8.なんて不憫で可哀想な賢い王子さま♠
「君と出会ったあの日まで、私はそれが当たり前のことだと思っていた。第一王子として生まれた私の当然の責務なのだと──」
その国でテオドールは王子として生まれた。
国王と王妃の第一子だった。
そのためテオドールは、生まれたときから次の王になる予定で育てられた。
早くから様々な教師が付いた。
それをテオドールは、第一王子として当然のこととして認識していたが。
その国の王太子の教育のためというには、テオドールが教えを受けた教師の数は多過ぎた。
テオドールが幼少期より優秀で、国王と王妃、そして教師たちが、その成長に期待し過ぎた故の対応だった。
テオドールの両親が息子の成長を願ったときにはまだ、そこに明確な悪意はなかっただろうと思われる。
王や王妃である前に親として、息子に向けて自然に抱いた感情からの行動であったに違いない。
教師たちもまた、優秀な教え子のために良かれと思い、別に新たな教師たちを紹介していったのだろう。
おかしくなっていったのは、どこからだったか。
賢いテオドールにも、その瞬間というものに覚えはなかった。
両親の期待は、ごく自然に依存に変わった。
王と王妃は、優秀な息子に国政を頼り、任せ、自分たちでは何一つ決めることが出来なくなっていた。
教師たちの期待は、欲に塗り替わった。
教え子が賢王となった先に悪い夢を見て、テオドールに偏った知恵を与え始めたのだ。
そして教師たちは、すぐにテオドールを恨むように変わった。
テオドールがもう学びを終えたものとして、今後は弟妹たちを教えるようにと言い渡したからである。
それは彼らのプライドを傷付け、勝手に見た夢の破壊を導いた。
テオドールが以降人の機微をよく意識するように変わったのは、このときの判断を失敗した経験として学んだところは大きい。
しかし挽回するには、テオドールは幼く、そして時間がなかった。
王族で働く者がもうテオドールしかいなかったから、自分から離れた教師たちの行く末などを気にしてはいられなかったのだ。
テオドールが王家の仕事に追われている間、暇が出来た王と王妃は、テオドール以外の子どもたちをより可愛がるようになった。
教師たちもまた、テオドールとは違って普通の子どもたちであった王子王女に学びを与えて、教師としての自尊心を取り戻していく。
テオドールは自分に向けた敵意がいつどこで始まったかを知らない。
ただ気が付いたときには、両親も弟妹たちもテオドールを酷く忌み嫌う事実が側にあった。
教師たちの歪んだ思想からの影響は大きかったように思われるが、テオドールはそれだけが理由ではなかったであろうと考える。
異質な自分は最初から嫌われていたのではないかと──。
「それも侯爵家で過ごすうちに、考え付いたことだった。あの国にいた頃の私は、王家で私だけが働いていることに、何の疑問も持たなくてね。今ではそれが不思議に思えるけれど。当時の私は、それが私の生まれた理由とさえ考えていた──」
そうしてテオドールが、幼いうちから寝る間も惜しんで、一人忙しく働けば働くほどに、貴族たちとの関わりは増えていった。
すると……テオドールはさらなる悪意に晒されていくことになる。
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