14.今夜もいつも通りの旦那さま♡♠
「ベサニー。私と離婚して貰えないだろうか」
別荘の次期侯爵夫妻専用の部屋に、厚みある絨毯が敷かれたのは昼間のうちだ。
ベサニーがお願いすると、別荘の管理人夫婦はベサニーが希望した以上の絨毯を用意して、ベサニーたちが別荘の周りを散策する間に部屋へと運び設置してくれていた。
眠る前の準備を済ませてベサニーが部屋に入ったとき。
その絨毯の上で、いつも邸でそうするように夫は座り──いつもとは違って、顔を上げベサニーを見詰めている。
ベサニーははじめから目が合う夫に、いつもと同じように柔らかく微笑み掛けた。
「まぁ、わたくしの旦那さま。そちらの新しい絨毯がとてもふかふかでいくら座り心地のよろしいものでしても、人が座る場所ではございませんことよ?」
「私はすぐに妻に甘えてしまうからね。せめて夜はこの場所からはじめた方がいいだろうと思って」
「ふふ。ではわたくしがお隣に座ろうかしら」
「それは駄目だ。君の身体に何かあっては困る。ベサニー、あちらで私と共に並び座ることを許してくれるか?」
「わたくしはテオさまの妻ですもの。当然ですわ」
ベサニーが手を伸ばせば、夫はその手を掴んですぐに立ち上がり、ベサニーをソファーへと連れて行った。
そして夫婦は互いに寄り添い座った。
「今夜はとても飲みたい気分ですの。お付き合いくださいます?」
「当然だよ。君の夫だからね」
「まぁ、嬉しい。あら?こちらのワインは、昼間にお話にあったアスカール地方のワインですわね。もしかしてテオさまが?」
「私はもしあればと聞いただけだよ」
感謝ならば、別荘の管理人夫妻に──。
そう言いながら、テオドールはどこか照れたように笑っていた。
「嬉しいですわ。旦那さま。さっそくいただきましょう?」
「慌てないで、ベサニー。夜は長いのだからね」
こうして別荘でも、夫婦の長い夜がはじまる。
そして──。
別荘に滞在中も、邸に戻ってからも、視察と称し夫婦で領地を巡ったときにも。
ベサニーとテオドールは、幾晩も夫婦の夜を重ね──。
やがてかの国は夜の夫婦の会話からも消えてしまった。
ベサニーとテオドールのこの習慣も永遠には続かず──遠くない未来にいつの間にかごく自然に手離すことになる。
未来の二人はもう何も心配していない。
そのときにはまた別の新しい習慣が自然に出来上がっているから──。
「ベサニー。これからも私の隣にいてくれるだろうか──」
「ベサニー。どうか私と共に出来る限り長く生きておくれ──」
「ベサニー。いつまでも共にいてくれてありがとう。どうか次の世でも共に──」
おしまい。
※お礼とお知らせです※
最後までお読みくださいまして、ありがとうございます♡
番外編として亡国のとある方のお話をまず1話更新予定です。
引き続きお楽しみいただけますと嬉しいです。
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本編はこれにて完結となります。
番外編として亡国のとある方のお話をまず1話更新予定です。
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