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告白と危機と転換点。 下

 薄暗く狭い部屋の中。あるのは小さな机と椅子と卓上のランプだけ。橘波留日はその中で手首を縛られ、大人しく椅子に座っていた。子供らしい半ズボンから覗く華奢な足は所々擦り切れて血が滲み、真白い絹の手袋にも泥が付いている。扉の外には人の気配がする。こちらをじとりと舐めるような、不快な視線だ。


 波留日は湿り気のある淀んだ空気を吸い込んで、深いため息をついた。時計も窓も無い部屋では、時間の経過が分からない。波留日は抵抗を諦め、そっと目を閉じて先ほどまで怒涛として繰り広げられていたやり取りを思い返しながら鋭く辺りを伺っていた。


 視覚を封じればそれ以外の感覚が研ぎ澄まされる。波留日はじんじんと熱を持ち炎症を起こし始める身体に顔をしかめた。


 雷蔵の祝い酒を買いに行っただけなのに、何故こんなことになっているのだろう。


 波留日は閉じていた目をそっと開けてじっと辺りを見渡した。雷蔵は無事に社屋へ帰れたのか、陣佐はしっかりと然るべき対応を始めてくれているだろうか。


 考えれば考えるほど、不安が首を垂れて心の中に横たわる。と、コツコツと革靴が廊下を打つ音が響き、扉の前で止まる。扉の外で数語言葉が交わされた後、ドアのノブがゆっくりと回った。


 先程とは異なり、軍服をきっちりと纏った無骨で若い男――佐伯は波留日の向かいに座りながら低い声を出す。暗闇に目が慣れた波留日には、逆光が眩しくて顔が見えない。波留日は眉間に皺を寄せてじっと佐伯を見上げ、淡々と口を開いた。


「……治安維持法は無い筈だろう? 何故そのようなことをするんだ」


「……何だそれは」


 開口一番波留日から発せられた意味の分からぬ言葉に、佐伯は不快感を露わにする。波留日はその反応を受けて言葉を吐き捨てると、次いで挑発するように首を傾げてみせた。


「分からないならいいよ。で、……何の用?」


「先程、編集部の人間が此方に来たが、丁重に対応して帰っていただいた」


「……彼らに暴力は?」


 波留日の眼光が威嚇するように光り、佐伯を睨みつける。その視線を跳ね除け、佐伯はゆったりと、悠然とした態度で足を組み、机へ肘を突いた。


「貴様が案ずるような対応はしていない」


「……ふぅん」


 波留日は小さく返事をして再び口を噤む。その見た目にそぐわぬ態度を前にして、佐伯は戸惑いと苛立ちを顕わにした。


「……まさか鷺坂の手がこんなところにまで及んでいたとはね。いやはや全く想定外だ。流石、この時代を代表し、権力を思いのままにする文豪だよ」


 波留日は力を抜いて猫背になっていた背筋をグイと伸ばして、薄暗い天井を仰ぐ。ギシリと錆のある椅子が体重移動に伴って鳴き声を上げた。


「それに初動も早い。優秀な人間にこそできる芸当だ。評価するね」


 上を向いたまま、波留日は笑い混じりに声を張る。佐伯はその上から目線な発言に青筋を立て、噤んだ口元を震わせた。卓上のランプがその様子をぼんやりと照らす。


「僕達を監視していたのだろう? 陣佐の電話を受けて大急ぎで連絡したのだろう? 通話の内容は、『達川雷蔵の作品集出版の話が動きました。如何いたしましょう?』というような感じかい?」


 波留日はゆっくりと仰け反っていた姿勢から戻って前を向くと、口角を上げながら無骨な佐伯の薄暗く照らされる顔を見据えた。


「それで命を受けたのか、『出版を強行するようなら橘波留日を拘束せよ』という具合に。組織の人間というのは、やりたくも無い汚れ仕事をさせられて理不尽極まりないよね。分かるよ」


