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第11話 行政医療課の沈黙

沈黙は、何もしていない顔をした共犯だ。


 私たちは証拠一式を行政医療課へ上げた。偽装重傷の映像、搬路の使用跡、消えたカルテ、ロット番号の不整合。だが返ってきたのは薄い一文だけだった。


『スポンサー連携案件につき、広報調整を優先し慎重に対応する』


 つまり止めないということだ。


「慎重って便利な言葉ですね」


 灯が鼻で笑う。


「止めない理由を上品にしただけ」


 私は返信文の末尾に添えられた転送メモを見た。三上からの補足だ。


『森崎の私怨混じりの申告に引きずられぬよう』


 私怨。被害を受けた人間の声を軽くするには、あまりに使い勝手のいい言葉だった。


「私怨で薬棚は空になりません」


「分かってる」


 桐生は短く言った。


「だが上が欲しいのは、反論できない現場結果だ」


「また事故を待てと?」


「待つんじゃない。次に起きたとき、逃げ場を消す」


 悔しいが、その通りだと思う。紙だけでは動かない連中には、紙と現場の両方をぶつけるしかない。


 私は返信文を閉じた。行政医療課が黙るなら、私は黙らない。救護予算は誰かの体面じゃなく、現場で苦しむ人の分だ。それを忘れた人間へ、遠慮する理由はない。


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