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ツイン’ズ  作者: 秋月瑛
11/13

第11話 天然家族

 脱出ポットに追いついた俺は、ポットに足をかけてハッチを壊すと中へと入った。

「俺’逃がさんぞ!」

「はぶっ!? しつこいぞ直樹♂!」

 俺は俺’に掴みかかると、そのままポットの外まで引きずり出した。ちなみに俺は高いところが大好きだ。いつか自由に空を飛ぶのが夢だった。

「放せ!!」

「本当に放してもいいのか? ここ上空だぞ」

「それは困る。だが自由にはしろ!」

「自由になんかしたら逃げられるのがオチ……」

 ブースターのジェット音が止まった。まさか……俺は蒼い顔をしながら自分の足元を見ると……うひょ〜!?

「ブースターが止まってんじゃん。落ちるぞー!!」

「何ぃ〜!!」

 俺は高いところが好きだ……だが落ちるのはイヤだぁ〜!!

「「わぁ〜〜〜っ!!」」

 俺たちは互いに顔を見合わせながら叫んだ。もちろん相手の顔にビビったんじゃなくって、地面に落ちるからだ。

 もげっ!! もうすぐ地面やないかっ!! どうする俺、どうすればいい俺? ……どうすればいい俺……俺……俺?

「俺’どうしたらいい?」

「私に聞くなっ!!」

 至極もっともな答えを返されてしまった。まあ結果は見え見えだったけどね。

 ……ってそうじゃないだろ。このままじゃ……!?

 突然上空に巨大ネットが広がり俺たちはそれに思いっきし突っ込んだ!!

 ネットは俺たちが突っ込むと端と端がくっ付き俺たちを荷持つ扱いして、パラシュートを開き下へとゆっくりと落ち始めた。

 ……なんだかよくわからんが……助かったのか?

 それにしてもこのネット、仕組みはわからないけどすっごい科学力で出来ているのは確かだな。

「科学……かがく……可……」

 次の瞬間俺と俺’の声が重なった。

「玉藻先生!?」&「妖狐先生か!!」

 二人とも同じよーなことを考えていたらしい。

 だが、これが玉藻先生の作った発明品だとすると……俺ってまた捕まったのか!!

「は〜ははははっ、形勢逆転のような直樹♂!!」

「……くっそぉ〜」

 パラシュートはふわふわと誰かんちの屋根に俺たちを降ろした。

 ……どうやって降りる? パラシュートはこんな近距離じゃ開かないし……この家2階建てだし……どうしろっていうんだぁ〜!?

「暴れるな直樹♂!! ネットに絡まるだろ!」

 問題点がもう一つできてしまった……ネットから出る前に俺が暴れたためにネットが俺らの身体に絡みつき身動きができなくなってしまった。

「暴れてすまなかった」

「……それはいいから手を」

「手を?」

「手を退かしてくれないか?」

「うひゃ〜!?」

 俺は素っ頓狂な声を上げてしまった。さっきからど〜も右手に軟らかい感触があると思ったら俺’の胸か!?

 俺は慌てて手を退かそうと暴れてしまった。それが新たな危機を!

「おまえはアホか?」

「すまない」

 ……暴れたのが逆効果となって俺と俺’の身体は完全に密着した状態で今度こそ身動き一つ全くできない状態になってしまった。

 サイテーな状態だ。今俺の頭は俺’の胸にうずまっている……。誰かに助けて欲しいと思うが、誰にも見られたくない。

 だが、誰にも見られないなんて不可能なことだったらしい……。

「わっ!? 何? 屋根の上が騒がしいと思ったら何あれ!?」

 誰かに見られちゃった。でもこの状況では顔が見えない。俺’も同様に顔を動かすことができず相手の顔を確認できないらしい。だが……たぶん俺と同じことを思っているに違いない。あの声に聞き覚えがあるんですけど……。

 俺は恥ずかしいのを捨てて助けを求めた。

「助けてくれぇ〜」

「私の胸でしゃべるな……感じるだろ……」

 俺たちの声を聞いて正体がバレた。

「お兄ちゃん!? 屋根の上でネットに絡まってるのお兄ちゃんなの? よく見えないんだけどもう一人いるよね、誰なの?」

 ……俺んちの屋根だったのか。絶対俺は運命の女神にもてあそばれてる。

 俺はこれ以上しゃべるとダメらしいのであとの受け答えは俺’がする(笑)。

「今は誰でもいいから、とにかく助けてくれ!」

「う、うん、ちょっと待ってて」


 ややあって、妹がはさみと脚立を持ってきたらしい……妹曰くなので見えない私からしたら実際なにを持ってきたのかわからな。もしかしたら包丁とか間違えて持ってきてるかもしれない。うちの妹ならあり得る。

