第二話~友愛編~ 「決意」
―――その昔、"人間の世界"では多くの戦争が起こっていた。
そしてそれを見ていることしかできない動物たちは、爆風に呑まれ、流れ弾を食らい、大きな動物は薬物で殺され、挙句の果てには体に爆弾を巻き付けられ、「兵器」としてその生涯を終えてきた。
この人間の傲慢に耐えかねて動物たちを哀れに思った「カミサマ」は、"人間の影響を受けず、その他の動物が中心となって回る理想郷"を作り上げた。
一つの大きな丸型の島。地球と同じように海で囲まれている島。
そこでは動物が恨み、そして羨んでいた「人間」に近い姿、いわば「半人間半動物」となって暮らしている。
この理想郷に来れる条件。それは「人間を深く憎んだ」ということ。
この世界に伝わる史伝によると、「カミサマ」がその動物を人間の世界からこの理想郷に引っ張り上げてくれるとされているらしい。
そしてこの世界で動物たちだけでの生活が進み、独自の文化が発展した。
「カミサマ」はこの島の者をまとめ上げるため、自らが王となり
島を一つの「王国」として人間と同じような社会の構成を作り上げた。
そしてそこから数十年経ち、「カミサマ」も役目を終えて天に召され、
今。ここは「アムールランド」と呼ばれる君主制の国家として運営されている。
この数十年という期間で、人間の世界とさほど変わらないまでに経済の発展を遂げてきた。
しかし前代の王は十数年前にあることがきっかけで退位してしまい、主導者のいない国となってしまっている。君主制国家としては致命的な問題だ。
そこで、前代の王が退位前に指名していた者を新たな王として迎え入れようという形で国民の意見が固まった。
「…それが、私なんですか。」
「ええ。何故他の誰でもないあなたなのか…それは、今私の口からお話しできることではありません。しかし国民はあなたを…"エルミール・バルザック"を望んでいます。ただ、あなたにも拒否権がある。私たちはあなたの同意の元でしか王にすることはできない。それがこの国の決まりなのです。」
そして彼は一呼吸おいて、改めて尋ねる。
「エルミールさん。この国の"女王"に、なっていただけますか?」
こんな突拍子もない話、誰だって信用できるはずが…
「もし私の話が信用できないならば、あなたはその首を横に振っていただければ良いのです。そして私たちに救いの手を差し伸べてくれるのならば、首を縦に振ってください。無論私たちは、後者を望んでいますがね。」
彼の眼差しは真剣だった。真っすぐだった。
「…でも、私にも"元の世界"での生活があって、もし急にいなくなったらきっとみんな心配すると思うんです。だから…」
「それに関しては心配いりません。あなたがこの世界に来た瞬間、元の世界に居る人間ども・・・失礼、人間達の"あなたの記憶"は消えています。つまり、"元々あなたは生まれていなかった。"という事で時間が進んでいます。」
私が元々居ないことになっている世界…。私は、正直言ってあの日常はこれ以上続いてほしくなかった。私が幼い頃に両親が死に、叔父夫婦が用意してくれていた家にいつも一人。学校でもしばしばいじめにあったりもしていた。この機会がその「カミサマ」の与えてくれたチャンスだとしたら…。
この世界で私がもし輝くことができたら…。
「もし私が首を横に振ったり、この世界での役目を終えたら、元の世界に帰れるんですか?」
「ええ。私が責任を持って元の世界に返します。」
ふと、死ぬ前に両親が言っていたことを思いだした。
"大きなチャンスはいつでもやってきてくれる。でもそれを掴みに行くのは自分自身なんだ。"と。
他人がそれを聞けば、それは単なる綺麗事だと笑うだろうし、当時の私もそれほどまでにしっかりとその言葉を受けとめてはいなかった。
この世界が夢でも現実でもいい。ただ今までの自分と少しの間でも決別することができるなら、この世界に希望を持ってもいいのかもしれない。
「・・・ます。」
この人生に二度とないかもしれないチャンスを自分の手で、
掴みに行こう。
「え、今何と?」
「やります。女王、やります。」




