第三話~友愛編~ 「始動」
「あなたのその言葉を待っていました。アムールランドへようこそ。"第三代アムールランド国王及び二代女王"、エルミール・バルザック様。」
言ってしまった。今まで自分の言動や行動に一々責任なんて
持っていなかった。だけど今日から私は変わるんだ。
一つの女王として、私は変わる。きっとこの決断は、私の人生の中で最も重要な選択になったんだと思う。
この先どうなろうと、この私の選択に後悔なんてしない。…多分。
そして目の前の兎耳の男性が立ちあがり、
「改めて自己紹介をさせて頂きます。私はアムールランド王宮大臣、ラパン族のフィルマン・ビニスティと申します。女王様の公務補佐、及び王宮内総指揮官と王宮警備隊の総統をしております。私のことはさておき、これからのあなたについて、少しお話しします。いくら女王といえど、あなたはまだ高校生…女王としては非常に不安な年齢です。即位式の予定日までは時間がありますので、女王として相応しいまでの知識、教養を身に着けて頂きます。」
「は、はい・・・因みに即位式まではどれくらい時間があるんですか?」
「即位式は三週間後の日曜日…、約一か月といったところでしょうか。」
一か月!?一か月で国をまとめ上げられるだけの知識を!?
無理無理!絶対無理!…だけど、今更女王辞めるなんて言えない。
また向こうの世界での日常を繰り返すだけなんて嫌。
「が、頑張ります・・・。」
「不安がるのも無理はないでしょう…しかしご安心ください。明日王宮に入るエルミール様専属の秘書に教務係の兼任を依頼してあります。彼女は国内唯一の大学であるアルカンシェル大学を現在首席として通学している秀才です。学習以外の事に関しては疎い所もありますが、彼女ならきっとあなたを一人前の女王にしてくれます。」
「わかりました・・・。」
秘書…ドラマや小説でよく聞く単語だ。まさか自分にその役割の人が就いてくれることになるとは…。
「と、難しい話はこれまでにして、やはり、一先ずこの国をあなたの目で見て頂かなければ話になりません。」
私とフィルマンが向かい合って座っているソファ、その間にあるテーブルに、彼が大きな地図を広げた。言うまでもない、この島の地図だろう。
「先ほど説明した通り、この国は丸型の島です。それを山や川に沿って、縦横四分割に町境を引き、右上がボータウン、右下がプリュイタウン、左下がネージュタウン、左上がナンビュスタウン…それぞれの街が"水の街""土の街""砂の街""山の街"と、土地の特色に合わせた愛称で親しまれています。」
プ、プリュイ・・・ナンビュス・・・?
「あ、えぇと、詳しいことは追って説明するとしましょうか。最後に私たちがいるこの王宮があるのが"首都・アルカンシェル"です。アルカンシェルはこの四つの街の町境が交差する島の真ん中にあります。経済的にもここが一番発展していると言えるでしょう。まずはこのアルカンシェルを見てきてください。」
「は、はい!でも私、方向音痴なので迷いせんかね…。」
「大丈夫です。この街は木組みのカラフルな建物が多く立ち並んでいますので、何か一つ目印となる建物を決めておけば迷うことはないでしょう。」
ふと窓にめを移すと、そこにはカラフルな建物が確かに並んでいるのが見えた。知らない場所を冒険するのは結構好きだ。なんかわくわくしてきた…!
「わかりました!じゃあ行ってきます!」
足早に応接間を出ようとした私に、焦ってフィルマンが声を掛ける。
「あ、エルミール様!これを!」
そして手渡されたのは…犬耳、犬の鼻のマスク、そしてしっぽ…その上に
この国の通貨であろう紙幣が数枚添えられていた。
「この国の者は次期女王が人間だということは知っていますが、あなたの顔は知りません…そして先程説明した通り、この国の者は人間を憎んでいるという事…間違っても、この変装はとらないでください。」
女王は人間なのに、国民は人間を憎んでいる…説明はされたとは言え、この矛盾はどうも変な感じがする。
そして慣れない犬耳を着け、私は、私の新たな人生の舞台に
大きな決意と不安と期待を胸に、一歩踏み出したのだった。