「黙れ」


 手を縛られていなければ机に頬杖を突いていそうな軽い態度だ。その何もかもが鼻につく物言いを佐伯は鋭い声音で遮ろうとする。しかし波留日は臆することもせずに口を動かし続けた。


「君だって理解したくないだろう。組織の一員として、権力の手先として、非人道的なことへ片棒を担いでいることを。しかしそれは人間社会に属していれば誰にでも起こりうることだ。故に僕は君を責めはしないよ。君がただ、上からの命に従っていたのだとしたら、ね」


「黙れ」


「ただ僕の目線で酷く残念なのは、そうして真面目に働く日本男児のような君達の属する気高き組織が、一般市民を拘束し連行するのも厭わないという素敵な面を持っているということだね」


「黙れ!」


 官兵衛はつらつらと言葉を並べる波留日に顔をしかめ、声を荒らげて遮る。バンと力任せに机が叩かれ、ギシギシと軋んだ。波留日はその声と音に呆れたように閉口し、溜息をついて俯く。


「……第一、憲兵でも検閲でも警察でもない一般の軍人が、逮捕状などの公的文書無しに一般人、況してやこんな子供を拘束し連行するなど、職権乱用もいいところだ。こんなことは本来許されるべきではない。そういった思想に従い行動することは、地獄への道を図らずも舗装していることを意味する」


 下から睨めつけるような冷え切った視線に、佐伯はグッと息を詰めてたじろいだ。つぅと詰め襟の首筋に冷や汗が伝う。波留日の大きな瞳には、そうして怯み、怖気づく男の姿が映り込んだ。


「……貴様は本当に人間か? 狐か妖の類じゃあるまいな……? そうやって幼い姿で言葉を吐いて……私の妻や周りの人間を誑かしているのだろう?!」


 青筋を立てて声を荒らげる佐伯を前に、波留日は冷静に何かを考え込むように前を見据える。


「君は……そうか。軍人……佐伯……。ミチの旦那かい。いやはや、こんな所でお会いするとは思わなかった。世界は狭いものだねぇ。君の奥方には、君と結婚する前から、随分と仲良くさせて貰っているよ」


 落ち着き払った波留日の言葉に、佐伯は青褪めながら一歩、また一歩と後ずさった。あまりにも場違いに冷静で飄々としているこの少年の態度は、どう考えたとて異常である。得体の知れぬ恐怖が佐伯の全身を支配し、悪寒となって迸った。


「……もう黙れ。気味が悪い」


「僕はいつになったら解放されるのかなぁ?!」


 波留日の問に答えず、佐伯は逃げるように部屋を出て鍵を閉める。湿り気のある重苦しい空気から解放され、佐伯は水面から出た時のように肩を上下させて空気を取り込んだ。


「佐伯少尉……」


 部屋番をしている部下が心配そうにその姿を覗き込めば、佐伯は苛立ち混じりに何とかそれを振り払う。


「引き続きここで監視を頼む。ただ、絶対に部屋の中を覗くな、中の人間と会話をするな。以上」


「はい」


 そして少しふらついた足取りで舎を出る。何とか気持ちを落ち着かせようと胸元のポケットから煙草を取り出した。しかし手元が狂って中々火がつけられない。


「官兵衛!」


「勇次郎……」


 その矢先、責め立てるような大声が名前を呼び、ちらりと佐伯は顔を上げる。そうすれば、気色ばんだ表情をしながら大股でこちらへ歩いてくる眞田勇次郎の姿があった。


「お前が子どもを運び込んだと聞いた! 橘波留日じゃあるまいな? お前、非番じゃなかったのか? あぁもう! いい加減あの任務は阿保臭いと思っていたから、何も無いって報告して辞そうと思っていた矢先に何をしてくれているんだ!」


