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第8話 配信に映った空の薬瓶
空の薬瓶は、使われたから空とは限らない。
灯が集めてくれた映像の中に、事故直前の救護室前通路を映した短い配信があった。スポンサー見学会へ参加した探索者が、物珍しさでカメラを向けていたのだ。
「ここ、止めてください」
私は棚の端を指した。
映っているA級回復薬のケースは、記録上まだ封印済みのはずだった。だが実際には蓋が一度開けられ、空瓶が二本だけ手前へ置かれている。
「使用前に空瓶がある」
「演出用か?」
桐生が低く聞く。
「多分。使用済み印を押した空瓶を先に用意して、あとから請求数量へ合わせています」
私は停止画面へ指先を当てた。【精算】が薄く走る。片瀬が空瓶へ使用済み札を巻き、棚へ戻す。誰かが笑っている。
『高い薬ほど、見せた方が安心感が出るでしょ』
配信映えのための高級薬。しかも使ったふりまでしている。
「人の命を広告にしてる」
桐生の声が硬くなった。
灯はスマホを操作しながら言う。
「この映像、別角度もあります。運搬箱が映ってます」
箱の側面には、通常の救護物流では使わない個人搬送用の札がついていた。深夜救護室から、どこか別の場所へ薬が流れている。
配信に映ったのは偶然の数秒だ。でも数秒あれば十分だった。見栄えのために用意した空瓶が、そのまま不正の形をしていたから。




