10/17
第10話 大手クランの偽装重傷
偽装重傷は、治ったことより盛れたことを喜ぶ。
翌日、灯が追加で拾ってくれたのは《白狼ストリーム》の会員向け限定配信だった。削除済みだったが、視聴者の一人が保存していたらしい。
映像には、見学会後の控室で笑う若い探索者たちが映っていた。腕へ巻かれた包帯を外しながら、一人が言う。
『これで特別補償も追加薬も通るなら美味しいな』
別の男が金色の小瓶を振る。
『A級、売れば結構いくぞ』
私は息を止めた。
軽傷を重傷へ偽装し、無料支給の高級回復薬を持ち出して売る。請求水増し、保険金上乗せ、在庫の横流し。全部が一本の線になった。
「ここまで来ると、救護詐欺だな」
桐生が言う。
「しかも常習です」
私は映像を止めた。テーブルの端に映り込んだ承認封筒には、救護局査定室の仮印が押されている。私が拒んだあと、片瀬が通した承認だ。
「三上も片瀬も、ただ押し切られたんじゃない。最初から分かって通してる」
灯が冷静に言う。
「表へ出したら相当燃えます。でも今はまだ、一撃で逃げられない形へしましょう」
その通りだと思った。怒りの強さだけで動けば、向こうは『一部の不心得者でした』と切り捨てる。必要なのは、個人の暴走じゃなく仕組みとして通していた証拠だ。
なら次に押さえるべきは、上だ。