 勇次郎は官兵衛へ掴みかかり、人目も憚らずに早口で捲し立てる。官兵衛は眉間に皺を寄せ、勇次郎の腕を振り払った。


「黙れ。これは極秘任務だ。口外するな。……任務ならば遂行すべきだ。お前が最近任務を任せて欲しいと言っていたのはそういう思惑があったからか……。お前もあの不気味な子供に魅入られたというのだな。……文学好きに任すべき任ではないな」


「っ……、その指摘に関して否定はしない。だが、拘束と連行はやり過ぎだ、冷静に考えてくれ。あんな子供を拘束するだなんて……! 彼らは何の法にも抵触していなければ、こちらにその権限はない筈だ!」


 声を荒らげる勇次郎に、官兵衛は努めて冷静に口を開く。勇次郎ばかりが感情を爆発させるちぐはぐな応酬が繰り広げられた。通りすがる下士官が、奇妙なものをみるように遠巻きに見物している。


「上官と要人に連絡をしたら命令が下りた。俺はそれに従っただけだ」


「そうやって言いなりになって、その考えが間違えていると、やってはならないことだと自分で考えたのか? 可笑しいだろ、あんな子供を……! 一線を超えている!」


 責め立て怒鳴る勇次郎に官兵衛も流石に頭に血が上ったのか、声を荒らげて睨みつけた。


「命令は絶対だろう! それに……あの子供は、言葉を繰り、人を惹きつける話し方をする。野放しにするべきではない! 勇次郎、貴様……あの橘がただの子供だと本当に思っているのか? 矢張り文学は危険だ! 変な思考や妄想を植え付ける!」


「だとしてもだ! ……お前、妻が関わっているからって気が立っているんじゃないのか……? 私情を交えてあの行動に出たのだとしたら、俺は軽蔑する」


 二人は互いに胸倉を掴み合い、軍靴が砂利を踏みしめてザリザリと音を立てる。通りすがる一般兵が何事かと興味深そうに眺めていた。


「……上から降りた許可であり命令だ。それの何が悪いというのだ。父からの、家からの期待や規律がある。妻もできた。文学などに現を抜かしている奴らとは立場が違うのだ!」


 勇次郎はその強い言葉に溜息をつき、官兵衛の胸倉を掴んでいた手を緩めてドンと突き離す。


「あぁそうかい、それは俺にも刺さる言葉だ。士官学校で分け隔てなく接してくれたのも御父上の御命令か? 俺はそんな生き方は嫌だね。アンタが雁字搦めになっているものなんてクソ喰らえだよ!」


 官兵衛に吐き捨てた後、勇次郎は踵を返し、大股で軍靴を踏み鳴らした。


「待て、どこへ行く」


 官兵衛が慌てて呼び止めるも、勇次郎は振り向かずに言葉だけを残す。


「先生に会ってくる。案ずるな、勝手に逃がしはしねぇよ。ああは言ったが、俺だって命は惜しいからな」


 そう言って去りゆく勇次郎の背中を見送り、官兵衛は勝手にしろと言わんばかりに反対方向へ足を進めようとした。しかし二、三歩踏み出した後に振り返り、その後を追いかける。



***



「失礼致します」


 ご丁寧に戸を叩き、眞田勇次郎は恭しく扉の鍵を開けて波留日を拘束する部屋に足を踏み入れた。


「次は何だい?」


 椅子に座って何やら思案に耽っていた様子の波留日は、勇次郎の声に気付くと、顔を上げてにこやかな笑顔を作る。勇次郎も気が立っているのを押さえつけ、なるたけ穏やかな表情になるよう口角を引き上げた。


「同僚の狼藉を謝りたいと思いまして、橘先生」


「ほぅ、先生だなんて、ひょっとして日々是好日の読者かい?」


 向かいに腰掛けた勇次郎の言葉に、波留日は目を見開く。彼の纏う張り詰めた雰囲気が少し和らいだ気がして、勇次郎も肩の力を抜く。しかし後ろめたさが拭われる事はなく、歯切れの悪い返事を返した。