「お兄ちゃん今行くからね」

 屋根に脚立をかける音がして誰かが上がってきている。そして妹が脚立を登り終えて屋根に登り私たちの横まで来た。いつ見ても可愛い妹だ。最近ショートにしたのだがそれが一段と我が妹の可愛らしさを引き出している。

「遊羅[ユラ]早く助けてくれ」

「わかった。今助けてあげるからもうひとりの人ももう少しの我慢ですっ」

 ……遊羅はまだ私が二人になったことを知らない。つまり私の胸に顔が乗っているという状況も把握していない……女である私の胸に顔が乗ってるって状況を……早く退かしてくれ。

 ネットははさみでジョキジョキ簡単に切られていく……こんな柔なネットでよく私たちを受け止められたものだ。

 ネットから、頭から私はやっと解放された。

「ぷは〜っ、息がなかなかできなくて死ぬかと思ったぁ〜」

 顔を上げた直樹♂の顔を見て遊羅の口がゆっくりと大きく開かれていく。

「…………お兄ちゃんって双子だったの!?」

 ……それが14年間一緒に暮らしてきた家族の言うセリフか! だが、それが我が妹の魅力だから、ああもう可愛くてしょーがないぞぉ〜v

「「詳しくは家の中で話す」」

 屋根から下りた私たちをある人物が出迎えた。私の母だ。

「……直樹……が二人?」

「お母さんお兄ちゃんが双子だって何で隠してたのぉ〜?」

「あら、私双子を生んだのかしら?」

 おいおい、自分で生んだ子供数くらいわかるだろ。さすがは私の母親だ。

「もしかしたら生んでいたのかもしれないわね。あら、もしかしてもうひとりの直樹は女の子?」

「ええまあ」

「まあ、そうなの。ところであなたの名前はなんと言うのかしら?」

「ナオキだけど」

「まあ、まあ、それは奇遇ね。もう一人の息子も直樹って言うのよ」

 ……少しは疑問に思ってもいいと思うが……相変わらずどこまでも天然な母だ。

 遊羅が突然私に抱きついて来た。不意打ちだ! だがすごくうれしいvv

「私お姉ちゃんがずっと欲しかったんだぁ〜」

 こんな微笑ましい光景の中一人だけ怪訝そうな表情をいるのは直樹♂だ。

「母さんも遊羅も少しはこの可笑しな状況に疑問に思うとかしないのか?」

 全く直樹♂の言うことは正しいが、この二人はそんなこと全く思ってないらしいぞ。

「だってお兄ちゃんとお姉ちゃんって双子なんでしょ」

「私ったらいつの間にか双子を生んでいたのね」

 うちの母と妹が天然だったことにこれほどまでに感謝したことはない。

「お姉ちゃん寒いから早く家の中に入ろうよ」

 私は遊羅に手を握られ玄関まで走らされた。

「ほら、直樹も寒いから家の中に入りなさい」

「俺は納得がいかんぞ」


 納得はいかんが……話的にはこのほうがいいのか? わからん、双子だって思ってもらったほうが生活するうえではいいのか? 母と妹がそれで納得したならいいのか?

 俺はへっぽこスーツを脱ぎ捨てると玄関に向かった。……このスーツを普通のものとして誰もツッこまないのもうちの家庭ならではだな。

 玄関のドアを開けると暖かい空気が外へ流れた。ふぁ〜あったけー、外寒かったからな。

 リビングに行くと俺’と遊羅はすでにくつろいでいた。俺もなんとなくソファーに座ってくつろぐ。そこに母親が暖かい紅茶を持って来て俺らに手渡す。

 念入りに息を吹きかけ冷まし一口飲む。はぁ〜v

 その時、ピンポ〜ンとチャイムが鳴り母がすぐに玄関へ小走りで向かって行った。誰が来たんだ?

 しばらくして戻って来た母親といっしょにいたのは、星川だった。

「先輩心配しましたよ。パラシュートが思ったより遠くに飛ばされてしまって……。あっこの人がもう一人の先輩ですか? やっぱり同じですね、制服着てなかったらどっちがどっちかわかりませんね」

 あのネットって玉藻先生のじゃなかったのか。

 ……そうだ、俺はこんなことしてる場合じゃない!

