、自分に辿り着くのに何でそんな回り道するの? まだ寝ぼけてる?」
「大丈夫、もう完全に覚めたわ」
あたしこと美竹摩耶は、美緒さんと会話したことによって、ようやく頭が普通に回転を始めてくれたらしい。
ちなみに今あたしが座ってるのは、さっきまで寝てたベッドに他ならない。でもいつもあたしが寝てたワンルームマンションのチンケなベッドとは明らかに違った。
ダブルサイズは有りそうだし、やたらとフカフカしてる。シーツも掛け布団カバーも明らかにお姫様仕様だ。きれいな薄ピンクの花柄模様で可愛らしいフリフリが付いてる。
隣に並んでるベッドも全く同じだ。(多分そっちは美緒さんが寝てたんだと思うけど)
ちなみにゴージャスなのはベッドだけじゃ無かった。壁紙もフカフカ絨毯も、ビクトリア王朝を彷彿させるようなアンティーク家具も、腰高窓に備え付けられたレースのカーテンも、何もかも......
装飾と名の付く全てのものに『ゴージャス』と描かれた名札が括り付けられている。
更にそんなアンティークテーブルの上には、フルーツタワーとアフタヌーンティーのセットが2人分。
もしかしてここは高級ホテルのスイートルーム? などと勘繰ってしまう程に、至れり尽くせりが隅々までに散りばめられていたのである。
そして更に更に極め付けは何と、
「美緒さん......なにそのパジャマ? って言うかネグリジェ?」
そんなこと言ってるあたしも同じ装いだったりもするんだけど。
「知らないわよ。起きたらこんなの着せられてたんだから。まぁ、でもあなたは似合ってるわ。やっぱ育ちがいい人は違うわね」
褒めてるのか貶してるのかは分からないけど、多分褒めてるんだろう。
いずれにせよ、今自分を取り巻く全ての環境が意味不明。ここがどこなのかも分からないし、今が一体いつなのかも分からない。
あたしと美緒さんが帝工本社ビルに侵入して、キラースパイダーを倒して目標としてた執行役員 財前徳一の部屋の扉を開けたところまでは覚えてる。
それでどう言う訳かその後の記憶が全く無くて、気付いたらお姫様ルームに居てお姫様になってたって言う経緯だ。
何だか亀の背中に乗って竜宮城に来たみたいな気分だわ......
そんなあたしの頭の中に『?』マークが1ダース程出現を始めたその頃だった。
「そろそろ頭も落ち着いて来たみたいね。じゃあいいかしら?」
美緒さんが切り出して来た。
「ええ......あたしは大丈夫」
気付けば美緒さんもフカフカベッドに座って身体をあたしに向けてる。きっあたしより早く起きた分だけ情報も多く仕入れてるんだろう。