「えぇ、まぁ……。一度、其方にお伺いしたこともあるのですが」


「軍人が……。あぁ、年末に……日向端の、奥方……が体調を崩した時に助けてくれたのが君かい?」


 波留日は天井を見上げて脳内の記憶を探って合点が行くと、人差し指を立てて首を傾げる。勇次郎は波留日の記憶に留めて貰っていた事実がくすぐったいのか、肩を丸めてはにかんだ。


「はい。眞田勇次郎と申します」


「あぁ……あの時は申し訳なかったね。迷惑を掛けてしまって」


 波留日は珍しく素直に謝罪の言葉を吐いた。勇次郎はゆっくりと首を横に振ると、親切な青年の真っ直ぐな瞳で波留日に問う。


「お気になさらず。……その後あのご婦人は?」


「あぁ……あれは妊娠の兆しだったみたいだよ。今は悪阻で大変みたい。まだ腹は出ていないけれど、じきにそれらしくなるだろうね」


 波留日の言葉に、勇次郎は大きく息を吐いて気の抜けた笑顔を浮かべた。


「そうですか、大病などではなくよかったです。めでたいことですね。ややは男でしょうか、女でしょうか。生まれる前から母親に迷惑を掛けて、そういう図々しいところがあるならば男かも知れませんね」


 冗談交じりに放たれた勇次郎の言葉に、波留日も目じりを下げて肩を震わせ笑う。その口元を、白い絹手袋の指先が隠した。


「ふふ、意外と正解だったりして。君は鋭そうだから。……で、僕はいつ出られるのかな? 何で捕まってるのかな?」


 この和気藹々とした雰囲気のまま……とは行かないらしく、雑談は御仕舞いだと言わんばかりに波留日は声音を低くして鋭く勇次郎を睨めつけた。そのあまりの変わり様に、勇次郎は思わず気圧されて小さく仰け反る。


「……それは完全にこちらの落ち度です。先生方は全く以て悪くありません」


 そして深々と頭を下げた。思わぬ反応に波留日は眉をひそめる。激しく責め立て身柄を縛る者と何も悪くないと謝罪する者が同じ軍にいることが彼にとっては、混乱の種なのだろう。生憎、軍もこの任務に関しては曖昧な立場を取っているのだ。無理もない。


「なるべく早く解放されるよう掛け合いますから。何せこの任務、極秘のもので上に外部の方も居るようでして……」


「これ以上は君自身のために言わなくていい。大体分かったから。君たちも大変だね。士官学校上がりの有望株といえども上官からの命令は絶対か。同情するよ」


 決まり悪そうに苦い顔をする勇次郎を波留日は制止させ、肩を竦めて笑う。嘲笑だと分かりつつ、勇次郎もつられて愛想笑いをした。


「ただ……」


 へらへらと笑い合う二人の間で緩み始めた空気が、再びその静かな声で凍てつく。勇次郎は駆け抜ける悪寒に弾かれるように顔を上げ、その先に座る波留日とぱちりと目が合った。


「雷蔵達に危害を加えたら許さない。僕と彼の邪魔をするな、絶対に」


 たった今、眼前に腰掛けているのは年端もいかぬ子供である筈。しかし、そんな彼の放つ大きすぎる威嚇と、その目に宿る炎のような眼光に晒され、勇次郎の全身は釘打たれたかのように動けなくなった。唯一呼吸が許された喉元で、ごくりと喉仏が上下に動く。



***



 陣佐と雷蔵は波留日が連れて行かれた軍施設へ駆け込んだが、なすすべもなく門前払いされ、何の成果も得られないまま帰り道を歩いていた。片方だけの草履で歩き、泥だらけ、傷だらけの容貌で歩く雷蔵を、道行く人は何事かと目を見張って避ける。陣佐は洋袴のポケットからハンケチを出すと、頬の擦り傷を気にする雷蔵に手渡した。


