第13話 審判
「実はこの街にスパイが2名入り込んでまして、今我々警察はその者達の検挙に全力を注いでます。既に2名の警察官が殺されてました。非常に危険な人物です」
何やら物騒な話を切り出して来る8機の警察官達だった。
「そ、それは恐いデスネ。ソレデ......僕達にナニカ?」
「あなた達はどちらの方ですか?」
この会話が職務質問で有ることは明白。そんな訳だから、いきなり核心に触れて来た。
「あたし達か? 見りゃ分かるやろ。そこの研究所の研究員や」
一方、ランチに向かう途中で足止めを食らったリーダーはちょっとご機嫌斜めのご様子だ。イライラが思いっ切り顔に出てる。
「ならば、身分証明になるものは有りますか?」
一瞬顔を見合わせる2人の研究員。でも次の瞬間には、
「これでいいんか?」
女性研究員が首にぶら下げてた【社員証?】を掲げて見せた。よくそんな物を身に付けてたものだ。
一方、そんな2人の反応に対し、8人の警察官達は舐めるようにして2人の全身を見続けてる。
きっと8機もの脳内コンピューターが収集したあらゆる情報を吟味してるのだろう。
「......」
ドクン、ドクン......
2人の心臓が鼓動を繰り返す中、5秒、10秒と、時間だけが経過していった。それはもう2人に取って息も出来ないような時間だったに違い無い。
ドクン、ドクン......
「......」
更に10秒、20秒......尚も沈黙は続いていく。そして遂に耐えられ無くなった男性研究員が、
「あのう......ソロソロ僕達行きたいんデスケド」
沈黙を破ってそんな声を発してしまったのである。するとそれに対する警察官の反応は早く、そして鋭かった。
「何をそんなに急いでるんですか? 何か隠してるんですか?」
そんなことを言われた途端に、男性研究員の顔から血の気が一気に引いていく。
不味い......怪しまれてる!
男性研究員が早まったことを言ってしまったと、今更ながらに後悔したその時だった。
「あんたら警察官って言ったな!」
なんと女性研究員が顔を真っ赤にして、1歩前に足を踏み出してたのである。今にも手が出そうな勢いだ。
「なんだ、その反抗的な態度は?! まさか......貴様ら」
なんと成り行きとは言え、一色触発状況に陥ってしまった訳である。しかし女性研究員は1歩も引かなかった。
「あたし達は短い休憩時間にただ早くランチを食べたいだけだ! これ以上足止めすると上司に報告するぞ!」
「上司だと?!」
「そうだ。アラルのゲオルギー様に報告するって言ってるんだよ!」
「......」
すると、それまでの勢いは一体どこへ行ってしまったのか......途端に警察官達は言葉を失ってしまったのである。
※ ※ ※ ※ ※ ※
【ゲオルギー】
8体のドローンに囲まれた排水路の中で、凛が繰り出した最後の切り札はそんな名を大きな声で叫ぶことだったのである。
見ればそれまで点灯していた真っ赤なパイロットランプが点滅に切り替わってる。明らかにそれまでとは違う挙動を示す8機のドローンだった。
一体この後どうなるのか? それは例え凛でも決して分かり得るものでは無かった。
ただ間も無く裁きが下される......それだけは間違いの無いことだった。
銃を隠し持ってるとは言え、8体もの重装備ドローンに360度包囲されたこの状況は正に背水の陣。逃げ道など存在する訳も無かった。
そんな状況を自ら作り上げた2人はもはや最悪の結末を覚悟しておかなければならない。
ドクン、ドクン、ドクン......
2人の激しい鼓動音が排水路中に響き渡る中、遂に審判は下される。
2人の命運は如何に?!
すると、
ピーッ。
正面のドローンから僅かな電子音が立ち上がったと思えば、次の瞬間にはそれまで点滅していた赤のパイロットランプが緑の点灯に変わっている。
そして、
ブ~ン、ブ~ン......
去って行ったのである。8機もの自律戦闘型ドローン達が!
それは正に、生身の人間の脳が人間の作り出したAIに勝利した瞬間だったに違い無い。
「ヤッター......行っちゃいマシタ」
喜びを隠せないポールに対し、
「まぁ、何とかなったっぽいな......」
ヘナヘナヘナ......
全身の力が抜けて、へたり込んでしまうチームリーダーの凛だった。