 自分のするべきこと思い出した俺は俺’に飛び掛った。

「何をする!?」

「逃げられたり、とんでもないことされたら困るからな。誰かこいつを縛る物を!」

 すぐに母親がロープを持ってきた。それを受け取り俺’の手足を縛る。

「ロープを解け」

「解くわけねぇだろ」

「あら、直樹少しきつく縛りすぎじゃないの?」

「どうしてお姉ちゃんのこと縛ったの?」

 今は二人には構わないことにしよう。それよりもこれからのことを考えなければ……。

「星川くん、俺と俺’を元に戻す方法とかわかる?」

「僕にはちょっと……でも玉藻先生ならどうにかしてくれるんじゃないでしょうか?」

「やっぱりあの先生に頼むしかないのか……おい俺’、玉藻先生の居場所はどこだ?」

「…………」

 口を閉ざし目線すら合わせない俺’。だが、星川が玉藻先生の居場所を知っていた。

「先輩、玉藻先生なら自宅にいますよ。今見上先輩と佐藤先輩が乗り込んでるハズですから」

「わかった。みんなはこいつを見張っててくれ。それから星川くん、俺たち双子って設定だから」

「わかりました」

 俺は残りの紅茶をぐぐっと飲むと家を飛び出した。


 外に出るとリムジンが止まっていて鏡花さんがいた。

「お乗りください。玉藻邸へ向かいます」

 俺は車の中へ乗り込んだ。どうして俺が玉藻邸に向かうこと知っているかについては深くは考えない。決して盗聴とか家の中に黒子とかが潜んでいたなんて考えたりはしない……考えない、考えない……。

 リムジンは信号に引っかからずに、しかも……車……人……すら……いないんですけど……巨大な圧力とかお金が動いているなんて考えない考えない……消されるからね。

 なんか早く着いたような気がするけど……きっと気がするだけさ。

 リムジンのドアが開かれ鏡花さんが俺を出迎える。夕焼けに照らせれる鏡花さんも素敵っス。

「お気をつけて」

「どうも」

 俺は鏡花さんに頭を下げると屋敷の中へと乗り込んだ。のは良かったんだけど……どこにいるんじゃー!! どこだ、どこにいる?

 って探すまでもなかった。玉藻先生が俺の横を駆け抜け、その後を美咲と宙が追いかける。

「直樹何してんの? 玉藻先生捕まえて!」

「……役立たず」

 役立たずはないだろ、俺だってがんばってんだ。

「……だったら早く追って」

 宙に言われ玉藻先生を追い書斎に入ったのだが……玉藻先生の姿が消えた。どこだ?

「ぁれが怪しぃ」

 宙はゆっくりと腕を挙げ本棚を指差した。

 宙が指差した本棚の前に立ったが、これがどうした?

「『世界電波論』って本がぁる」

「これがなんだ?」

『世界電波論』ってなんつー本だ。まさかただ読みたいだけってことじゃないよな。

「……引っ張ると入り口が現れるから」

 言われたとおり本を引っ張ると本棚が左右に開き隠しエレベーターが現れた。

「よし、二人とも行くぞ!」

「私はパス。あとは任せたから」

「アタシも今日はチカラを使い過ぎた」

 ……俺に一人で行けっていうのか? お前らなぁ〜。

「……だぃじょぶ……ちょっとィヤな予感は……するけど」

「ちょっとって……お前のちょっとはどのくらいだ?」

「直樹くんのちょっとが……このくらぃだったら……」

 宙は親指と人差し指で何か小さなモノを摘むようなポーズを取り、

「アタシのちょっとは……このくらぃ……」

 と言い両腕をめいいっぱい広げて見せた。

 なるほどよくわかった。わかったけど余計にわからない……この先になにが待ってるんだよ、不安になるだろ!

「何があるんだよこの先に……ホントに二人とも行かないわけ?」

「……ィヤな予感は……よく当たる」

 当たるなよ。

「私は今日突然両親が帰ってくるんのよ。だから家にいなきゃいけなくて」

 もう俺は何も言わない。一人で行くさ……。

「……がんばれ……直樹マン」

「言うな!」

「……何も言わなぃは……嘘……」

 俺は何かを言いそうになる前にさっさとエレベーターに乗り込んだ。

 エレベーターは下へと降りて……横にも動いてるぞ!? どこ行くんだこのエレベーターは?

 長いこと下や横へと動いたあとエレベーターは開かれた。

「待ってたわよぉん。でも直樹だったとはね」

「それを降ろしてもらえませんか?」

 さっすがは玉藻先生、逃げてるだけじゃないってことね。わっけわかんない機械チックな重そうな銃を俺に向けて構えちゃって……はははぁ〜。

「ジョーダンっスよね?」

「あらん、わたしは撃つわよ」

 俺は対抗すべく学ランの中に手を突っ込み銃を取り出し玉藻先生に銃口を向けた。

「これで形勢は五分と五分っスね」

「あらん、そんな物騒なモノ先生に向けるなんてイケないコねぇん」

 でもこの銃はハッタリなんだよな……。星川に愛を元に戻すために貰った銃なんだよね。たしか星川は愛以外には撃つなっていってたよな……。

 終わったな俺の人生――。

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