「悲しんで、狼狽えちゃいられねぇ。波留日の解放がいつか分からねぇなら……。一度、日々是好日を止める。悪いな、雷蔵、少し辛抱してくれ。あくまで、一時休刊だぞ」


 雷蔵は大きく目を見開き、歯を食いしばって陣佐を睨みつける。しかしすぐに目を伏せた。見上げた陣佐の顔が、まるで鬼神の如き形相だったからだ。悔しがっているのは、悲しがっているのは、怒っているのは、何も雷蔵だけではない。


「波留日の居ない日々是好日に意味はあるか? 寄稿者を危険に晒す日々是好日に意味はあるか?」


 陣佐の強い語気に、雷蔵は俯きながら必死に言葉を振り絞った。


「……ないとは言えません。……ただ、とても寂しい、やるせない、やりきれない! 波留日が、何のために俺を庇って……!」


「それは分かっている。日々是好日を続け、お前を守るためだ」


「じゃあ……!」


「だが今回ばかりは駄目だ。実害が出ている。ちょっと前の警告書とは訳が違う。波留日には怒られちまうかもしれねぇけどな」


 顔を上げた雷蔵にぴしゃりと陣佐は言い放つ。


「……お前に限らない、俺もそうだが、どうも波留日を神格化しちまう節がある。まぁ当然だわな。あのナリで、身の振り方に迷っていた俺や、絶望していたお前の前に現れてもれなくその心を掬い上げるんだからよ」


 陣佐は足を止めない。歩きながら煙草を咥え、何回か失敗しながらマッチを擦りつけた。その手元は足取りのせいで狂っているだけには見えない。雷蔵はぐうの音も出せないまま、陣佐の言葉をひたすらに聞く。


「だから今回も大丈夫だって思っちまいそうになる」


 ようやく点いた煙草の煙を肺いっぱいに取り込み、溜息交じりに紫煙を吐いた。


「でもな、忘れんなよ。アイツが神様みたいなモンだったとして、その器は脆い子供だ。酒に酔っ払って、紙で手を切って、壁殴ったりして赤切れた傷は中々治らないような、子どもの身体なんだよ」


 雷蔵はハッとして顔を青褪めさせる。自分が立ち向かっても歯が立たなかった相手に波留日は連れ去られたのだ。事実がようやく雷蔵の中で追いつき、カタカタと唇が震えはじめた。


「あの身体で軍人に殴られたんだろ? 拘束されているんだろ? ……これ以上鷺坂の神経を逆撫でると、波留日に何されるか分かったもんじゃねぇ。一度ここらで大人しく言うこと聞いて、鷺坂の鬱憤を晴らさせる」


 陣佐は足を止め、煙草を地面で踏み潰して消す。そして所在なく怒りに任せて歩いたせいで分からなくなってしまった現在地を確認するように辺りを見渡した。


「陣さん……?」


 雷蔵が怯える小動物のような声を上げる。陣佐はその情けない声に噴き出して笑うと、いつも通りの爽やかな表情を雷蔵に向けた。


「悪いな、厳しいこと言っちまって。俺は今から印刷所に行って、次号に休刊の報せの頁を差し込めるか訊いてくる。駄目ならビラ刷って本屋行って貼ってくる。あとは……」


 解れた空気が再び張り詰める。雷蔵は息を呑んで背筋を伸ばした。


「雷蔵、お前一回社屋に帰って着替えてから偕成に行ってこい。鎌田と桑原先生に事情を話せ。……作品集だけは、どんなに時間が掛かっても出したいと伝えてこい。波留日の一番大きな願いは……雷蔵、お前だよ」


 陣佐は人差し指を真っ直ぐに雷蔵へ向ける。雷蔵はそれをじっと見つめた。


「絶対にあきらめねぇぞ。波留日も、日々是好日も、作品集も」


「はい……!」


 陣佐の言葉に、雷蔵は深く頷いた。

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