第五話~友愛編~ 「仄々」
王宮に帰ってから寝るまでの数時間は、これまでの自分にとっては
非常に刺激的な物だった。
食事は肉類の一切使われていない高級料理。風呂は露天風呂付の
超大型浴場を独り占め。そして今日目覚めたあのベッドは、
羊や鳥などの羽毛は使われていないらしい。流石動物の国といったところだ…。
そしてそのベッドで私は今、濃密すぎる今日という日を振り返っていた。
人類でこんな突飛すぎる体験をしている人間は私以外に居ないのではないか…?
私、実は物語の主人公とかになっているのではないか…?
そして最後に思い浮んだのは、夕時にあった一人の少女。
そう言えば、あの子もフィルマンも自己紹介の時に「なんとか族」とか
言ってたな…あれは一体何なんだろうか…。
確か明日は私の秘書兼教育係の人が来るってフィルマンが
言ってたけど、その人に聞いてみるか…。
どんな人なんだろう。かっこいい人だったらいいな。
というか"人"ではないんだよな…ならなんて呼べば…
目を開けると、柔らかな日差しが純白のベッドを照らして一日の始まりを告げていた。
いろいろと考えているうちに寝てしまっていた。
今は何時だ…
時計を探そうと辺りを見回す。その時、ドンドンドン!と鈍い音がドアから聞こえる。
「エルミール様!起きてください!エルミール様!もう秘書が到着する時間です!」
…まずい、寝過ごした!
「ごめんなさい!今着替えていきます!」
昨日と同じように制服に着替え、急いで部屋を出ると、そこには
フィルマンが立っていた。
「おはようございます、エルミール様。秘書はもう到着しています。応接室で待機しているのでご案内します。」
「は、はい。」
歩いているうちに緊張が高まる。どんな人なのだろうか…。
城内を三分ほど歩き、やっと扉の前へ到着する。
「こちらです。」
フィルマンがドアを開ける。
するとそこには、丸い耳に丸い尻尾の、スタイルの良い女性の後ろ姿があった。
「お、あなたが女王様ですか、とっても可愛いですね~!、私、
ラパン族のオリヴィア・ボニツェールと言います。国立アルカンシェル大学で学生やってます。よろしくお願いします!」
「え、えと、エルミール・バルザックです。よろしくお願いします!」
「あ、そんなに畏まらなくてもいいんですよ?私はこれからあなたの
秘書と先生にもなりますが、
プライベートでお友達にもなれたらなぁ~なんて、えへへ。
とにかく立場はあなたの方が上ですから、どんどん扱き使ってください!」
そのおっとりとした表情や喋り方からは、国内一の秀才だなんて想像もつかない。
するとフィルマンが口を挟む。
「頼りない風格ですが、彼女の実力は私も認めています。秘書として、
頼り甲斐のある人材になると思います。」
オリヴィアは褒められて満更でもなさそうだ。
「エルミール様、私のことは"オリヴィア"って軽く呼んでくださいね。」
「は、はい…!」
そしてフィルマンが腕時計を確認し、オリヴィアと私に伝える。
「そろそろ8時です。今日から毎日、君主として十分な教養と、
一般知識、学問に関する6時間の勉強をしていただきます。朝と夜、
それぞれ三時間ずつに分けて行います。早速今日からプログラムが開始
されるので、お二人は講義室へ移動していただき、授業を行ってください。」
「は~い。じゃあ行きましょう、エルミール様!」
「はい!」
いい人そうで本当に良かった…この人なら頼れるかもしれない。
授業はどんなことをするんだろう。元の世界での勉強の成績は中の上。
こんな私でも、本当に一国の君主としてやっていけるのだろうか…。
しかし、それはオリヴィアを信じてついていくしかない。
それにしても…。
「オ、オリヴィアさん。さっきから結構歩いてますけど、講義室の場所って…。」
「え、えぇ~っと、確かこっちでいいと思うんだけど…。」
さっきもこの道通った気が…いや、確実に通ってる。
というかここ通るの三回目だ。
あれ、ほんとにこの人で大丈夫かな…。




