表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

第四話~友愛編~ 「邂逅」

やっと風に当たることができた…この城の大きな入り口を一歩出て、一息つく。城が大きすぎて、外に出るのにも数分かかってしまった…。

王宮を背に、宮前広場、正門、そして緩やかな坂道になっている大正門通りと歩いていく。

大正門通りの終点に、大きな広場が目の前に広がっていた。城を出る前にメイドさんに渡された地図には「シャトー公園」と書かれている。ここは首都・アルカンシェルの中心であり、この島の中心でもあるという。

そしてまっすぐ進むと、公園の奥に大きな聖堂が建てられていた、城に向かい合うようにして建てられているこの聖堂も、彫刻の凝った立派な造りだ。

この世界でも、宗教はあるんだな…。

この聖堂の天辺に掲げられた大きな旗が風にたなびいて、その内容を露わにしていた。旗には紋章があしらわれていて、よく見ると神話生物の"ユニコーン"が神々しく描かれていた。このユニコーンが例の「カミサマ」なのだろうか。

この国についてまだ知識のかけらもないので、中に入るのはやめておこう。

ふと、公園を見渡してみる。この大きく円を描くようにして広がる公園の周りには、カラフルな木組みの家々が立ち並んでいる。丘の上にそびえる洋風の王宮といいこの立派な大聖堂といい、まるで絵本の中のような街だ。

…ちょっとした冒険心に駆られ、建物の間の路地に入ってみる。

お洒落な喫茶店もあれば、服や食品店、楽器店なんてものもある。

にしても、通り過ぎる人々はみんな耳や鼻が動物で、しっぽもある。

人間の体と動物の体が、うまい具合に馴染んでいるようだった。

これだけ見てると、フィルマンにされた話もなんとなく信じることができる。


 数十分は歩いただろうか…脚もそろそろ疲れてきたし、そろそろ城の方に向かって歩くか…。

「…あ。」

出かける前、フィルマンは言っていた。

『この街は木組みのカラフルな建物が多く立ち並んでいますので、何か一つ目印となる建物を決めておけば迷うことはないでしょう。』

…全然気にしてなかった…。

「ここ…どこ?」

エルミール・バルザック17歳。この年にして迷子か…。

若干涙目になりながらあたりを見回す。

この世界の木組みの建物は、元の世界でも見たことがある。俗に"コロンバージュ"と呼ばれる建築技法である。この技法の特徴は建物の背が高いということ。路地に入ると建物ばかりで見通しが悪く、丘の上の城さえも見えなくなっていた。

どうしよう…どうやって帰ろう…。

「あの、お姉ちゃん迷子?」

後ろから女の子の声が聞こえた。

振り返ると、そこには中学生くらいの猫耳の女の子が不思議そうにこちらを見つめていた。

「う、うん…城の方にお家があってね、迷っちゃったの…。」

「なら、案内してあげる!」

…て、天使だ!天使が舞い降りた!

「ありがとう!私エルミール。よろしくね!」

「うん!私はシャンシャ族のロラ!」

「あの、その"シャンシャ族"って、いったい何なの?」

すると彼女はまた不思議そうな顔をした。

「お姉ちゃん、もしかして学校に行ってないの…?でも、お姉ちゃんの着てるそれ、制服みたいに見えるけど…」

まずい。素性がばれる!

「あ、いや、何でもないの!忘れて!」

彼女は"うん…。"と返事をして、少し考えるような仕草を見せた。

「まあいいや。行こ、お姉ちゃん!」

よく考えれば「お姉ちゃん」なんて生まれてこの方言われたことなかったな…。新鮮だ。


少女の後に付いてまたしばらく歩くと、大正門通りの入り口。最初に来たシャトー公園へとたどり着いた。

「ありがとう!ここまで来れば大丈夫!」

「わかった、じゃあね、お姉ちゃん!」

ロラという猫耳の少女は、こちらに笑顔を見せて手を振り、歩き出した。

よく考えればこの世界に来て初めて王宮以外の人と話したかも…。

あわよくば友達に…

「あ、あの、ロラちゃん!」

「わわ、どうしたの?」

不意を突かれて驚いたような表情で体をこちらへ振り返らせる。

「あの、もしよかったら明日も会えないかな…?」

「うん!じゃあ明日の正午、ここで待ってるね!」

そう言って彼女は楽しそうに帰って行った。

この世界で"明日"を迎えるのは、今日が初めてになる。

明日もまたあの子に会える。そんな楽しみがこれから毎日続くなら、私はこの世界でも何とかやっていけそうな気がする。


城の聳える丘の向こうに、太陽が隠れかけてきている。

この世界での初めての友人…元の世界で友達の少なかった私の胸は、この上ない喜びが満ちていた。

そして来たる明日に期待しながら、微笑みを浮かべて王宮へと向かっていった。


…これからやって来る残酷な現実なんて、この時の私は微塵も想像してなんかいなかった。

こんにちは。あとがきに関しては最終話か章の終わりまで書かないと思いますとか言っといて、さっそく四話で書きました。

人間を憎む動物がやって来るこのアムールランドですが、

「実際どんなところなのか?」とか「世界観がわからん。」

と思う人がいると思うので、一応筆者の想像に近い場所をお伝えします。

まずはアムールランドの首都・アルカンシェル。

"木組みのカラフルな街"とありますが、ここはフランスのコルマールやリクヴィールなどを想像してもらいたいです。そして王宮。これは筆者の中ではドイツのノイシュヴァンシュタイン城なんかを想像しながら書いています。

最後にユニコ―ンの紋章の旗が掲げられていた大きな聖堂。これはフランスのストラスブール大聖堂とかが近いかなぁと思います。

筆者は欧州マニアなので、いつかは行きたいなぁ…なんて思いながら書いています。これを機に皆さんも欧州に興味を持ってみてはいかがでしょうか。

それではまた次回、お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