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第9話 封鎖された救護搬路

封鎖された搬路は、隠したい荷物ほどよく通る。


 灯が映像から拾った運搬箱の札を頼りに、私は桐生と一緒に地下七階の旧救護搬路へ向かった。本来は感染事故対策で封鎖されたはずのルートだが、扉の下には新しいキャスター跡が残っている。


「開いてる」


 桐生が眉を寄せる。


 私は古い通行札へ触れた。白い数字が逆向きにほどける。夜の救護室から運び出される薬箱、スポンサー席の裏口、未使用のA級回復薬。さらにその先、個室型の休憩ラウンジへ箱が積まれていた。


「見学会のVIP控室だ」


「そこへ救護薬を?」


「多分、見せる用と持ち帰り用です」


 床には包装フィルムの切れ端、高級ポーションの香草臭、そして保険請求コードが印刷された剥がし札が落ちていた。治療の現場じゃない。ここは在庫を抜くための通り道だ。


「森崎」


 桐生が壁の管理キー差し込み口を見た。


「この鍵、査定室の権限でも開く」


 つまり三上か片瀬、少なくともその両方に出入りできる人間が直接通している。


 私は搬路の壁へ手を置いた。


 不正はいつも『例外対応』の顔をしてやって来る。救護物資、緊急承認、スポンサー調整。大義名分がついているぶん、誰も止めにくい。


 でも止めなければ、本当に必要なとき空になる。


 その単純な事実だけは、搬路の冷たいコンクリートより硬かった。


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