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第4話 水増しされた回復薬請求

請求書が厚いときほど、中身は薄い。


 翌朝、私は深夜救護室へ送られてきた過去三か月分の医療請求を洗い直していた。スポンサー付き配信案件、大手クラン同行の見学会、都市連携イベント。目立つ案件ほどA級回復薬の本数が妙に多い。


「全部、同じ書き方」


 負傷内容は軽い。だが記録上だけ『魔力裂傷の疑い』『内臓損傷の恐れ』と大仰な文言が足され、高価な薬剤使用が正当化されている。


 私は前夜の搬送記録と見比べた。すると片瀬の承認印が入った案件だけ、使用ロット番号が不自然に連番になっている。実際に現場で何本も使っていれば、別棚の混在や旧ロットが混ざるはずだ。これは倉庫からまとめて抜いた数字に近い。


「森崎さん」


 深夜救護室の看護師長が、苦い顔でコーヒーを置いた。


「あなたの前任も、薬棚が減りすぎるってぼやいてたのよ」


「前任?」


「二か月前に異動願いを出して去った在庫係。誰も相手にしなかったけど」


 彼女が渡してくれた私物メモには、こうある。


『見学案件の翌日だけ、A級の減り方が現場記録と合わない』


 やっぱり前から続いていたのだ。私が査定室で弾いた請求だけじゃない。深夜救護室そのものが、誰かの抜き場にされている。


 私はメモをたたんだ。


 数字が小さいから見逃していい不正なんてない。小さい不正は、いつも本当に必要な誰かの分から先に削る。


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