第12話 マンホール
「凛サン、取り敢えずは隠れマシタけど......直ぐに見付かっちゃいマスヨ」
「確か......入れといた筈なんやけどな」
見ればポールの話などには上の空。凛は背負ってたバッグの中を詮索中。
「凛サン、何探してるノ?」
「おう、有った有った!」
何やら凛は満足そうな表情を浮かべてる。そんな表情を見て直ぐにポールは確信したのである。
何かこのピンチを脱出する最新兵器が飛び出して来るに違い無い! そんな風に。
そして遂に......
現れたのである。凛が渾身の力で取り出した究極のアイテムが!
「さぁ、これ着ろ」
「へ? 着ろって? ......一体ナニヲ?」
「いいから早く着ろ。死にたいのか?!」
見れば何やら白い布のようなものが見える。これが最新兵器? いや......何度目を擦ってみても、やっぱただの布だった。
「これッテ......モシカシテ白衣?」
「そうだ、早く化学者になれ。もう来るぞ」
ブ~ン、ブ~ン......
本当に音が近付いて来てた。しかも複数。凛が言ってるように迷ってる場合じゃ無い。
「なんだか分からないデスケド......取り敢えずは着マシタヨ」
見れば凛も既にポールと同じ白衣姿。それはそれで中々似合ってる。火炎放射機女の印象が強かっただけに、このギャップが意外に見えて仕方無いポールだった。
もしかしたらこの凛さんって......元々は化学系の人だったとか? まぁ今この場に及んでどうでもいい話ではあるのだが......
ブ~ン、ブ~ン......バタバタバタ。
「宜しい。取り敢えず武器を隠して堂々としてろ。笑顔も忘れるな!」
???
果て......笑顔って? 益々分からなくなって来たぞ。
正直ポールは凛の言ってることの意味が全く分からなかった。とは言っても、ドローンの繰り出す羽ばたき音は一気に近付いて来てる。
ここはもう凛の言うことが妄言じゃ無いことを信じて、言われた通りにする以外やれることは無かったのである。
「それじゃあ行くとしよう。後は神任せだわ」
「リョウカイ」
すると凛はなんと、一切の動揺を心の奥底に封印し、ノーガードで歩き始めたのである。8機のドローンが待ち受ける排水路の主管へと向かって。
その様はまるで、とこぞやの化学者が昼休みに穏やかな笑顔を浮かべランチにでも向かう様子と何ら変わりは無かった。
きっとこの殺伐とした環境の中においても、血圧・心拍数共に平常時の数値を叩き出しているに違い無い。
なるほど......そう言うことか。
でも果たして......そんなに上手くいくの? AIってそんなに単純なのだろうか......
不安になればなる程、ポールの血圧も心拍数も急上昇。それが足枷になると考えただけで、更なる急上昇を始めてしまう厄介な心臓だった。
不味い、不味い......
こんなに動揺してたら上手くいくものも上手くいかなくなってしまう。
果て......とうしたものか?
よし、これだ!
※ ※ ※ ※ ※ ※
やがて......
ランチタイムになり、2人の化学者が働き慣れた研究所の外へ出ると、そこには小さな公園が広かっていた。
「凛サン、今日は何食べましょうカ?」
「そうだなぁ、ラーメンも飽きたし今日はイタリアンでも食べるとしようや」
「イタリアンですカ......」
「安心しろ。今日はおごってやるさかい」
「マジッすか! ありがと~ゴザイマス!」
空を見上げれば、雲一つ無い青空が広がってる。正に小春日和と言っていい実に穏やかな気候だった。
そんな中、
バタバタバタッ......!
穏やかな空気を打ち破るかのように、複数の足音が近付いて来たのである。
見れば8人の警官が自分達を取り囲んでるではないか?!
気付けば、にわかに怪しい風が吹き始め、それまで晴天だった空にも怪しい雲が出現を始めている。
それはまるでこの後、台風が巻き起こる前兆に思えてならなかった。
「ちょっと君達、宜しいかな?」
警官の1人にそんな声を掛けられたものだから、この街の住人として無視する訳にもいかない。
「どうしたんデス? 何か有ったんデスカ?」




